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  • 2020/08/25 掲載

記号主義とコネクショニズムとは?人工知能(AI)研究の2大潮流をマルっと解説

連載:図でわかる3分間AIキソ講座

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人間の知能を再現するためにスタートした人工知能(AI)研究ですが、人間の知能を再現するためのアプローチは大きく2つに分かれます。それが「形式主義(記号主義)」と「コネクショニズム」です。現代のAIのほとんどは、この2つのアプローチの組み合わせによって運用されているのですが、多くの人が抱くAIのイメージは、「形式主義」か「コネクショニズム」のどちらかに偏ってしまっています。2つの違いを理解できれば、AIの理解も深まるかもしれません。

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人工ニューロンとは何か?(後ほど詳しく解説します)

人間の思考を数学的に置き換える「形式主義(記号主義)」

 人間の知能を再現するためのアプローチのうち、私たちが論理的に理解しやすいのが「形式主義(記号主義)的なアプローチ」です。いわば、人間の知能を再現するなら、「人間の思考をそのままコンピューターにプログラムすれば良い」という考え方です。

 そこで行われたのが、人間の思考を数学的な記述に置き換える作業です。たとえば、「現在時刻が午前7時なら起きる」「残り時間が5分を切ったら走る」といった現実の世界における私たち行動を決める条件は、数学の計算における「Xが0の場合」「Xが1以上の場合」などといった記述に置き換えることができます。

 そのほか、「仕事が忙しい場合」「雨が降っている場合」のようなケースでも、数字こそ出てきませんが、特定の条件に対して決まった選択を行う形であればルール化することはできますよね。このような、形式主義的アプローチによる研究は、ルールが単純で明確なボードゲームや数式の証明などに強みを発揮しました。

 また、人間の思考を記述するための方法論はコンピューターが開発される以前の1910年に、数学者であるアルフレッド・ノース・ホワイトヘッド(1861~1947年)とバードランド・ラッセル(1872~1970年)によって書かれた『数学原理』で説明されました。

 一見、簡単そうに見える方法ですが、論理的思考を全て数学的に記述することは意外と難しいことです。しかし、本書で数学的思考の多くが、わずかな記号(IF、OR、AND、=、NOTなど)で記述できることが示され、コンピューターがこれらの記号を処理できる限りは論理的・数学的思考をコンピューターや機械で再現することが可能になるとされたのです。実は、プログラミングだけではなく、エクセルの関数処理などでも用いられる数学の記号は、この理論に基づいて体系化されていたのです。

 「人間が問題を解決するための思考を論理的に正しく記述できれば、AIは知的なタスクを実行できるだろう」という前提に立ったアプローチは非常に分かりやすく、そのためAI研究でも非常に早い段階から研究が進められていました。

 もちろん「自分の考えを数学的に正しい形で論理的に説明できるか」という部分に課題は残るものの、それができるタスクに関しては確実に実行できて応用範囲も広いため「形式主義」はAIのアプローチでは長らく主流となっていました。

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「残り時間が5分を切ったら走る」といったような私たち行動や思考は、数学の記述に置き換えることができる?
(Photo/Getty Images)
 

人間の神経回路を真似した「コネクショニズム」

 一方、形式主義と並んで注目されたのが、「ニューラルネットワーク」を利用する「コネクショニズム」によるアプローチです。同アプローチは、生物の神経ネットワークを模したニューラルネットワークによって知能を再現するという試みで、形式主義とはまったく異なるアプローチです。

 まずは、簡単に神経細胞の仕組みをおさらいしましょう。人間の脳や神経を形作る神経細胞はニューロンと呼ばれます。ニューロンには情報を受け取るための「樹状突起」と、情報を送り出す「軸索突起」があり、軸索突起から軸索の末端(軸索末端)へと情報を伝え、末端で別のニューロンにつながると「シナプス」と呼ばれる接合部を形成します。

 シナプスには、伝達する情報を強化・弱化させる機能が備わっているため、ニューロンの結合によって作られたネットワーク構造と、その間で行われる情報伝達の強弱の変化でによって情報処理が行えるような仕組みになっています。こうしたニューロンによって構成されるネットワークが「ニューラルネットワーク」です。

 コネクショニズムのアプローチでは、このニューラルネットワークを機械的に再現するところからスタートします。

 そこで神経細胞を簡略化した「人工ニューロン」が作られました。これは入力層と出力層からなっており、入力層が「樹状突起」で出力層が「軸索」のような役割を果たします。そこにシナプスが持つ情報に強弱をつける機能を「重み付け」として実装することで、一種の情報処理を可能にし、問題を解決できるようになります。

 そうして生まれた人工ニューロンが「形式ニューロン」や「パーセプトロン」と呼ばれるものです。

 こうした人工ニューロンは単体でも一種のニューラルネットワークとして機能し、簡単な問題であれば解決できました。ただ、より複雑な問題に対してはニューロンの数を増やして大きなニューラルネットワークを作る必要があり、そうした多層化して大規模になったニューラルネットワークを「多層パーセプトロン」や「ディープ(多層)ニューラルネットワーク」と呼びます。


 現代のAIはディープラーニングをはじめとするコネクショニズムのアプローチが注目されていますが、多層型のニューラルネットワークは中々実用レベルに達しなかったので、長い間コネクショニズムは形式主義に比べると、研究分野ではマイナー扱いされてきました。長年の苦労がようやく実ったということです。

【次ページ】人間の思考を再現する2つのアプローチ、違いは?
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