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  • 2018/02/08 掲載

イーロン・マスクも買収、ソーラーパネルの関税が米中で白熱するワケ

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新年早々、米トランプ政権が核開発の見直し、そして中露を「脅威」と位置付けて話題になっている。また突然TPPへの復帰を匂わせる発言が行われたが、これも対中国のポーズのひとつとも言われる。米国が成長する中国産業に警戒心を募らせているのは事実で、その象徴とも言えるのが今回取り上げる「ソーラーパネルをめぐる攻防」だ。

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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ソーラーパネルの関税を巡って米中が攻防を繰り広げるのには理由がある
(©imacoconut - Fotolia)

1年ごとに段階的に下げる関税を設定

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 1月27日、米トランプ政権は中国などから輸入されるソーラーパネルに対し、30%の関税をかけると発表した。ただし30%となるのは今年1年限りで2年目には25%、3年目には20%、4年目には15%と年々下降するという暫定的課税だ。

 この理由として大統領は「中国は政府からの不当な助成金により米国内市場でダンピングを行い、米メーカーの競争力を奪っている」としている。2017年の就任以来「中国との不平等な貿易を改善する」というのがトランプ公約のひとつであり、今回の関税はそれを実現した形となる。

 もっとも30%という数字に落ち着くまでにはさまざまな葛藤があった。政権としては、たとえば米国内で最もソーラーパネルの需要が多いカリフォルニア州の4~5割という高い関税率にする、という要望に応える方法、あるいはより低い関税率にしてあからさまな対中政策をよりマイルドに見せる、という選択肢があったが、結局、米国際貿易委員会の示唆に沿った形での関税導入を決定した。

中国と韓国メーカーで過半数、拠点を変えて関税逃れも

 米国内で普及している太陽光パネルは実はほとんどが中国製だ。米国内にはおよそ30万人のソーラーパネル関連の雇用があると言われるが、製造関係者はわずか3万8000人。残りはすべて販売、設営などに携わる労働者となる。米国内のメーカーからは「中国製ソーラーパネルの価格ダンピングにより製造業が奪われている」という不満の声があった。

 実際、グリーン政策を進めていたオバマ政権から5億3500万ドルの政府融資を受けていた米国のソーラーパネル企業、ソリンドラ社が2012年に倒産したのは価格面で中国製のソーラーパネルに対抗できなかったためと言われる。

 その結果、米政府は2013年には対中国のソーラーパネル関税を実施したものの、中国大手企業は製造拠点を韓国、マレーシア、シンガポール、ドイツなどに移すことで関税逃れに成功している。今回の関税は中国に限らずすべての輸入パネルに課税するというもので、こうした中国の動きを封じるのが主な目的だ。

 ソーラーパネルに関する統計調査を行っているPV TECH社によると、2016年の世界のソーラーパネル製造業者の規模によるランキングは1位がGCL、2位Trina、3位Jinko、以下JA、Wacker、Hanwha Q-Cell、Canadian Solar、 OCI、 First Solarとなり、7位のカナディアンソーラー以外はすべて中国あるいは韓国のメーカーとなっている。米国内のシェアを見ても、3位にカナディアンソーラーが入っている以外はやはり中国、韓国メーカーが過半数を占める。

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2016年の世界のソーラーパネル製造業者ランキング

【次ページ】イーロン・マスクがソーラーパネル企業を買収したのには理由がある

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