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  • 2023/08/28 掲載

マッキンゼーに聞く「日本企業データ活用」の現在地、データドリブン経営への道筋は?

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多くのデータを集めてそれをビジネスに活用することは、企業の将来を左右する重要な取り組みだ。DXを加速する日本企業は、この「データ活用」の点でも大きく進展しつつあるように思えるが、その実態はどうなのだろうか。多くの企業のデータ活用を支援してきたマッキンゼーのパートナーであり、AIセンター・オブ・エクセレンス、「QuantumBlack」の日本のリーダー工藤 卓哉 氏が、日本企業の現状と課題を語った。
執筆:井上健語 聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 山田竜司

執筆:井上健語 聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 山田竜司

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マッキンゼー
パートナー
工藤 卓哉 氏

アナリティクスの観点から見た企業の二極化

 現在は、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業が増えて、データを分析してビジネスに役立てるアナリティクスも浸透しているように見えますが、現実には概念実証(PoC)にとどまって果実を得るところまでいけていない企業とテスラのように圧倒的に進んでいる企業に二極化しています。

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現状認識とアナリティクスの目的
(出典:マッキンゼー)


 では、なぜほとんどの企業がPoCにとどまっているかというと、そもそもPoCを立ち上げる以前に、目的があいまいであるケースが多いからです。技術的に面白いという以前に、何に使おうとしているのか、目的は何かを明確にしないままスタートして、いつの間にか立ち消えになってしまっています。

 さらに、ファイナンシャルインパクト(財務インパクト)やオペレーションインパクトにどの程度よい影響があるかどうかを分析する「インパクト設計」が、ほとんどの企業で行われていません。

 新規事業創造本部といった新しい部署を立ち上げてプロジェクトを進め、その結果、面白いものができても、事業部側が引き取ってくれなかったり、ビジネスに結びつかなかったりするケースが非常に多いと思います。

 したがって、まずは市場分析やインパクト設計などの“前さばき”をしっかりやって、その上で組織を立てつけ、必要なインフラを用意した上で推進することが大切です。それができて、はじめて本当の意味でのスケーラブルな「データドリブン経営」が実現できるのだと、我々は考えています。

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データドリブン経営におけるマッキンゼーの工夫と基本設計思想
(出典:マッキンゼー)

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データドリブンの経営組織では、CEOやビジネスリーダーの意思決定はすべてデータに基づく
(出典:マッキンゼー)

インパクト設計で重要となる社長と全社員で共有可能なKPI

 ファイナンシャルインパクトやオペレーションインパクトを考えるとき最も望ましいのは、社長と社員が共有可能なデータ・経営指標を作ることです。そのようなKPIを作れたら、プロジェクトに最もドライブがかかります。

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明確なKPI設定と合意について社長を含む全社員で共有し、達成可能なユースケースを特定する
(出典:マッキンゼー)

 ところが、社長が見ているのとは異なるKPI、株主総会でもコミットされていないKPIに対して投資されているケースは少なくありません。

 社長を含めた全社員が同じように見られるわかりやすいKPIとしては、たとえばサブスクリプション型サービスで顧客が契約を解約する「チャーン」があります。

 たとえば、通信会社における携帯電話の24カ月契約の場合、チャーンが1%でも下がると何百億円というマイナスのインパクトがあります。したがって、社長からショップやコールセンターのスタッフまで全員が共有しやすいKPIだといえます。

 また、機械学習を活用しやすいという点でもチャーンは分かりやすいKPIです。たとえば、機械学習で構築したAIモデルを使えば、離反の可能性の高い顧客を抽出できますので、その顧客に対して離反抑止のキャンペーンを打つことも可能になります。 【次ページ】半導体を自社開発する企業でないと競争には勝てない?
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