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- 2018/02/08 掲載
イーロン・マスクも買収、ソーラーパネルの関税が米中で白熱するワケ
1年ごとに段階的に下げる関税を設定
この理由として大統領は「中国は政府からの不当な助成金により米国内市場でダンピングを行い、米メーカーの競争力を奪っている」としている。2017年の就任以来「中国との不平等な貿易を改善する」というのがトランプ公約のひとつであり、今回の関税はそれを実現した形となる。
もっとも30%という数字に落ち着くまでにはさまざまな葛藤があった。政権としては、たとえば米国内で最もソーラーパネルの需要が多いカリフォルニア州の4~5割という高い関税率にする、という要望に応える方法、あるいはより低い関税率にしてあからさまな対中政策をよりマイルドに見せる、という選択肢があったが、結局、米国際貿易委員会の示唆に沿った形での関税導入を決定した。
中国と韓国メーカーで過半数、拠点を変えて関税逃れも
米国内で普及している太陽光パネルは実はほとんどが中国製だ。米国内にはおよそ30万人のソーラーパネル関連の雇用があると言われるが、製造関係者はわずか3万8000人。残りはすべて販売、設営などに携わる労働者となる。米国内のメーカーからは「中国製ソーラーパネルの価格ダンピングにより製造業が奪われている」という不満の声があった。実際、グリーン政策を進めていたオバマ政権から5億3500万ドルの政府融資を受けていた米国のソーラーパネル企業、ソリンドラ社が2012年に倒産したのは価格面で中国製のソーラーパネルに対抗できなかったためと言われる。
その結果、米政府は2013年には対中国のソーラーパネル関税を実施したものの、中国大手企業は製造拠点を韓国、マレーシア、シンガポール、ドイツなどに移すことで関税逃れに成功している。今回の関税は中国に限らずすべての輸入パネルに課税するというもので、こうした中国の動きを封じるのが主な目的だ。
ソーラーパネルに関する統計調査を行っているPV TECH社によると、2016年の世界のソーラーパネル製造業者の規模によるランキングは1位がGCL、2位Trina、3位Jinko、以下JA、Wacker、Hanwha Q-Cell、Canadian Solar、 OCI、 First Solarとなり、7位のカナディアンソーラー以外はすべて中国あるいは韓国のメーカーとなっている。米国内のシェアを見ても、3位にカナディアンソーラーが入っている以外はやはり中国、韓国メーカーが過半数を占める。
【次ページ】イーロン・マスクがソーラーパネル企業を買収したのには理由がある
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