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- 2014/12/16 掲載
宇宙飛行士 山崎直子氏と竹村真一教授が宇宙目線で探る「地球人」としての生き方
宇宙エレベータが世界を変える!
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まだ人類は進化する!? 宇宙的な視野を手に入れた人類の成長
これは、まさに宇宙に行った経験がなければ分からない発言だが、地上からでも宇宙目線で地球を感じることはできる。その1つが、竹村氏がプロデュースした「Tangible Eearth」だ。
さらに山崎氏は「宇宙目線の視野を手に入れたことは、人類の成長に多大な影響を与えた」と説明する。たとえば米ソの冷戦が終結したのも、地球の姿が寄与したのでないかという説がある。竹村氏も「宇宙から地球を見たという、宇宙開発の思わぬ副産物が冷戦も終わらせたという指摘は重要だろう。現実的な利益目的と同時に、宇宙視点から宇宙を精神的に内在化し、地球人を営む部分が働いてもよいと思う」と応じた。
宇宙ステーションで暮らすと人間関係も変化する。山崎氏は「宇宙では上下関係が希薄になってくる。ただし地上と交信したり、イベントを行うときは上下関係や常識が踏襲され、船長を中心に従来の関係性が保たれる。宇宙と地上で習慣を無意識で使い分けていた」と回想する。
この点について竹村氏は「平等性という観点からも、多彩な肌の色を持つ人々が“ひとつの地球人”という感覚をもっている。アフリカを起源とする人類は、わずか5万年で世界に散らばり多様化した。それが現在もう一度、地球人としてひとつにまとまろうとしている」と述べた。
国民国家と国際社会をまとめる宇宙エレベータの新たな可能性
現在、宇宙旅行が民間にも解放され、いよいよ宇宙時代が視野に入ってきた。とはいえ、宇宙へ行くには、まだ何千万円ものコストがかかり、誰もが行けるレベルではない。そのような状況で昨今、特に期待されているのが「宇宙エレベータ」構想だ。宇宙エレベーターとは、高度約3万6000kmの静止軌道ステーションからチューブを垂らし、そこを片道約1週間かけて往来する。大林組の構想では2050年に実現するという。
「昔は、宇宙エレベータは無理だと思われていた。しかし現在は、計算上で自重に耐えられる軽くて丈夫な材料が登場し、だいぶ実現に近づいてきた。いま宇宙活動でネックになることは打ち上げの燃料コスト。宇宙エレベータならば10分の1から100分の1までコストを下げられる。そうなると太陽電池や宇宙工場、滞在型コロニーなどの巨大構造物を構築するためのブレ―クスルーになるだろう」。
問題は、その宇宙エレベータをつくるためには枠組みが必要であり、地上の世界が成熟しなければならないということだ。竹村氏は「宇宙エレベータは一国単位でできるような簡単なプロジェクトではない。国家や国境がなくなることは簡単でないにしても、やはり地球政府的な協力体制がないとできない」と力説する。
山崎氏は「逆に宇宙エレベータの開発体制が1つの推進源にもなる」と指摘する。人類が国民国家や国際社会という枠を取り払い、ひとつの地球人として次ステップに駆け上がる、その大きな触媒やモメントになるのが宇宙エレベータ構想でもあるのだ。
【次ページ】宇宙時代に適応する新人類は登場するか
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