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- 2016/01/19 掲載
米輸送会社「UPS」が「運ばない」物流に変える? 3Dプリントのビジネスモデル
ビジネスモデル解説:3Dプリント
3Dプリンタのビジネスモデルは「紙のプリンタ」と同じ?
3Dプリンタ市場は活況の様相を呈しています。グローバル3Dプリンタ市場は2015年に40億ドルに達し、年率23.7%の成長によって、2025年には491億ドルまで拡大すると見込まれています。また、日本国内では、2014年の売上額が336億円、2021年には1,123億円になると予測されています。こうしたなか、3Dプリンタのシェアは寡占状態が続いています。ハイエンド製品のグローバル市場ではストラタシス(40%)、3Dシステムズ(17%)、EOS(17%)がリーダー企業です。日本ではストラタシス(43%)、3Dシステムズ(24%)、キーエンス(8%)の順にシェアを握っています。3Dプリンタの基本特許切れを契機に、HP、キヤノン、リコーなどの大企業が市場参入し、今後はさらに競争激化するでしょう。
3Dプリンタでは、「ABS樹脂」と「PLA樹脂」といった樹脂が素材としてよく使われます。2Dプリンタ(いわゆる紙のプリンタ)では耐用年数の長いプリンタ本体ではなく、継続購入を行うインクに高い利幅を設け、収益を上げてきました。3Dプリンタのビジネスモデルにおいても、紙のプリンタでいう「インク」の代わりとなる「素材」の存在は無視できないのです。
米国の大手貨物運送会社「UPS」の3Dプリント事業は何がスゴい?
「なんだ、今までのプリンタと同じビジネスモデルか」と思う方もいるかもしれません。紙のプリンタと異なる点は、3D設計データの管理や共有を支援するオンラインサービス。そして、多品種少量生産に対応しやすい3Dプリンタの特性を活かして、修理パーツの作成を行うサービスなどの可能性があるのです。一例として、米国の大手貨物運送会社「UPS」は、2013年8月から3次元プリント代行サービスのサービスを開始しています。利用者はインターネット経由か、全世界に設置されたUPS店舗で3次元設計データをUPSへ送ります。UPSは全米に散らばる各店舗に3Dプリンタと印刷素材の設置を進めており、受け取ったデータに従って立体物を製造します。利用者は自宅への配送を希望する、あるいは、他の店舗での受け取りを選択することができます。
UPSは、すでに全米60カ所の店舗で3Dプリントサービスを展開しており、将来的には、さらなる拡大が予想されています。UPSは全世界200カ国に物流網を備えているため、容易に3Dプリントサービスを展開できるのです。UPSがターゲットにするのは、カスタムメイドが求められる製造分野。中小企業のプロトタイプ生産、期間限定の宣伝広告用物品、組み立てや加工に用いる治具などが主な利用方法です。利用者ごとに形状を合わせて製造する医療関連の機器・用具など、活用の可能性は無数にあるといえるでしょう。
3Dプリントサービスの強みは、圧倒的な輸送コストの削減にあります。日本で製造した製品をアメリカへ輸出するケースを考えてみましょう。日本の工場で作成された製品は、飛行機や船で現地まで運ばれます。発生するコストは輸送費だけではなく、税関の検査など、様々な手数料が必要になります。途中で紛失したり、輸送が遅延したりするリスクもあります。3Dプリントを使えば、これらのコストと期間を全て削減できるのです。2週間以上かかっていた輸送工程が、たった1日に短縮されるのであれば、多くの企業が採用を考えるでしょう。
UPSが展開している3Dプリント代行サービスも、3Dプリンタに関わるビジネスモデルの1つの柱と言えるでしょう。安価になったとはいえ品質の高い製造を行うハイエンド型の3Dプリンタは個人では手が出せません。中小企業やフリーランスにとっては代行サービスを利用するメリットが高いと言えます。日本ではビジネスキオスクを展開するキンコーズがサービス提供を開始しており、今後も同様のサービス展開が期待されています。
【次ページ】3Dプリントが物流業界にもたらすイノベーションのジレンマ
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