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国内トップのオンライン旅行代理店、エクスペディア。その技術力には絶対の自信を持ち、同社の日本支社エクスペディア・ジャパン 代表 石井恵三氏は、「GAFAと並ぶ」と豪語する。同社はその技術と戦略をもって、どのようにして日本の旅行業界を変革していくのか。
エクスペディア流AI活用法、GAFA並みの開発部隊を抱える
──前回、マーケティングにリソースを配分するためにするAI(人工知能)を使った省人化の必要性についてお聞きしました。具体的に、エクスペディアではAIについてどのような取り組みをしていますか?
石井氏:まず、我々が取り組み始めたのは、Excelを使う人を減らして、AIに任せるということです。
たとえば、検索連動型広告のキーワードの入札や文言の最適化をAIにしてもらっています。旅行にまつわるキーワードは何万もあり、これまではExcel上でグループ化して最適化を図ってきました。それをグループごとではなく、1キーワードごとに調整できるようになりました。さらに、追加の開発費をかけず、トレンドを学習させることも可能です。
また、AIはコールセンターの人員配置にも活躍しています。予約が多いほど、それだけ多くのお問い合わせが来るので、季節性や広告の配信量も踏まえた予測をしているのです。
──AIの開発体制について教えてください。
石井氏:開発はほとんど自社で行っています。一般的なシステム開発企業よりもかなり高レベルな開発部隊がアメリカの本社に5,500人以上いて、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)らと人材の取り合いを繰り広げています。
なお、一般的にAIは育成中に一度誤った学習をしてしまうと元には戻せない性質のため、同じ用途のものを何パターンも作り、トレーニングしています。そして、正しく育った一つのみを採用します。一つのAIを育てるのにAIトレーナーが何十人も必要です。まさにそれが、「AIに奪われる仕事」に変わる新しい仕事ですね。
いずれは何もしなくてもWebサイトが改善されていく
──2017年4月にオープンされたシンガポールのイノベーションラボの役割についてお聞かせください。
石井氏:イノベーションラボはWebサイトにおけるユーザビリティー・リサーチの研究所で、シアトル、ロンドンに続く、3つ目の拠点です。
注力しているのは3つのデータで、眼球の動き、顔の筋肉の動き、マウスの動きの3つです。この3つのデータを分析して、どのようにページを推移したのか、どのページが見づらいのかなどを判断します。筋肉の動きで感情を読み取れるようになり、それをAIが長い時間をかけて蓄積してきたので、かなり精度の高いデータを出せるようになってきました。
このデータを基に、我々がWebサイトを改善していきます。最終ゴールとしては、AIが開発まで行い、我々が何もしなくても自動的にサイトが日々改善されていくことを目指しています。
また、それ以外の行動データも4つに分類して取得・分析しています。「トップページにどうやって来たか」「サイト内でどう検索したか」「検索結果から個別ページにどう遷移し、どう推移したか」「入力フォームでどのように推移したか」。専任の担当者が毎日細かく見て対策を立てています。
【次ページ】エクスペディアがなぜ地方自治体をコンサルできるのか
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