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- 2015/06/02 掲載
区民の声聞く“営業マン”を配置、史上最年少区長が生み出した子育て支援策
サイレントマジョリティーの声を聞く
水谷区長はNHKの記者出身。香川県で育ち、大学時代を東京で過ごした。大阪と深い縁はなかったが、橋下市長が行った区長公募に応募し、天王寺区長となった。天王寺区はJR天王寺駅周辺にキタ、ミナミに次ぐ大阪第3の繁華街を抱えながら、市内有数の文教地区として人口流入が続いている。交通の便が良いこともあって、子育て中の夫婦など若い世代が多い地区でもある。水谷区長は応募に当たって市内のあちこちを回ったが、最も気に入ったのが天王寺区だった。
区長就任後、真っ先に頭をひねったのが「民主主義」をどうやって徹底するか。水谷区長は「英国のチャーチル元首相は民主主義を人類が経験したいかなる政治制度よりマシであると述べたが、マシを割と良い、さらにかなり良いに変えるのが行政の仕事だ」と語る。より良い民主主義の実現には、区民の声をしっかりくみ上げることが必要だと考えたという。
しかし、区役所を頻繁に訪れ、要望や意見を聞かせてくれる区民は、町内会の役員らごく一部に限られる。大半は住民票の交付といった手続き以外で区役所を訪れることは滅多にない。中でも急増する子育て世代は日々の仕事や育児に追われるうえ、政治や行政に無関心で意見を聞く機会さえほとんどなかった。水谷区長は「こういうサイレントマジョリティーの声をどう取り上げたらいいのか、考え抜いた末に出たアイデアが、区民の声を聞く“営業マン”を区役所内に置くことだった」と振り返る。
新設された組織は「あなたの声をつなげ隊」と名付けられた。18人の職員が街頭で区民と1対1になって30分ほど話し合い、意見や要望を持ち帰る全国でも例がない取り組みだ。「子供の予防接種に補助金を出してほしい」「無認可など幅広い保育所情報を提供して」など、すぐにたくさんの要望が区役所に届いた。水谷区長の次の手はこれらの要望に応える施策を打ち出すことだった。ただ、区に余った予算があるわけもない。区の事業をすべて再点検し、新規事業に使える数千万円の予算を何とかひねり出したという。
そうして実現した事業の一つが「子育てスタート応援券」。3カ月児健康診査受診者を持つ家庭を対象に、区の子育て支援事業や任意予防接種に使える1万円分のバウチャー券を申請に基づき交付する制度だ。子供が2歳の誕生日を迎えるまで有効で、登録されている22事業者の41サービスからどれを選ぶかは各家庭の判断に委ねられている。
大阪市内の区役所は東京23区と違い、独立して運営される行政区ではない。大阪市役所の中の一地方窓口として位置づけられている。それだけに、市内の福祉サービスは平等でなければならないという理由で、他の区から反対の声が相次いだ。水谷区長は「規制緩和しようとしたら抵抗が大きいのと同様に、橋下市長に直談判して反対の声を押し切るのが大変だった」と苦労を打ち明ける。
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