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  • 2018/08/29 掲載

平尾社長が考えるM&A術、じげん流「カルチャー・コングロマリット」とは何か

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2006年の創業以来、11期連続で右肩上がりの連続増収増益を続けている「じげん」。前編では、なぜ同社が勝ち続けているのか、その強さを支えるビジネスモデルに対する考え方を平尾 丈社長に聞いた。後編では、成長に欠かせないM&Aに対する考え方、ならびにM&A後にどう統合していくのか、PMI(Post Merger Integration)で見出した「カルチャー・コングロマリット」などについてさらに深堀りした。
聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、執筆:井上猛雄

聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、執筆:井上猛雄

前編はこちら(この記事は後編です)

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じげん 代表取締役社長 平尾 丈 氏

大企業が直面する「イノベーションのジレンマ」の解消法

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──市場規模を重視しているとのことでしたが、主戦場の多くはこれから形成される未知の市場です。どのように算定されているのでしょうか。

平尾氏:結局のところ、マーケットは何かしらの積分だったりするので、どんな人たちにどんなニーズがあって、その人たちがいくらお金を出せるのかということで決まると思います。市場規模はそうした積み上げからのボトムアップでも、大きな経済指標からのトップダウンでも算定することができます。

──企業が単純に考えがちな課金モデルについても、ユニークなポートフォリオをお持ちだとお見受けしました。驚きなのが同じメディア上で複数のモデルを展開されていることです。

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じげんでは同一サービスでも複数の課金モデルを用意している
平尾氏:「掲載課金モデル(掲載するだけで費用が発生するモデル)」のほうが確かに自分たちの利益は上がります。しかし、それは短期的な視点で、景気が悪くなったとき、解約されてしまうリスクもあります。それで過去に多くのプレイヤーが消えていきました。

 そのため、応募や採用時の成果が出たら課金される「応募課金モデル」や「採用課金モデル」の方式も用意しています。

 クライアント側は一見、すべて成果報酬がよいという論理が働くはずですが、景気がよいときは、コストがかかっても人が欲しいので掲載課金モデルを取ります。これは効率性でなく、規模重視だからです。一方で、成果報酬型は、景気と逆相関します。景気が厳しい時は投資効率を重視するからです。

 こういうそれぞれの特徴を押さえて、正しい順番で進めたことがよかったのだと思います。最初が応募課金で、そこから採用課金にして、掲載課金も入れたことで、以前よりも事業リスクをヘッジできました。

──ただし業界や業種により、このモデルが合う合わないこともありそうですね。

平尾氏:はい、それはあると思います。そのため、すべてが“ポジショニングの妙”というか、白か黒かじゃなくてよいと思っています。市場の成熟度によっても、また変わってくるでしょう。これが大企業の場合だと「本当にやるの?」という議論で何年もかかって、ひたすらジレンマに陥ってしまう(笑)。

 でも時代も変わったので、その変曲点とか、先ほどのようなポートフォリオが成り立つかどうかをきちんと試算すればよいと思います。成り立つならやればよいし、成り立つにはどうするべきかという議論から始め、どこまでいけば成り立つのかということを考えればよいでしょう。

 さらに市場のトランザクション(流通量など)が一定のしきい値を越えたら、マーケットも変わり、参入するプレイヤーが増えて、全体のパイも広がる。既存分の減収分と比較してペイしそうだったら、参入すればよい話だと思います。

M&A後のPMIとじげん流の「カルチャー・コングロマリット」の考え方

──なるほど。じげんでは事業ポートフォリオを入れ替える可能性はありますか?

平尾氏:今、手掛けている事業のマーケットが大きく、私たちのシェアは1%に満たないので、業績の伸びる余地はまだまだあると考えています。長期的には事業ポートフォリオの入れ替えも考えていますが、ご指摘のとおり、成長のS字カーブのなかで、飽和期や衰退期に対する経営戦略として、ピボット(事業転換)は問われていると思います。

 先ほどの課金モデルのポートフォリオは、あくまでリスクヘッジでしかありません。リスク分散をしているのは、景気連動型のビジネスだからです。本質的には、課金方式はお金のいただき方の違いでしかないわけで、コンバージョンを上げて効果を出すことが一番大事ですね。

──M&A戦略についても、ユニークであるように見えます。

平尾氏:いや、そこは至って普通、教科書どおりにやっています。その会社が持つケーパビリティ(実現力)が何で、じげんに対して相対的によいものかどうかという点を詳しく見ます。次いで、組織のファンクションとして「相対的に見て、じげんより優れているのであれば、これはこっちに持ってこよう」という具合に、構造化についても考えています。

 あとは変えなくてもよいものもありますよね。たとえばカルチャーは、いま結果的にそうなっていますが「カルチャー・コングロマリットであろう!」という趣旨のことを社員にも言っています。

──それはどういう考え方なのでしょうか? じげん独自のものでしょうか?

平尾氏:これは自分でつくった言葉なんですよ(笑)。コングロマリットは、相互に関連のない異業種の事業・事業を統合してできた巨大企業集団や複合企業を指しますが、その考え方をカルチャーに応用しています。もともとカルチャーは各社が持っているものなので、じげんっぽく変えない、あるいは逆にじげんとは違う形に変えることでうまくいくケースも出ていることからこの考え方が生まれました。


 10件のM&Aで組織の統合を進める際、株式取得対象の企業がエンジニアの組織であれば、家族経営のようにしますし、一方で美容ヘルスケア支援のリジョブのように、社会性をアピールしてソーシャルに強い場合は優秀な女性に参画いただきやすい組織に変えていくこともあります。全部がじげんのカルチャーでよいとは思っていません。その産業や経営層との関わりあいのなかで、こういうカルチャーがよいのでは? ということを考えながら改革しています。

 とはいえ、M&A後の組織PMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセスのこと)には答えがありません。事業側で相対的に比較しても、その辺は結果論でしかありませんから。

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