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2017年05月10日

IoTプラットフォームとは何か? 正しい選択をするためのたった1枚のスライド

IoTが破壊的ノベーションとして自動車や機械、運輸やエネルギー、ヘルスケアなど幅広い産業のルールを大きく変えてしまう可能性を秘めているのは間違いないでしょう。昨今、IoTの進展とともに、頻繁に目にするようになってきたのが、「IoTプラットフォーム」というキーワードです。このIoTプラットフォームをめぐる覇権争いは、国と企業が入り乱れてIoTの勝者を決める重要な取り組みであると言われています。なぜIoTプラットフォームがそれほどまでに重要なのでしょうか? 具体的な企業動向も踏まえて、今回はこのIoTプラットフォームについて解説します。(2017年9月23日追記)

執筆:フロンティアワン 代表取締役 鍋野 敬一郎

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IoTプラットフォームをめぐる争いはなぜ起きているのか

(© chombosan – Fotolia)


IoTプラットフォームとは何か?なぜIoTに必要なのか?

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 「IoTとはモノにセンサーを取り付けることではない」ということに、そろそろ気付いた方も多いのではないでしょうか。懲りない一部の企業は、センサーの機能やテクノロジーがIoTの中心であるかのような主張をしていますが、重要なのはデータとデータを活用した「サービス」です。サービスがユーザーにどのような価値を提供できるかがIoTの本質なのです。

 欧米のIoT事例を見れば、「大量のデータをどんなソフトウェアを使ってサービス化すればユーザーに価値を提供できた」がテーマの中心だとわかります。

 つまり、膨大なIoTデータを収集して、ストックして、サービス化する基盤「プラットフォーム」が重要となります。これを「IoTプラットフォーム」と呼んでいるのです。

 その機能には、(1)データを収集する配管のような役割と、(2)大量のデータを蓄積する貯蔵庫の役割(データレイクとも言います)と、(3)サービス化するためのソフトウェアを乗せる役割(アプリケーションの開発環境)の3つがあげられます。

 「IoTプラットフォーム」には、この3つを兼ね備えたものも1つだけのものもあります。また、IoTのデータを活用してサービス化すれば新しいビジネスを生み出すことができるため、ITベンダーや通信会社だけではなく、大手メーカーなどがバックに居るユーザー系ベンダーが「IoTプラットフォーム」を提供することもあります。

IoTプラットフォームは「道の駅」

 ITベンダーから通信会社、ユーザー系ベンダー、そしてベンチャーなど「IoTプラットフォーム」を開発提供する企業が次々と出現しています。それぞれ機能や特徴もさまざまで、状況が刻々と変わって企業間の合従連衡も活発になっています。

 筆者は米国の製造企業、ドイツのITベンダーでの勤務経験を経て業務コンサルティングとITコンサルティングの両方に携わっている仕事柄、「IoTに取り組むうえで、IoTプラットフォームとは何か?どのようなベンダーがあり、どれを選べばよいのか?」という質問をよく受けます。

 こうした状況をわかりやすく説明するために作成した図が、このIoTプラットフォーム主要ベンダー相関図(2017年5月版)です。この相関図の読み方には、いくつかのポイントがあります。

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(クリックで拡大)

IoTプラットフォーム動向、主要ベンダー相関図(2017年9月版)


<ベンダー相関図の区分>
・黒枠:IT系ベンダー(一般)
・二重枠緑:ユーザー系ベンダー(本業は製造業)
・破線枠:通信系ベンダー(通信事業者系)
・赤枠:エコシステムを持つユーザー系ベンダー(有力ベンダー:GEデジタル、シーメンス、ファナック、三菱電機)
※エコシステム:コンペ企業を含むコミュニティを主導

・色付きベンダー:独自の強みを持ち複数ベンダーと提携する有力10ベンダー(GEデジタル、シーメンス、SAP、AWS、マイクロソフト、PTC、IBM、Cisco、Huawei、ファナック)

 まず、ベンダー間の矢印を自動車専用の「高速道路」、IoTプラットフォームを「道の駅」とイメージして、この高速道路の上を走るたくさんのクルマが「企業」だと考えてみてください。

 クルマは、欲しいサービスを求めて、「道の駅」へ立ち寄ります。多くのクルマが立ち寄ってくれれば、その駅は栄えることができます。そのためには、周辺の高速道路を整備する必要があります。多くの「道の駅」につながるハブとなれば、立ち寄る価値が生まれて新しいビジネスチャンスが広がります。逆にその「道の駅」で行き止まりだったり、どこにもつながっていなかったりすれば新しいチャンスを得る機会は限られてしまいます。

 たとえば、IBM Watson IoTのコグニティブ機能は、連携するSAPのSAP Cloud PlatformやシーメンスのMindSphere、GEデジタルのPredixでも利用することができます。GEデジタルのPredixは、日本の東芝やNEC、中国のアリババが提供するIoTプラットフォームとしても利用することができます。

 シーメンスは製造業の領域に強く、GEデジタルは、運輸やエネルギーなどの領域に強いことから、このIoTプラットフォームを選択した企業は、その恩恵を得ることができます。

