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- 2018/03/08 掲載
五輪選手の「体調管理」ツールが「医者中心の医療」を駆逐する
GEヘルスケアが発表したオリンピアンの体調管理ツール「AMS」
AMSは五輪に出場するトップアスリートに対して医師が最適化された処置を施せるよう、複数の情報源から統合されたデータをタブレットで提示する。CTなどの画像データや患者の脈拍数といった情報が閲覧可能だ。さらに、会場やイベント、競技に特有な傾向などを知り、ケガや病気の傾向を分析する。アスリートの健康状態を監視し、ケガを未然に防ぐことを目指す。
AMSはクラウド上にデータが保存されるので、情報を必要とする医師は世界のどこからでもアクセスできる。また、多言語化対応がされているので、英語・日本語・フランス語・アラビア語・ロシア語・中国語・ドイツ語・スペイン語・韓国語が利用可能だ。
膨大なデータの分析を通して、ケガが何度も発生している位置を特定したり、特定の会場を訪問した観客で流行っている病気を明らかにしたりといった使い方も考えられる。
AMSの根幹には「プレシジョン・ヘルス」の概念がある
患者を中心に最適化された処置を提供する考え方は「プレシジョン・ヘルス(精密医療)」と呼ばれ、未来の医療システムの在り方として期待されている。これはアスリートに限った話題ではなく、あらゆる市民に対して適用されうる。これまでは医療行為を行う医師側を中心に医療システムが構築されてきたが、プレシジョン・ヘルスは複数の医療サービスをまたがって、患者を中心にデータを管理する考え方だ。プレシジョン・ヘルスでは、生活習慣から遺伝子データまで、あらゆる情報を1つのデータベースに保持し、個人個人に応じて、最適な診断・処置を行う。膨大なデータが蓄積されているので、似た特徴・症例を持った患者グループを特定した上で、医療上の判断が行えるのがメリットだ。
製薬のロッシェ、NVIDIAとの協業も
プレシジョン・ヘルスを実現する上で困難なのは、組織をまたがって散在するデータを統合することだ。GEヘルスケアは複数の企業と連携しながら、このビジョンの実現を目指している。2018年1月にはGEヘルスケアと製薬会社のロッシェが提携し、がん治療におけるプレシジョン・ヘルスの実現を目指すプラットフォームの開発を行うと発表した。
このプラットフォームでは、患者の治療記録、最新の研究やベストプラクティスを蓄積し、医師の診断を支援する仕組みを提供する。病院の検査機器がプラットフォームに接続され、多様なデータを分析し、合併症が起こる前にそのリスクを伝える仕組みを有する。
診断支援を行う上で、データ分析及び人工知能技術開発は肝となる。多様な検査データから病気や合併症のリスクを見出すのはデータ分析の役割だからだ。GEは人工知能を活用した健康管理を実現するため、半導体メーカーのNVIDIAと協業を進めている。
GEとNVIDIA は共同で、画像分析の高速化や診断支援に有効な技術であるNVIDIA GPU Cloudを発表した。さらに、速く正確に超音波データを可視化できる技術や、人工知能技術の中心となるディープラーニング(深層学習)を実装するための製品を開発している。
【次ページ】医療システムは医師中心から患者中心へ
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