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  • 2018/07/19 掲載

デジタルの予言者デイビッド・シング氏が断言「押しつけメッセージはミュートされる」

独占インタビュー

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企業のブランド価値を左右する「コンテンツ」の重要性は増す一方だ。反面、「顧客に響くコンテンツ」を模索し続けているマーケターも少なくない。デジタル広告事業とTechCrunchやEngadgetなどのメディアブランド運営事業を展開するOath(旧AOL)の「Digital Prophet(デジタル領域の予言者)」として知られるデイビッド・シング氏が、ビジネス+ITだけにデジタルの未来を語った。
聞き手:ビジネス+IT編集部 佐藤 友理

聞き手:ビジネス+IT編集部 佐藤 友理

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「Digital Prophet(デジタル領域の予言者)」としても知られるOathののデイビッド・シング氏


エグゼクティブは忙しすぎてコミュニケーションができていない

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 適切で価値あるコンテンツは、顧客を引き付ける。その結果、自然と顧客を誘引でき、関係性を強められ、利益につながる行動を促せる。

 そのことを頭では理解しながらも、実践に苦労している企業は多い。「それは仕方ない面もあります」と語るのは、デジタル領域の予言者、デイビット・シング氏である。

 同氏がそう考えるのは、「舵取り役のエグゼクティブはとかく多忙だから」との単純な理由からだ。社内外にさまざまな声がある状況で、与えられた課題のすべてに的確な対応を求めるのは酷である。

 しかし、多忙を理由にコンテンツをおろそかにしては、ブランドの凋落は避けられない。こうした状況を回避するためには、どのようにコンテンツ制作をすればよいのか。

 最初のステップとしてシング氏は、「ターゲット顧客やチャネルとの密で継続的なコミュニケーションの重要性を、エグゼクティブが理解して実践すること」を挙げる。

 マーケティングの出発点は顧客を知ることだ。そこで日頃からコミュニケーションを取っている現場はもちろん、トップ自らもこの基本を徹底すべきというわけだ。

「継続的なコミュニケーションをしなければ、目まぐるしく変わるトレンドへの追随はとうてい困難でしょう」(シング氏)

「何をどうやるか」じゃない、「なぜやるか」なんだ

 次に取りかかるのがコンテンツ内容の検討である。ただし、そこには陥りやすい罠があるという。それは「何(What)を」「どう(How)やるか」の議論に終始してしまうことだ。

「コンテンツ制作の最終決定権は多くの場合、40~50代のエグゼクティブが持っています。問題となるのが、彼らの頭はすでに十分過ぎるほど固く、いくら知ろうとしても主要ターゲットとなる若者を十分には理解できないことです。これでは現場などからのアイデアの良し悪しを判断できるわけない。それよりも責任者が妥当性を判断できるよう、『なぜ(Why)』その施策をやるのかを、議論の中心に据えたほうが良いのです」(シング氏)

 シング氏の論に従えば、コンテンツの決定権は顧客と同年代が握るべきだが、そうした企業は日本ではほぼ皆無である。シング氏は「メインターゲットの1つでありながら、若年層に対するコンテンツが圧倒的に弱いのが日本のWebマーケティングの実情なのです」と説明する。

コンテンツの「2種類の評価軸」を混同したら失敗する

 ブランド間の競争が激化する状況で、現状から脱するための一手が必要だ。そこでシング氏が提言するのが、「顧客の直接的な反応を測るコンテンツ」と「顧客の感情に訴えるコンテンツ」の2つを用意することだ。そして、それぞれの基準で顧客を把握する。前者は売上高や利益などが、後者はブランドイメージの調査結果などが測定指針となる。「これら2つを混同しては判断を誤りかねない」と、シング氏は警鐘を鳴らす。

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「購買喚起」と「感情を揺さぶる」コンテンツは分けるべきだと語るシング氏

 たとえば、ある商品のキャンペーンを行い、その結果として売り上げが伸びたとしても、商品の品質が伴わなければブランドへの信頼は毀損される。この場合、顧客の直接的な反応を測るキャンペーンは成功したが、低品質の商品が顧客の感情を害してしまったということになる。逆に、品質が担保できていれば、ブランドへの信頼は必然的に高まり、顧客の感情に訴えるという意味では成功する。

「昨今のマーケティングでは、顧客の感情をどれだけ揺り動かせたかどうかが重要です。そこで、コンテンツのねらいが『売上』と『感情への訴え』のどちらにあるのかを当初から明確にして結果を評価し、改善に取り組むという一連の活動が若者との関係強化で大切になるのです」(シング氏)

【次ページ】アッチとコッチからコンテンツを評価する
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