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  • 2015/06/30 掲載

ブリヂストン 武濤雄一郎 CIOインタビュー:グローバル企業の競争力となるITとは

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世界最大のタイヤメーカーとして、ダントツの存在感を示すブリヂストン。素材となる天然ゴムは自社の農園で栽培し、小売りまで手がける。世界150カ国以上に事業を展開し、従業員の14万人強のうち日本人は約3万人で、押しも押されもせぬ“グローバル企業”だ。それでも現在、中期経営計画で掲げる目標の1つが「真のグローバル企業」になることだという。その意味するところは何か。真のグローバル企業の競争力を支えるITの役割とは。「攻めのIT経営銘柄」にも選ばれたブリヂストン 常務執行役員 CIO・IT担当の武濤雄一郎氏に話を伺った。
(聞き手は編集部 松尾慎司)

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ブリヂストン
常務執行役員
BIOC事務総長(オリンピック室担当) 兼
CIO・IT担当 兼 経営企画管掌 主任部員
武濤 雄一郎 氏
(写真:伊藤孝一)

グローバル企業 ブリヂストンが目指す“真のグローバル企業”

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──タイヤの世界でダントツの存在感を示しています。その強さの理由はどこにあるのでしょうか?

武濤氏:まず1988年に、米国の有力タイヤメーカーであったファイアストン社を買収したことが、当社発展の理由の一つと思います。いきなり自分と同規模の歴史ある会社、それもまったく異文化の米国の会社と一緒になり、一足飛びに“グローバル化”が進みました。この合併に伴う色々な苦労も大きかったのですが、それを克服した今では、この経験と成果が当社の強みになっています。

 このような発展をたどって、今や広くグローバルで事業展開していますので、リーマンショックのような経済情勢の変動があっても、他社に比べると、世界のどこかでカバーできる力があるのも強みの一つです。なお、当社の従業員は14万人強ですが、そのうち日本人は3万人程度で、グローバルでかつダイバーシティに富んでいるのも強みと考えます

 2年前には、英語の公用化も開始しました。日本人以外の社員が1人でもいる会議では、英語を使うことになっています。また、以前は通訳が入っていたものもあったのですが、今はITを含め、グローバルでの各種会議もすべて英語で、通訳なしで行うようになりました。

──先ごろ発表された中期経営計画では、経営目標として「真のグローバル企業」を目指すと書かれています。すでにグローバル企業としての地位は確立されていると思いますが、なぜ「真の」と付けたのでしょうか。

武濤氏:ブリヂストン本社の取締役7名のうち、社外取締役4名の構成は外国人が1名、女性が3名で、その多様化は進んでいると思います。しかしながら、本社の執行役員以下で、日本人以外と女性の比率を見ると、まだそれほど高くはない現状にあります。また、欧米のトップは日本人以外になりましたが、中国やアジアのトップは現在日本人です。これは一例ですが、他の面からも、今は、我々が目指す“真のグローバル企業”への発展途上にあると思います。

 また、150カ国以上に事業展開はしていますが、地域や商品によっては、まだNo.1でないところもあります。そこで昨年から、グローバルに人気のあるオリンピックの最高レベルのパートナーになるなど、グローバルでのブランド戦略をさらに強化していることがよい例ですが、色々な分野での攻めの姿勢も含めて「真のグローバル企業を目指す」とうたっています。

高い技術力が必要とされる分野ほど強い

──製品としての強みはどこにあるのでしょうか?

武濤氏:安全性に直結するタイヤという製品を提供していますので、信頼性、品質のレベルの高さが、第一の強みです。また、高い技術力が必要とされる分野ほど当社は強い力を持つと思います。タイヤには乗用車用、トラック・バス用、鉱山車両用、飛行機用などさまざまな種類があります。たとえば、軽自動車用などの一般的な性能のタイヤであれば、それほど技術的には難しくないので、新興国のタイヤメーカーでも作れるかもしれません。

 しかし、航空機用タイヤや、鉱山用トラックの直径4メートルもある巨大なタイヤとなると、そうはいきません。鉱山用のタイヤは、オーストラリアなどの山奥の鉱山で、無人で動く400トンものトラックなどを支えているのです。こうした過酷な環境に耐えられるタイヤを作れるのは当社など限られたメーカーだけです。もっと身近な例としては、冬用の高い技術力を求められるスタッドレスタイヤも当社の強い分野ですね。

画像
ソリューションビジネスの展開で、ビジネスモデルイノベーションを推進
(出典:ブリヂストン)


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新たな天然ゴム資源「グアユール」の農園
(出典:ブリヂストン)
──高い技術力を支えているのは何だと思われますか。

武濤氏:やはり先人を含めた各種の努力の積み重ねです。たとえば、技術力については、日本には東京都小平市に技術センターがありますが、米欧アジアにも技術センターがありますので、グローバルな体制でさまざまな技術の研究開発を行っています。

 もう1つの特徴は、原材料生産から販売まで自分たちで行う能力を持っていることです。タイヤに使われるゴム材料の半分は天然ゴム、残りの半分は合成ゴムですが、当社は天然ゴムを自社の農園でも作っており、合成ゴムの工場も持っています。また、スチールコードという金属製の補強材を加工する工場も保有しています。タイヤ会社でここまで持っているところはほとんどありません。これにより、他社に差をつけることができる、最高品質の材料の確保、材料技術の蓄積なども可能になります。さらに、販売店のチェーンも各国に持っていますから、ユーザーの声を開発に活かすこともできるのです。

──経営の基本姿勢として「リーン&ストラテジック」という表現も使われています。これはどういう意味でしょうか。

武濤氏:先ほどゴム農園まで持っているといいましたが、我々は、農園を活用するなどして、天然ゴムのバイオ研究や農業の研究もしています。これらの基礎的な研究はすぐに事業の利益に直結できるものではなく、5年後、10年後、あるいは20年後に花開く研究もあります。

 たとえば現在、熱帯地方のパラゴムの木でのみ生産している天然ゴムを、砂漠地帯でも育成できるグアユールという植物から生産するプロジェクトを進めています。自社で米国に広大な農園と実験工場も確保して取り組んでいますが、これはかなりの長期の研究開発プロジェクトになります。長期的には、世界の人口増加とともに需要が増大する見込みの天然ゴムという重要な材料の資源確保するための、戦略的かつ重要な取り組みです。こうした長期の研究開発には、リスクをとっても、ストラテジック(戦略的)に取り組む一方で、日頃のオペレーションはリーン(ムダのない生産方式等)にしなければならないということです。

【次ページ】「攻めと守りとグローバル」がIT部門のスローガン
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