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- 2018/10/26 掲載
「水道事業広域化」が本格化、日本の「安くて安全でおいしい水」は守れるのか?
香川県でほぼ全県規模の組織が全国初登場
大きな川がなく、雨が少ない瀬戸内海式気候の香川県。大昔から水不足に苦しめられた歴史を持ち、渇水になるたびに取水制限を繰り返してきたが、ほぼ全県規模の広域水道企業団が新たに生まれ、4月から県内市町の水道事業を引き継いで事業に入った。企業団に参加したのは香川県と高松市、丸亀市など県内16市町。岡山県から取水している離島部の直島町を除く全市町が加わった組織で、事実上の1県1水道体制を実現したのは全国初になる。
企業団は当面、各市町で異なる料金体系を引き継ぎ、2028年度から月2,900円程度に統一する方針。一部地域には値上げとなるものの、全体で単独運営より1割ほど安くなり、中長期的にはさらに圧縮できるという。さらに、71ある浄水場を38に順次統合するほか、10年間に1,300億円を投じて設備更新や耐震化も進める。
企業団は「状況を考えると広域化してコスト削減するしかない。市町数が他県より少なく、水に敏感な県民性が統合に幸いして県の呼びかけに各市町がついてきてくれた」と振り返る。
財政基盤が弱く、単独運営では大幅値上げが必至
水道は事業主体の大半が市町村で、全国に約1,300の事業者がある。うち、約950を給水人口5万人未満の小規模事業者が占め、電気、都市ガスなど他のインフラと違って財政基盤が弱い。全国の事業者が抱える有利子負債は計約8兆円に達し、年間収入の3倍に及ぶ。独立採算でありながら、全体の3割は赤字に陥り、市町村が補填している。将来、経営破たんに陥る事業者が相次いでもおかしくない状況だ。
管路の老朽化が進んでいるのは香川県だけでない。全国の法定耐用年数を超えた管路の比率は2015年度で13.6%。10年間で7.6ポイントも上昇した。今のペースで管路を更新すれば、終了までに130年以上かかる。
新日本有限責任監査法人、水の安全保障戦略機構事務局の推計では、福岡県みやこ町で20立方メートル当たりの月額料金が2015年の4,370円から2040年に2万2,239円にはね上がるなど、ほとんどの市町村で大幅な料金値上げが予測されている。
このため、政府は広域化を柱の1つとした水道法改正案を国会に提出した。法案は7月に衆議院で可決されたが、参議院で継続審議となっている。次の臨時国会で可決されれば、衆議院に送られて成立する見通しだ。
厚労省水道課は「水道事業はまさに危機的な状況といわざるを得ない。この苦境を脱するには、事業を広域化するのが最善策だ」と強調する。
【次ページ】徳島、千葉、広島でも広域化を模索する動き
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