- 会員限定
- 2017/11/28 掲載
後継者不足で損失22兆円、130年の老舗旅館が廃業せざるをえなかった事情
徳島の海辺の高台に建つホテルは事業承継で廃業の危機脱出
白い燈台は1973年の開業。29の客室があり、温泉大浴場やレストラン、宴会場を備えている。経営状態は悪くなかったが、運営会社小川屋の小川智前社長(83)が高齢で体が利かなくなり、廃業の危機を迎えていた。
小川前社長の身内に適任者がおらず、頭を抱えていたとき、徳島県事業引継ぎ支援センターの仲介により、近くで別の宿泊施設を経営するジミー・オカダ新社長(67)が名乗りを上げた。話はすぐにまとまり、5月に経営を引き継いでいる。
徳島県事業引継ぎ支援センターは2015年度に開設され、年間100件を超す相談を受け付けてきた。2017年度も4月からの8カ月間で110件の相談があったが、事業承継が実現したのは2年8カ月で27件にすぎない。白い燈台は幸運な例で、大半は廃業の危機に追い込まれている。
滋賀の料理旅館は後継者なく、130年の歴史に幕
滋賀県彦根市にある彦根城。江戸時代の御殿を使って営業してきた料理旅館「八景亭」が11月いっぱいで営業を終える。前身を含めれば約130年の歴史を持つ老舗だが、病に倒れた経営者の竹中清登さん(67)の後継者が見つからなかった。八景亭は茅葺きの数寄屋建築で床面積547平方メートル。江戸時代前期に造営された大名庭園の玄宮園を見渡せ、池にせり出す格好の臨池閣を中心に構成される。臨池閣は幕末に幕府の大老を務めた井伊直弼が接待に用いた記録がある由緒ある場所だ。
竹中さんは祖父が1934年に経営を引き継いでから、3代にわたって経営してきた。庭を見ながら琵琶湖の幸を味わえるのが評判となり、彦根城の名物になっていたが、竹中さんが2016年に病に倒れてしまう。
2人の子どもは別の道を歩んでいる。後継者を探したが、竹中さんの味を引き継げる人材は現れなかった。妻の憲子さん(70)は「周囲に迷惑をかけられないので、廃業することにした」と悔しそうに語った。
建物は彦根市に返還され、市が実態調査のうえで保存、修復について検討に入る。彦根市公有財産管理課は「営業が終われば市で保存するが、彦根城の名物が消えるのは残念」と肩を落とした。
後継者不在で廃業を余儀なくされたのは八景亭だけではない。長崎県長崎市では江戸時代から続き、初代首相の伊藤博文も訪れた老舗料亭「富貴楼」、新潟市では老舗みそ店「竹林味噌醸造所」が2017年、看板を下ろした。
「チョーク界のロールスロイス」といわれた愛知県春日井市の「羽衣文具」は2015年、廃業している。最高級品質で知られた企業だけに、愛用していた国内外の大学教員らから廃業を惜しむ声が上がった。
【次ページ】廃業する会社のほぼ半分が黒字営業
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR
今すぐビジネス+IT会員にご登録ください。
すべて無料!今日から使える、仕事に役立つ情報満載!
-
ここでしか見られない
2万本超のオリジナル記事・動画・資料が見放題!
-
完全無料
登録料・月額料なし、完全無料で使い放題!
-
トレンドを聞いて学ぶ
年間1000本超の厳選セミナーに参加し放題!
-
興味関心のみ厳選
トピック(タグ)をフォローして自動収集!
投稿したコメントを
削除しますか?
あなたの投稿コメント編集
通報
報告が完了しました
必要な会員情報が不足しています。
必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。
-
記事閲覧数の制限なし
-
[お気に入り]ボタンでの記事取り置き
-
タグフォロー
-
おすすめコンテンツの表示
詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!
「」さんのブロックを解除しますか?
ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。
ブロック
さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。
さんをブロックしますか?
ブロック
ブロックが完了しました
ブロック解除
ブロック解除が完了しました