古いアプリケーションをクラウド化しても成功しない

　エリソン氏は、モダン・クラウドアプリケーションと、従来のアプリケーションは、見栄えにしてもまったく違うはずだと強調する。それを示すために、エリソン氏は同社の人材管理（HCM：Human Capital Management）のクラウドアプリケーションを例に挙げた。いま人材管理分野には、社員管理用と顧客対応の2種類のアプリケーションがあるが、同氏が紹介したのは社員管理用のほうだ。

「日本では、ますます労働不足が深刻になる。ロボットが話題になるのは、それだけ人材が希少価値になっているからだ。人材が不足する時代になれば、人を効率よく管理しなければならない。おそらく世界のどの国よりも、日本はこの問題が深刻になるだろう」

　HCM用のモダン・クラウドアプリケ－ションは人材発掘に役に立つ。最近は、Facebook、Twitter、LinkedInなどのソーシャルネットワークを利用したリクルーティングが盛んだ。しかし以前はそんな技術は普及していなかった。

「そういう理由で、現状に則さない古いアプリケーションをいくらクラウド化しても成功しない。しかし、我々のモダン・クラウドアプリケーションは、ソーシャルネットワークと統合され、すべての従業員が使うことが前提だ。全社でコミュニケーションがとれ、データを共有したり、社内データに情報を付加したり、グループ形成やプロジェクト推進も可能だ」


　またモダン・クラウドアプリケーションにはマニュアルも不要だ。なぜなら一般に馴染みのあるFacebookやTwitterライクのインターフェースで、自社のEBS（E-Business Suite）やSAPのようなインターフェースとは様変わりしている。システム的には、データウェアハウス（DWH）系とトランザクション系の棲み分けがモダーンアプリケーションの世界にないことも従来と大きく異なる点だ。

「かつて我々のシステムは、まずトランザクション用のシステムがあり、給与計算や休暇申請などを処理していた。一方、別にデータ分析用のシステムとしてBIやDWHなどが用意されていた。両方を別々に構築していたのが昔の手法だ。しかしモダン・クラウドアプリケーションを稼働させるシステムは、トランザクション系とDWH系が統合されている。たとえば人事担当がエンジニアを採用しようとした場合、調達や増員などに関する予算と連動し、予算が超えそうなときはアラートを出せる。オファー可否の決定情報が1つのシステムに入っており、まさに行動を起こそうとするトランザクションの直前に必要な情報が提供される」

　もう1つ重要な点として、同氏はモダン・クラウドアプリケーションが導入・展開・運用面で従来よりもコストが遥かに安い点について触れた。

「トレーニングコストもかからない。FacebookやTwitterのようなインターフェースならば、だれでも簡単に使えるからだ。もちろんクラウドなので、テクニカルなアーキテクチャーやデータベース、アプリケーションについて考えずに済む。ユーザーはビジネスだけに注力すればよく、結果的にコストも低減できる。我々のクラウドは安全面、セキュリテイ面、信頼性も高い。オラクルはITインフラのプロなので、我々にデータを預けてもらったほうがよい」

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