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日本の製造業が性能や品質を競い合う中で、いち早くIoTに取り組むとともに、顧客志向に舵を切った企業がコマツだ。同社は21世紀初頭から、建機に備わるさまざまなセンサーから得られるデータを活用したビジネスを展開してきた。同社がデータの価値に着目し、どのようにソリューションベンダーに転換を果たしてきたのか。同社 取締役 専務執行役員の黒本和憲氏に聞いた。
(聞き手はビジネス+IT編集部 松尾慎司)
建設機械が使われる現場を「見える化」する車載ICTの原点は「盗難対策」から
──コマツのIoTの取り組みは業界でも先駆者と位置づけられていますが、その歴史を教えてください。
黒本氏:弊社では、2001年より「KOMTRAX(Komatsu Machine Tracking System:コムトラックス)」を車両に標準搭載し始めました。これは建設機械の情報を、遠隔で確認できる機械稼働管理システムのことで、どの機械がどの場所にあり、エンジンが動いているか止まっているか、燃料がどれだけ残っているかなど、車両の位置や稼働状態等を遠隔地から把握することができるシステムです。
KOMTRAXが生まれるきっかけは、1990年代の後半に、盗難された建設機械を使ってATMを破壊する強盗事件のニュースが頻発したことです。建機の盗難対策にGPSを活用したらどうかという議論が社内で湧き上がったところからスタートしました。
そこで、GPSや車両のセンサーの情報を収集し、遠隔地から車両の位置や稼働状態等を把握するKOMTRAXが生まれました。誕生から17年が経ち、2016年6月までで搭載台数が全世界で累計42万台を超えています。
──車両の動態管理から、さらなるデータ活用に進んでいった背景にはどんなことがあったのでしょうか。
黒本氏:当初の目的である盗難を抑止したのに加えて、中国市場で新たな価値を示すことに成功したからです。それは、KOMTRAXを与信管理に役立てることで当時は圧倒的大多数を占めた新規顧客にもリテールファイナンスを利用し購入してもらうことが可能になりました。
その結果、建設工事のニーズの高かった中国で当社のプレゼンスを高めることができ、ビジネスのインパクトを再認識させられました。言わばお客さまの反応から得た手応えで「データ活用」がより進み、稼働情報や燃料消費データを利用した省エネ運転支援、稼働時間に応じたメンテナンスや部品交換時期のご案内等、世界中のコマツ代理店が工夫を凝らし、多彩なサポート活動を企画、推進しています。
──稼働に関するデータを活用することで新たなビジネスが生まれたということですね。
黒本氏:重要なのはKOMTRAXをオプションではなく標準装備としたことです。社内でもあらゆる部門が当たり前にKOMTRAXのデータに基づき議論するようになったので、お客さまに対してもデータドリブンのサービス、ソリューションを展開していくことができたのではないでしょうか。つまり、「見える化」したデータを活用して、お客さまにとって価値を提供するということです。
建設現場のすべてを「見える化」するのが「スマートコンストラクション」
──2015年には、KOMTRAXをさらに進化させた「スマートコンストラクション」を開始しました。
黒本氏:2015年2月より開始した「スマートコンストラクション」は、建設現場の課題を解決し、「未来の現場」を実現させていく、建設現場向けソリューションです。
2013年から作業機の自動制御を実現したICT建機の市場投入を行っています。ダントツ商品であるICT建機を最も効果的に使ってもらうためには、お客さまの工事全体のプロセス改善に深く関わる必要があると考え、始めたのがスマートコンストラクションです。新たにクラウドプラットフォーム「KomConnect(コムコネクト)」を開発し、建設現場に関わるあらゆる情報をICTで見える化して、つなげることで現場の生産性や安全の向上を図っています。
──KOMTRAXから始まったコマツのIoTの最新形が「スマートコンストラクション」で、その中核をなすクラウドプラットフォームが「KomConnect」ということですね。
黒本氏:KomConnectは、以下のようなお客さまの施工管理項目をワンストップで提供するプラットフォームです。
1.ドローンや3Dレーザースキャナー、建設機械の運転席に搭載されたステレオカメラなどを活用した「現況の高精度測量」
2.施工完成図面の「3次元化」
3.土質や地下の埋設物について、事前に調査し解析する「変動要因の調査・解析」
4.施工計画シミュレーション機能により、条件ごとに異なる施工パターンを提案する「施工計画の作成」
5.3次元データ化された完成図面による、ICT建機の「高度に知能化、自動制御された施工」
6.完工後の施工データ活用
KomConnectをプラットフォームとして人、機械、土など建設現場に関わるあらゆるデータを見える化し、連携することで、さまざまな価値を提供することが可能になります。
【次ページ】「完全自動運転」は実現済み、今後さらにどう進化するのか
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