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2018年10月に経団連が就活ルールを廃止し、新卒一括採用の見直しが議論されるなど、従来の新卒採用のあり方が変わろうとしている。売り手市場が続き、人材確保の難易度が増すなかで、新卒採用に代わる手段として注目を集めているのが、20代若手人材の採用だ。20代の採用を積極的に行い、事業成長を実現している企業はどんな施策を打っているのか。バンダイナムコオンライン 品川淳司氏、Sansan 金明正氏、アクセンチュア ダニエル・ゲルバー氏という各企業の人事採用担当者と20代向けの転職サイト「キャリトレ」を担う四方秀一氏に、若手優秀人材の採用成功の秘訣を聞いた。
高まる若手採用ニーズと20代の“ポジティブ”転職
四方氏:20代向けの転職サイトを運営するなかで、企業側の採用ニーズと、個人のキャリア観に大きな変化を感じています。有効求人倍率は年々上昇し、人材獲得競争が進むなか、少子高齢化の影響で特に20代の人口は減少の一途をたどっています。
新卒の売り手市場はつづき、今年度の求人倍率は1.88倍にものぼる状況です。このように新卒採用の難易度が高まるなか、若手人材の確保の新たな選択肢として注目されているのが20代の中途採用です。
一方、20代のキャリア観は、技術革新によって新たな雇用やビジネスが急速なスピードで生み出されている今の環境が大きな影響を与えていると言えます。終身雇用という概念はなくなりつつあり、組織に依存する働き方から大きく変わろうとしています。
実際に20代3000人に調査した結果、転職に対して後ろめたさや罪悪感を感じる人はわずか3割弱にとどまっており、今までネガティブな印象があった転職を、今の20代はポジティブに捉えていることがわかります。
さらに、キャリトレ会員への調査では、会社選びにおいて、企業ブランドよりも、どのようなスキルや経験を身につくかを重視したいと答えた人は8割以上にのぼりました。
つまり20代は、「どこで働くか」よりも、「何をするか」が重要であることが伺えます。このように、企業の採用ニーズが高まり、個人の転職に対するハードルも低くなっています。実際に、「入社3年未満」で転職した人の7割が満足しているというデータもあるほどです。
20代の転職市場はますます活況ですが、20代の採用に強い企業3社の人事はどんなノウハウや戦略を持っているのでしょうか。
20代でも「能力重視」の採用
四方氏:まだ実績や経験が少ない20代の採用は、ポテンシャルの見極めも難しいかと思いますが、実際に若手採用を積極的に行っているみなさんが、20代の採用に期待していることをお聞かせください。
品川氏:弊社サービスにおけるターゲットユーザーは、ゲームタイトルによりますが10~20代の若い方であることが多いです。そのため、ユーザーの嗜好や心理を捉えたゲーム開発・運営をしやすいという点で、20代の採用は効果的であると考えています。
金氏:代表も40代前半で、全体的に若い会社であるという前提のもと、20代でも能力をしっかり見極めて採用をしています。すでに実績もあり、能力が高い方もいれば、ポテンシャルが高く、速いスピードでキャッチアップしていただけそうな方も積極的に採用しています。
ゲルバー氏:会社の急速な成長を支えるためには、ダイバーシティーを重視した採用をしていく必要があり、働き方改革なども含めて採用の幅を広げています。
その一つとして年齢のダイバーシティーがあり、なかでも20代は重要な存在です。ポテンシャル採用でありながらも、一定の社会人経験はあるため、ちょうど良いバランスをもつ人材なのではないかと考えています。
個人の価値観に合わせて、働く環境の魅力を訴求
四方氏:優秀な20代の採用は競争が激しく、難易度も高いと思いますが、採用における工夫や取り組みがあれば教えてください。
ゲルバー氏:ミレニアル世代の特徴として、2つ言えると思います。1つ目は「個」を大事にしていること。マス対応ではなく、個人にカスタマイズされた対応を求めている印象です。
スカウトメールは、個人にカスタマイズしたメールを送り、採用イベントは、採用担当者が一方的に話す数十人規模の形式ではなく、一人ひとりと話せる時間を設けた機会をつくるようにしています。
2つ目は、ワークライフバランスを重視したい人が多いということです。その場合、弊社の人事制度やさまざまな働き方について丁寧に説明するように心がけています。20代はとことん頑張りたいという人もいれば、子供の送り迎えで時間に制限がある場合もあります。一人ひとりのライフスタイルに合わせた説明をすることが、効率的ではないですが、効果的ではあると考えています。
金氏:最近では多くの方から興味を持っていただけるようになってきましたが、競合企業が多く存在するなか、最後に入社の意思を決めてもらうことが難しいと感じています。
そこで、社内の採用に対する意識と、候補者へのアプローチの2点に注力しています。20代は「どこで働くか」よりも「何をするか」が大事だと考えており、ここで楽しく働けそうか?というフィット感を重視しているように感じます。
面接のなかで「何をしたいのか?」を深掘りし、面接の合間にはリクルーターがフォローに入り、キャリアコンサルタントに近い形で候補者に寄り添って話をするようにしています。
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