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日本において、DXおよびデータ活用が国家戦略に位置付けられるなど、各社さまざまな取り組みが進んでいる状況かと思います。金融業界においてもデータ活用の機運が高まってきているものの、なかなか標準化に繋がる取り組みが成就しにくい状況でした。そんな状況を変えるべく金融データ活用推進協会(FDUA)では、金融機関におけるデータ活用の標準化に資するために「金融データ活用組織チェックシート」(以下、チェックシート)の初版を2023年6月末に制定・公開しました。本記事では、チェックシートの背景と目的およびFDUA標準化委員会としての展望などをお伝えできればと思います。
執筆:WorkX 神野 雅彦、監修:金融データ活用推進協会代表 岡田 拓郎
執筆:WorkX 神野 雅彦、監修:金融データ活用推進協会代表 岡田 拓郎
大手IT企業、外資系企業、米国駐在、日系コンサルティング会社、外資系コンサルティングファームおよびブレインパッド執行役員を経て、現職に至る。
戦略策定と基幹業務(生産/物流/会計/営業/顧客管理/リスク評価)を中心として、国内外の業務/ITの専門家経験を活用したDX/デジタルトランスフォーメーションに係るコンサルティングサービスを提供し、特にデジタル活用実現に向けたデータドリブン組織への変革を主軸として、チェンジマネジメントおよび戦略策定と新規事業企画を推進する。2022年金融データ活用推進協会(以下、FDUA)設立より、標準化委員会 委員長代行を務める。
日経DXセミナー登壇/FinTech Journal登壇/各種セミナー登壇
矢野経済研究所 複数レポート寄稿
データ活用の現在地を手軽にセルフチェック
金融業界は、他の業種・業態と比較して、DXやデータ活用が遅れていると評価される傾向にあります。この状況を解消し、金融業界自らが積極的なデータ活用に取り組むことができる状態を促進することがFDUAの設立の目的でもありました。
また、そもそもデータ活用やDXが本当に遅れているのか、感覚値で終わっているのではないか、遅れているとしたら現在地はどの辺りなのか、遅れを取り戻すためには、どのような論点で検討や施策を推進すべきなのか、そのための手段やツールが存在しない状況でした。
そこで金融業界として必要とされる項目を必要最低限に絞り込みつつ、網羅性を担保し、設問も回答しやすい内容にしたチェックシートを策定することにしました。手軽かつ迅速に自社のデータ活用の現在地を確認でき、さらに今後の施策を検討できることが目的です。
また各社のチェック結果をFDUAにて集計することで、国内金融機関のデータ活用に係る進捗度と成熟度を可視化および情報発信していきます。これにより、現在地を認識し、弱点を明確化しつつ、克服するための対策を取ることができるようになる。結果的に、業界全体のレベルアップが促進されると考えました。
チェック項目は、利用データ、組織、ビジネス効果、データ基盤、人材育成、ガバナンスという6つのテーマで定義されています。このうち利用データ、組織、ビジネス効果は活用レベルに、データ基盤、人材育成、ガバナンスはインフラレベルと位置付けました。活用レベル、インフラレベルのそれぞれにおいて、自社の現在地を認識できるようにしています。
ポイント
- 各金融機関が自社のデータ活用レベルをセルフチェックし、今後の取り組むべき施策を検討できる。
- 国内金融機関のデータ活用進捗度を可視化し、業界全体のレベルアップを促進する。
本チェックは、1回チェックして終わりではなく、定期的に実施することに意味があります。「自己確認をくり返すことで、定期的に自社の立ち位置を明確化してほしい」という、作成者たちの意図が込められています。
対象とする業種は金融業界全般、すなわち銀行、信用金庫、証券、保険、信託銀行、カードリースなど、金融庁の管理監督下にある機関すべてが使えるものにしました。
どの業種でも膨大かつ構造化されたデータを持ち、慎重に情報を取り扱わなければならないという共通点があります。こういった金融機関に特有の状況を踏まえたチェックシートになるように検討したということです。
ただし、今回の初版では各金融機関の業種と業態に細分化はしていません。銀行と証券と保険では業務がかなり違うのはもちろん、同じ銀行でも都市銀行と地方銀行ではまた大きく違いますが、今回は初版ということで、共通でチェックできる内容にとどめ、業種による細分化は今後標準化委員会にて次版に向けて進めて行く予定です。
【次ページ】金融データ活用組織チェックシートの使い方とは?
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