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「DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業は1割未満で、しかも多くが失敗する」。経済産業省や調査会社、コンサルティング会社が2020年12月に相次いで発表したDX実態調査による日本企業の姿だ。DXを阻む最大の理由は、危機感のない経営者にビジョンが描けないことにある。「現場からデジタル活用のアイデアが出てこない」と、従業員に責任を押し付ける経営者までいる始末だ。目指す姿を示せない経営者に、誰がアイデアを出したり、協力したりするのだろう。それでも日本企業は新規事業の創出などに向けた変革を迫られている。複数のDX調査結果から成功への旅路を探った。
DX成功率「7%以下」の現実
アビームコンサルティングが2020年12月に公表した日本企業のDX実態調査によると、DXの取り組みテーマに「新規事業の創出」や「顧客接点デジタル化」、「新サービス・製品開発」、「働き方改革」などを挙げる経営者らが多かった。
ところが、DX成否の自己評価を聞いたところ、失敗との回答がすべてのテーマで大半を占める。とくに失敗率の高いのが「働き方改革」(85.2%)、「顧客接点デジタル化」(78.1%)、「新サービス・製品開発」(77.6%)、「新規事業の創出」(74.5%)などだ。調査分析にあたった斎藤岳 執行役員・戦略ユニット長は「苦戦する姿がみえる」と、DXの難しさを指摘する。
一方、成功との回答は全テーマで10%以下だった。「新規事業の創出」が8.5%、「顧客接点デジタル化」が5.5%、「新サービス・製品開発」が4.5%、「働き方改革」が1.9%という悲惨な結果だ。
アビームは「目指すべき姿への変革を実現している、もしくはそこに向けて順調に進んでいるという取り組みは、全体の7%しかない」とし、課題はリテラシー(全従業員へのデジタル教育)とリーダーシップ(デジタル知見を有する経営陣の意思決定)、デジタルとビジネスの両面での推進体制、十分な予算やリソースの割り当て、などにあるという。
経済産業省が2020年12月28日に公表した「DXレポート2」も「95%の企業がDXにまったく取り組んでいないか、取り組み始めた段階」と、全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていないと報告する。
「レガシーシステムから脱却し、経営を改革しなければ、日本経済は12兆円の損失になる」とDX化の遅れを問題視した同省のDXレポートが公表されてから2年以上経ったが、DX化は一向に進んでいないということ。同省関係者は自己診断レベルの平均が1.5だったことに大きなショックを覚えている。全社的な対応のレベル3と、部分的な対応のレベル2の中間を想定していたからだ。
経営者がDX実現への道のりを描く
DXに取り組む日本企業は5割を超す。そんな調査結果を2020年12月に発表したのは日本マイクロソフトだ。調査会社IDCと共同でDXやインベーションの実態を調査したもので、DXを推進する日本企業は55%にのぼるという。
DXレポート2と大きな差があるのは、調査の対象企業が有力企業中心になっているからだろう。それでも、新しいビジネスモデルを創出したり、新しい商品・サービスを創り出したりする「イノベーションは困難」との回答が58%もある。
IDCジャパンの寄藤幸治リサーチバイスプレジデントは「イノベーション文化が社会に根付いているかだ」とし、DXに取り組むうえで重要な環境だと主張する。こうした環境に加えて、IDCジャパンが2020年12月に発表した「2021年の国内IT市場の10大予測」の中で挙げたAIやアナリティクス、クラウド、クラウドネイティブなアプリケーション開発など新しい技術の習得と、ビジネス変革に対する能力が必要になるだろう。
一方、アビームは調査結果から、「明確なDXビジョン」と「思い切った人と資金の投資」、「デジタル知見を有した経営陣の覚悟」、「アジリティでダイバーシティのある組織」、「デジタル教育と変革の意識付け」の5つがDXの成功に大きく影響することを導き出した。
簡潔に言えば、「何を目指すのか議論し、経営者が実現への道のりを描き、DX化の意思決定に深く関与すること」──。ビジネスの分かる従業員をアサインし、アジャイル的なアプローチで、経営者らに週1回の進捗報告もする。全社へのデジタル教育を実施するなど、十分な予算とリソースも投入し、現場のカルチャーも変えていくことが必要だ。
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