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- 2019/02/13 掲載
成長率が鈍化した中国経済、実は「40年前の日本」とソックリ
実質GDP成長率のグラフで比較
米中貿易戦争の影響で輸出が伸び悩む
2018年については、米国と貿易戦争が勃発したことで輸出が低迷したほか、政府が進める債務削減策によって公共事業が大幅に縮小し、これにともなって全体の成長率も低下した。
中国のGDP統計は、日本や米国と異なり、生産面からの推計が中心となっている。支出面からの比較が難しく、業界ごとの成長率で間接的に状況を把握するしかない。
製造業による生産はプラス6.2%となっており、2017年を下回った。建設は以前から4%台の成長にとどまっており、全体より低く推移している。製造業の多くは輸出に依存している可能性が高いので、成長減速の主な原因は米中貿易戦争である可能性が高い。
貿易統計もそれを裏付けている。中国の2018年12月におけるドルベースの輸出額(ドルベース)は2213億ドル(24兆1200億円)と前年同月比で4.4%のマイナスとなった。米国向け輸出が大きく減ったことで輸出全体が低迷した。月別の動きを見ると、輸出の低迷は年後半から顕著となっており、米国が課した高関税が影響したと考えられる。
今のところ米国の製造業は、中国からの輸入について国内産や他国産に切り替えている状況だが、調達先を切り替えたところで、関税分を超えるコストダウンを実現するのは難しい。関税による価格上昇分は、いずれは最終消費価格に転嫁されることになる。
米国経済は、資材価格の高騰が消費に影響を与えるまでに約1年程度の時間がかかると言われており、そうだとすると、2019年後半には貿易戦争の悪影響が消費にも及び始める。需要そのものが伸び悩むので、中国の輸出はさらに低迷することになるだろう。
中国もそろそろ消費型経済への転換がスタートする
中国経済は、インフラ投資などの公共事業や輸出産業による設備投資で経済を伸ばしてきたという側面が強い。中国におけるGDPの支出項目比率は設備投資に偏っており、典型的な途上国型になっている。2016年のGDPのうち、個人消費が占める割合は4割程度しかない。GDPにおける最大項目は総固定資本形成であり、公共事業や企業の設備投資など投資関連の支出が4割以上を占めている。海外(特に米国)の旺盛な需要に応えるため、製造業を中心に大型の設備投資を行うとともに、各種の公共インフラ投資によって経済を成長させてきたことが分かる。
こうした経済構造の場合、米国の輸入という外需が低迷すれば、当然、全体の成長率にも影響してくる。2018年は貿易戦争が勃発したことから、米国による輸出が大きく減ったわけだが、もう少し長期的なスパンで見た場合、中国景気の減速には別の要因が関係している可能性もある。それは、かつて日本がたどってきた道と同様、消費主導型経済への転換である。
日本も戦後の高度成長時代には、企業の設備投資や公共事業が経済を引っ張ってきた。こうした途上国型経済がピークとなったのは1970年代前半で、この時の日本のGDPにおける固定資本形成の比率は4割近くに達している。つまり1970年代前半の日本の経済構造は、現在の中国とよく似ているのだ。
中国はここ数年、消費主導型経済への転換が進んでおり、個人消費の比率が上昇する一方、固定資本形成の比率は低下が続いている。このまま中国経済の体質転換が進めば、日本に近い形で経済が成熟型に推移する可能性は十分にある。
【次ページ】比較のグラフでわかった、日本と中国はちょうど40年のズレがある
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