 1社だけでこうした幅広い機能を自社のIoTプラットフォームにすべて作るのは困難ですから、海外の主要プレーヤーは、お互いに協力しながら自社の「道の駅」に誘導するための道路網の整備を進めています。

 その根底には、たとえ競合相手であっても、同じコミュニティに入って、自らの顧客基盤を拡大しようとする「コーペティション(co-opetition)」の考え方が根底にあります。利益の相反する部分はあっても、長い目で見ればお互いの利益にかなうので協力しましょうというわけです。

(以下、2017年9月23日追記)

 産業向けIoTにおけるベンダー競争は、さらに激しくそして厳しくなっています。製造業にフォーカスするドイツでは、シーメンスとSAPがほぼ市場を掌握しています。

 自動車部品大手のボッシュや電機大手のTRUMPF社などのIoTプラットフォームもありますが、業界や階層で住み分けできていると言えます。各ベンダーのIoTプラットフォームは、相互につながっていてデータの互換性や連携もあります。そのため、ドイツのユーザー企業は、IoTプラットフォームの選択にもう悩む必要がない状況です。

 米国では、製造業のみならず運輸、ヘルスケア、エネルギー、流通サービスなど幅広い業界でIoTを進めているため、業界ごとに選択できるIoTプラットフォームが異なっていますが、IoTベンダー間の提携が急速に加速しています。

 製造業では、GEデジタルやPTCが先行していて、IT系ではクラウドに強いAWS、マイクロソフトなどがお互いに補完しあうような構図となっています。

 さらに、人工知能(AI)の強みを活かしたIBM、デバイスや機器側とサーバ側のネットワークに強みを持つシスコ、発電所やプラントなどの設備からの稼働データ処理に強みを持つOSIsoftなどがIoTベンダーとして存在感を示しています。

 IoTベンダーが、それぞれブランドを掲げて独自の強みや特徴を訴求していますが、ベンダー間で提携していて互換性やデータ連携を整えつつあります。そのため、IoTプラットフォームを利用するユーザー企業は、あまり選択に悩むことなく、手軽にIoTプラットフォームを利用できる状況にあります。

 シーメンスが提供する「MindSphere(マインドスフィア)」やGEデジタルが提供する「Predix(プレディクス)」は、月額数千円からクラウドサービスで手軽に利用することができます。

 IoTに取り組むユーザー企業にとって、こうした状況は追い風でしょう。

 日本の状況は、ひとことで言うと大混戦でカオスな状態です。日本のIT系ベンダーは、すべてのベンダーが自社ブランドのIoTプラットフォームを出して強気の発言を繰り返していますが、正直なところ他社とどこが違うのかよく分かりません。

 欧米と違っているのは、マイクロソフトやAWSはGEデジタルと、SAPはシーメンスやGEデジタルなどとのアライアンスを組んで連携しています。

 これに対して。富士通、日立、NECなどは互いに対抗しています。ちなみに、NECと東芝はGEデジタルの「Predix」、NECと富士通と日立はSAPと提携しているのですが、国内ベンダーどうしでは互いに反目しています。

 外資系とは組めても、身近な競合とは仲良くできないようです。これが欧米と日本の目立った違いです。まるで幕末日本のように各ベンダーが欧米列強諸国の力を借りて、日本が植民地化されかけているようにすら見える状況なのです。

(ここまで2017年9月23日追記)

相関図(マップ)から読み取れる2つの傾向

 「道の駅」には、それぞれ魅力的な特徴や機能があります。たくさんの道の駅につながっていれば、企業は高速道路を通って欲しい機能を簡単に手に入れることができます。逆につながっていなければ、どれほど欲しい機能があってもそのベンダーが開発するまで待つか、IoTプラットフォームを乗り換えなければなりません。

 マップに登場する個別ベンダーの動向については、ここでは触れません。しかし、全体を俯瞰してみると面白い傾向が見えてきます。1つは米独中の企業が多くの矢印で結ばれていることです。

 これは、前述のコーペティションの考えがあるからでしょう。たとえ競合でも、協力して高速道路を建設することが自社の利益にかなうと考えている結果が、マップ上の矢印の数に現れているのです。たくさんの線が集まっているところはハブになっていることを意味しています。ハブとなったベンダーは簡単に廃れることはありません。しかし、ターミナル(行き止まり)になっているところは、消える可能性が高いといえます。はたして、日本企業はどうでしょうか。

 もう1つは、ユーザー系ベンダーがIoTプラットフォームの提供者として存在感を強めつつあることです。たとえば、米GEグループのソフトウェア事業の売上は、2015年に50億ドル(約6,000億円)でした。同社はそれを、2020年に150億ドル(約1兆8,000億円)にまで伸ばし、ソフトウェア企業の世界トップ10入りを目指すとしています。

 ちなみに、GEデジタルは、GEが2015年10月に発足したわずか3年足らずのソフトウェア企業で、前身のGEソフトがIoT向けIoTプラットフォーム「Predix(プレディクス)」の開発を始めたのは2010年のことです。わずか10年ほどで、ソフトウェア企業のトップ10に食い込む成長を目指していることからも、IoTが成長戦略に与える影響の凄さがわかります。

【次ページ】IoTでの生き残り戦略を考える

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