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  • 2016/03/15 掲載

将棋の格言からビジネスの意思決定を学ぶ 「原則思考」と「例外思考」の発想法

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経営者のようなビジネスパーソンから政治家まで、組織を動かす人にとって「将棋」は必須の教養といえる。ビジネスの世界を生き抜くために、経営者は「原則」と「例外」を見極めて意思決定をせねばならないが、これが将棋という盤上のゲームで疑似体験できるからだ。ビジネスパーソンに必要なスキル「原則思考」と「例外思考」の発想法を、将棋の格言から紐解いてみたい。
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将棋の格言からビジネスの意思決定を学ぶ

将棋格言と経営格言に通じる性質とは?

 ディープな将棋ファンでなくとも、「歩のない将棋は負け将棋」や「桂の高跳び歩の餌食」などの「将棋格言」を聞いたことがあるのではないだろうか。これらの「将棋格言」には、企業経営を行うにあたっての「経営格言」と通じる性質がある。

 経営やビジネスとは、日々発生する様々な課題に対して複数の選択肢を用意し、意思決定をし続けるということである。その際、毎回毎回ゼロからシミュレーションしている時間などない。現代を生き抜く優秀な経営者とは「汎用性の高い原理原則を身につけることによって、いついかなるときも、迅速に最適な意思決定を行うことができる経営者」といえるだろう。

 ビジネスにおける意思決定を助ける原理原則とは何かといえば、先人達の知恵、すなわち「経営格言」はその代表選手である。例えば「顧客本位の経営が企業活動を安定化させる」だとか、「長いものには巻かれていたほうが安全である」、はたまた「ROEは◯%以上に保たなければ株価が崩れる」等、様々なシーンや切り口における「勝つための方程式」が発見され、語り継がれてきた。

 しかし、社会科学であるビジネスの世界における「勝利の方程式」は、自然科学における方程式とは違って、常に作業仮説でしかない。万有引力の法則のように、「数学的に、完全に一義的に振る舞いを記述する法則」ではなくて、必ずいつも「例外」という敵がいるのである。

 「いつだってベストな判断を行いたい」とは全ての人に共通する願いであるが、この「例外」というものを考えると、目の前の経営課題を解決するにあたって、どの「経営格言」を念頭に置くべきか、ということ自体がそもそも難しい。いま自分の置かれた状況が「原則通り」なのか、あるいは「例外」なのか、という高度な判断を求められるからだ。

将棋は「原則」と「例外」の意思決定の連続だ

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 こうしたビジネスの意思決定における「原則」と「例外」の連続を疑似体験できるのが将棋というゲームだ。

 ビジネスの世界においては、「先が読めない」という言葉はお馴染みのフレーズとなっているが、将棋もまた、「先を読む」のが大変なゲームである。ある一つの局面があって、自分の手番だったとして、指し手には常に20通り以上の選択肢がある。そのうちひとつを選択すると、相手はまた同じぐらいの数の選択肢のなかから、ひとつを選択する。たかだか3手ぐらいの進行でも、場合の数としては、少なく見積もっても8000通りもの変化の可能性がある。

 初めて駒を触る場合、そのあらゆる可能性のなかから最善手、すなわち「自分に都合の良いシナリオ」を選びとるのは、はっきりいって不可能だ。そのため初心者は、形勢の良し悪しや指し手の効果やねらいもわからず、とにかくむやみに一手一手指す以外に方法論がなかったりもする。

 地道に愚直に全ての可能性を読む力は、そう簡単にはつかないものであるが、不思議なことに、初心者同士、「読む力」に大きく違いがない場合でも、明確に優劣がつくことがある。それは、「弱点を作りにくい自陣の形」「一気に攻め込むための駒の配置」「相手の陣形を突破する筋」が見えるかどうか、というところにある。

 つまり、「こういうときはこうする」という、一種のパターン思考が、「個別の局面における愚直な読み」を上回るのである。そして実は、「こういうときはこうする」というパターンを言語化したものこそが「将棋格言」である。

【次ページ】将棋の格言から学ぶ、ビジネスの「原則思考」と「例外思考」
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