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  • 2016/02/19 掲載

木暮太一氏インタビュー、「マーケティング説明力」を強化する「不」の4分類とは

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日本でもようやくマーケティングが根付きはじめてきたが、その一方で現場のマーケティング担当者には、なかなか思惑通りに情報が伝わらない、あるいは実際の商品の売上アップに結び付かないというジレンマがあるようだ。その理由として「商品説明力やマーケティング説明力が圧倒的に不足しているからだ」と指摘するのが、テレビのコメンテーターとしても活躍し、一般社団法人 教育コミュニケーション協会 代表理事をつとめる木暮太一氏だ。今の企業に求められる視点と具体的な取り組み方法について、木暮氏に話を聞いた。
(聞き手は編集部 松尾慎司)


photo
一般社団法人 教育コミュニケーション協会
代表理事
木暮 太一 氏

日本的な感覚をいよいよ変えなければならない時に来ている

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──日本企業もマーケティングなどは強化していますが、それでも「説明力」は不足しているのでしょうか。

木暮氏:私は圧倒的に不足していると考えています。それはマーケティング視点がないというよりも、モノの売れ方の原理が変わってきているにも関わらず、依然として昔の売り方を踏襲し続けているところに原因があると思います。結果、企業の情報の伝え方も、消費者には響かない言い方になってしまっているのではないでしょうか。

 たとえば高度成長期なら、冷蔵庫というだけですべての消費者は欲しがりました。「食料品を冷やすもの」と伝えるだけで、冷蔵庫は売れていたのです。それは冷蔵庫が今までには無かった機能を提供してくれるものだったからですが、日本企業はその後もずっと、とにかく性能がよければいいという考え方でマーケティングを行ってきたのです。

 しかし今はモノが余っている時代です。豊富な機能を提供するというだけでは商品は売れません。顧客が抱えている機能以外の課題や願望を解決しなければ、モノは売れないのです。でも未だに「性能押し」の売り方をしているというのが日本企業の現状です。

 その頭で考えてしまうと、自社製品と他社製品を機能の優劣や多寡だけで比べることになる。でもその機能は顧客が必ずしも欲しがっているものとは限りません。日本企業は「モノが良ければ売れる」というこれまでの日本的な感覚を、いよいよ変えなければならない時に来ていると思います。

柔道では「有効」をいくらとっても「一本」にならない

──具体的に日本企業には、どのような視点が求められるのでしょうか。

木暮氏:まず企業全体として取り組まなければならないのは、自社や製品のブランドを確立し、それを拠り所としてモノやサービスを売るという活動です。しかし、マーケティング担当者など、企業内の個人は必ずしも常にブランドを意識して考える必要はありません。会社全体で行う取り組みと個々人が行う取り組みは本来別物です。

 そしてマーケティング担当者なら、顧客がなぜこの商品を欲しがるのかを考えた上で企画を考え、商品を見直し、言葉にするという姿勢が重要ですが、その際の起点になるのが、顧客の「不」を解決してあげる、というスタンスです。「不」とは、不可能や不足を意味するもので、顧客がやりたいと思っているができていないこと、こうなりたいと思っているが十分ではないことです。この「不」を解決するからこそ、商品には価値が生まれます。

 私はよく柔道に例えるのですが、「技あり」を2つ取ると「合わせ一本」で勝ちになりますが、格下の「有効」のポイントをいくら取っても、「技あり」や「一本」には昇格しません。つまり“決め手”にならないのです。これが日本企業の現状です。「うちの商品はこれもできます。あれもできます。これにも使えます」と小さなメリット(有効ポイント)をいくつも並べて勝負に挑みますが、「技あり」の特徴2つだけを持つ商品に負けてしまう、あるいはアップルの「かっこいい」商品に一本負けしてしまうのです。

 企業全体でブランドを作った上で、マーケティング担当者は1つ1つの自社商品やサービスが、顧客や消費者のどんな「不」を解決しているかという目線で、施策を捉え直す必要があると思います。

 最近ある大手テレビショッピング番組が、高齢者の方にボイスレコーダーをたくさん売っています。もちろん高齢者の方は会議などの音声を録音するわけではありません。病院に持って行って、お医者さんから言われた診断内容を忘れないように、あるいは家の人に正しく伝えるために録音するのです。そうすると、今のようなスティック型の形状でPCに接続するためのUSBポートが付いている必要はまったく無く、ボタンもたくさんあるとかえってわかりにくい。持ち運びやすくて、ボタンも大きくて押し易くて、録音と再生さえできればいいのです。

 多くの日本企業が「我々はこれができます」といって商品を作ってしまう。それがたまたま受け入れられればいいのですが、必要とされていなければ、商品開発自体が徒労に終わってしまいます。そうではなく、自分たちは誰のどんな「不」を解決するのか。その視点で自社の商品やサービスを再定義すると、新たな表現が生まれてくると思います。私はそれをマーケティング担当者だけでなく、企業内の個々人がやらなければならないと考えています。

【次ページ】世の中に存在するさまざまな「不」は、4つに分類して考える
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