0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
共有する
かつてない変革の波の中で、「保険業界」を破壊することを自ら謳っているSOMPOホールディングス。そのCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を務めるのが、楢﨑浩一氏だ。2016年春、デジタルトランスフォーメーションのためにシリコンバレーから日本の保険会社へと呼ばれた男は、これから先の業界に何を見ているのか。
執筆:工藤淳、編集:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎
執筆:工藤淳、編集:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎
保険会社にとってSDGsは“自分ごと”
持続可能な社会を目指し、2030年を起源に「17の目標」を掲げているSDGs。
SOMPOホールディングスでは、中核会社である損保ジャパン日本興亜の会長である二宮雅也氏が、経団連でSDGs達成に向けた企業行動憲章の改定に尽力。現在もグループCEO 代表取締役社長の櫻田謙悟氏、国内損害保険事業オーナー(損保ジャパン日本興亜社長)西澤敬二氏のトップ2名の主導でSDGsを強力に推進している。
こうした取り組みの理由を楢﨑氏は、「保険会社にとってSDGsは“自分ごと”なのです」と語る。
「たとえば今年7月の西日本豪雨被害では、数百名の人員を当社から現地に送っています。これまでのほかの大災害でも同様です。被害に遭われたお客さまに自宅の再建費用をお支払いするため、一日も早く実地調査を行うのが私たちの務めです」
近年こうした豪雨災害が頻発する背景には、地球温暖化も大きな影響を及ぼしている。環境の悪化による大きな自然災害は、巨額の保険金支払いとなって、保険会社の経営に少なからぬインパクトを与える。そうした地球環境の変化などすべての問題が自分たちのビジネスに直結するという意味で、SDGsとは保険会社にとって“自分ごと”であり、看過できない。
「SOMPOホールディングスグループ挙げてのSDGsへの取り組み。その中で私は、デジタルの専門家として技術を活用し、あるべき未来へ貢献したいと考えています」と楢﨑氏は語る。
すべてを破壊するデジタル・ディスラプションの大波
SOMPOホールディングスでは、2016年から始まった5カ年の中期経営計画で、「保険の先へ、挑む。」をスローガンに掲げ、「安心・安全・健康のテーマパーク」という従来とはまったく異なる保険会社像の実現を目指している。
これまでの保険は事故や病気が起こってから、その治療費や修繕費などの損害を補填するものだった。だがこれからはそうした不測の事態を予防し、事故を起こさない、病気にならない世界を作っていくことが、保険会社におけるSDGs=持続可能な社会につながる。
楢﨑氏は、こうした変革はデジタル技術による既存の業態の破壊(デジタル・ディスラプション)によってのみ引き起こされると語る。ではそのデジタル・ディスラプションとは、いつ、どんな形でやってくるのか。
「すでに自動車業界では『
CASE 』(Connected、Autonomous、Shared、Electric)という大波が押し寄せており、これらはいずれもデジタル技術によって支えられています。間もなく自動車は、これまでの所有する形態からMaaS(Mobility as a Service)に完全に移行するでしょう。そうなれば自動車を取り巻く保険制度や法律、道路などのインフラも、これまでにないまったく新しい姿に変わっていくのは確実です」
自動車だけではない。デジタル・ディスラプションは、保険の3つの柱である「自動車」「火災・損害」「医療・生命」すべての既存の枠を破壊し、新しく生まれ変わらせる、と楢﨑氏は言う。
そのようにデジタルが既存の業務や業態を容赦なく破壊してゆけば、そのビジネスに携わっている人々の生活はどうなるのか。
楢﨑氏は、「これまで成功してきた業界ほど壊せない。今現在にしがみつくマインドセットが強ければ強いほど、未知の変化がリスキーに思えて動けなくなる」と、自ら意識を持って変化を“選ぶ”ことが必要だと指摘する。
【次ページ】「“王様は裸だ”と言わなくては」デジタル変革先導者の未来予測
関連タグ