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- 2018/10/09 掲載
青山学院大 井田昌之教授が明かす、デジタル化・グローバル化の「真実」
情シスではなく、事業部門がテクノロジーを扱う時代
約40年にわたるそのキャリアを通じて常に最先端を追い続けてきた井田教授は、デジタルトランスフォーメーションが加速する今の時代をどのように捉えているのか。
インタビュアーを務めたのは、IDC Japanエンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャーの鈴木康介氏である。
(鈴木氏)──現在、テクノロジーとビジネス戦略はどのように関連しあっているのでしょうか。
井田教授:端的に言えば、事業部門がテクノロジーそのものを扱っていく必要性が高まっています。従来のような情報システム部門ではなく、事業部門自身が「そのテクノロジーはどこから調達できるのか?」「そのテクノロジーは何なのか?」「自社のビジネスをそれによってどうリードするのか?」など、ITの主導権を握るようになりました。
これが、事業部門におけるビジネス戦略の変化です。これまで情システム部門が担当してきたバックオフィス機能の基盤構築とはまったく次元が異なり、「ビジネスを推進するプロフィットセンターとしての情報基盤をいかに構築するか」「誰がどうやってそのビジネスのロジックをITで組み上げるのか」「どうやってその効果を測定するのか」といったところに議論が及んでいます。
アジアにおいて、日本はどういうプレーヤーになるか
──デジタル化とグローバル化の動向についても教えてください。井田教授:グローバル化という動きそのものは決して新しいものではありませんが、現場レベルの動きは非常に激しさを増しています。教科書のない時代において、大学院の教員も学生も手探りしている状況です。
一方のグローバル化については、積極的な動きだけではなく、否が応でも行わなくてはならないグローバル化やグローバル協業もあります。「日本国内で人材をまかないきれなくなっている」「IT基盤はすでにグローバル化している」というのがその理由です。
また、日本はアジアの中にあるという根本課題を忘れてはなりません。デジタル化にせよグローバル化にせよ、現実として中国はどんどん先を進んでおり、このままでは日本は“置いてけぼり”にされてしまう恐れがあります。
OECD(経済協力開発機構)などの調査でも、中国とインドが20年後の世界のミドルクラス層の人口、すなわち消費の最も大きな層の半分を占めるようになると予測されています。アジアを単なる安価な労働力の供給源として見るのではなく、安定した高信頼の労働力の供給源、ならびに確かな市場として捉えていく必要があります。
【次ページ】“ゆでがえる”にならないこと、すでに「前兆」は起こっている
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