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- 2022/06/17 掲載
どうしたアリババ、「自社ECに直営店」が示す予想以上の“ビジネスモデル限界説”
アリババの株価急落、その原因は?
アリババの株価は、2020年10月に300ドルを超える過去最高値をつけた後、下落し続け、2022年5月末には80ドルまで落ち込んだ。この下落の要因の多くは外部要因だ。中国の景気後退、そして米国の外国企業説明責任法による上場廃止リスク(外国政府の支配下にないことを証明する必要があり、3年間証明できない場合は米国証券市場からの上場廃止の可能性が出てくる)、中国政府の独禁法を中心とした罰則、規制強化などが影響している。
しかし、最も問題なのは内部要因だ。アリババのビジネスモデルは金属疲労を起こし始めている。
アリババが自社ECに直営店をオープンする意味
アリババは自社が運営するEC「天猫」(Tmall)にアリババが直接運営をする店舗「天猫自営旗艦店」(Tmallマート)をオープンするという観測記事が報道されている。アリババが直接商品を仕入れ、販売し、宅配するというものだ。当面は家電製品を中心に扱うようだ。これは一見、アリババが直営の公式ショップを開いただけに見える。しかし、アリババのビジネスモデルから考えると大きな転換になる。アリババのEC「淘宝網」(タオバオ)と「Tmall」の2つは、買いたい人と売りたい人をマッチングさせるバザール方式で、eBayや楽天と同じビジネスモデルだ。決済手段としてアリペイを提供しているものの、配送やサポートは原則各販売業者が個別に行う。
一方で、アリババのライバルであるEC大手「京東」(ジンドン、JD.COM)は、家電製品を主力とした小売店がオンライン化したもので、仕入れ、販売、配送、取り付け工事、サポートのすべてを行う。アマゾンやヨドバシ.comと同じモデルだ。
同じECであっても、このビジネスモデルの違いにより、性格は大きく異なってくる。アリババ方式はマッチングサービスの設備拡充が容易であるため成長速度は速い。京東方式は、巨大倉庫や物流網を構築する必要があるため、成長速度は緩慢になる。
アリババと京東のGMV(Gross Merchandise Value、流通総額)を比べると、アリババは京東の約3倍と圧倒的な差がある。
ところが、営業収入で比べると京東のほうが多くなる。自社で販売する京東は、仕入れ値と売値の差額が収入となるが、アリババは販売手数料や運営管理費を徴収するしかないからだ。
営業利益では、今度はアリババが圧倒的に大きい。アリババは元手がほとんどかからない商売だが、京東は仕入れや配送など元手がかかる商売だからだ。
アリババはネットの特性を活かしてそれまで存在しなかった小売業を創造したが、京東はネットを利用して小売店を素直にオンライン化した。京東の創業者、劉強東(リウ・チャンドン)氏はかつてこう語ったことがある。「私たち京東のビジネスモデルこそ健全であり、アリババはいつか、私たち京東に学ぶことになるだろう」。
この言葉が現実になった。アリババは、自分たちのビジネスモデルに反して、京東のようなオンライン直営店をオープンする計画を進めている。これがどの程度の広がりを持つことになるのかは不明だ。さまざまなトライアルをする中の1つにすぎない可能性もある。
しかし、Tmallマートが拡大すれば、Tmallに参加している販売業者と販売する商品がかぶることもあり得る。アリババのビジネスモデルの転換点になる可能性も否定できない。
アリババは、中国で圧倒的な強さを誇るECを育てながら、なぜこのようなビジネスモデルの変更を模索しているのだろうか。
【次ページ】アリババが最も恐れていたソーシャルEC「拼多多」の黒字化
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