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- 2024/08/20 掲載
生成AIで企業アプリはどう変わる?社員が身に付けないとヤバいスキルとは
AIによるアプリの機能強化の“2つ”の方向性
大規模言語モデルの性能向上に加え、処理に必要なITリソースを抑え、各現場への配備を可能とする小規模言語モデルの開発、さらに基盤モデルのマルチモーダル化など、生成AIの進化が加速度的に進んでいる。IDC Japan Software&Servicies シニアリサーチアナリストの太田 早紀氏は、次のように語る。
「企業向けアプリの今後のモダナイゼーションにおいて、生成AI機能の取り込みが進むことに疑念を挟む余地はありません。それがアプリ自体、さらに企業の組織を変えていくことになります」(太田氏)
IDCはアプリを、「企業の収益構造プロセスにひもづいたITテクノロジーのユースケース」と定義する。業務基盤としての必要性から、国内アプリ市場について、22年の1兆8,130億円から28年には2兆6,760億円にまで今後も堅調に拡大すると予測(図1)。23年から28年にかけてのCAGR(年平均成長率)は6.3%だ。
では、アプリの生成AI機能の取り込みを通じ、企業にはどのようなメリットがもたらされるのか。その点で太田氏が指摘するのが、(1)「従業員の強化」と、(2)「パフォーマンス向上のための組織の再構築」である。太田氏は、「IDCではAIがもたらす価値を短期と中・長期の双方の観点で捉えています。従業員の強化は即効性のある短期、組織の再構築は中・長期の貢献に位置づけられます」と説明する。
モデル最適化でデータは何より大事だが……
「ITサプライヤーがユーザー企業における生成AI活用を促進/支援していくためには、AIの基盤モデルやデータ基盤を提供する企業との連携、さらに、ユースケースごとの最適なモデル選定などが鍵を握ります。まずはそれらに早急に着手すべきです。並行して、ユースケースのカタログ化やテンプレートの用意、インターフェースの強化なども必要となります」(太田氏)
課題も調査によってすでに明らかとなっている。モデルの最適化に向けて、データは何より重要だ。一方で、業務遂行中のファイル保存に関するルールを全社で整備済みの企業は全体の32.9%と半数未満だ。
太田氏は、「組織規模が小さいほど、この傾向が強くなります。このままではデータの分散管理により、結果としてAIの力をそれだけ引き出しにくくなります。全社データの有効活用に向け、データの集約や管理に関する何らかのルール整備も急務です」と訴える。
「生成AIのCX関連業務における課題」との質問に対して、企業から回答の多かった上位3つが、「既存システム/業務フローとの統合性、互換性の欠如」(23.7%)、「AI利用での倫理的、法的取り扱いが不明瞭」(22.6%)、「データプライバシーとセキュリティの懸念」(22.5%)である。これらの課題対応に向け、アプリへのAI組込み機能の活用に向けた、「アプリ統合のためのAPIインターフェースやデータ連携機能の実装」や、コンプライアンス遵守のための「AI利用に関する明確なガイドラインの策定やデータプライバシーポリシーの明確化」などにも取り組むべきだという。 【次ページ】これまでと「別次元の能力」が従業員に求められる
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