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- 2014/04/23 掲載
オラクルCEOのラリー・エリソン氏が企業買収の信条とする、ある人の言葉
エリソン氏が考える個人情報の在り方とビッグデータ活用
新経済サミット2014の基調講演に登壇したオラクルCEOのラリー・エリソン氏は、冒頭でNSA(国家安全保障局)問題に対し、こう切り出した。
エリソン氏は、これまで我々は個人情報を提供することで多大な恩恵を得てきたと言う。クレジットカードは、その良い例だ。私たちは勤め先や収入、住所、ローンの支払い状況などを提供する代わりに、便利に買い物ができるクレジットカードを手に入れる。「(迅速な支払い処理が可能になったことで)ショッピングは楽になり、世界経済は活性化し、より豊かな社会が実現した」(エリソン氏)。
こうした情報公開と共有は、今後もさらに進むとエリソン氏は述べる。たとえば、レセプト情報の共有だ。コレステロール値が高いと診断された患者が、医療関係者に対して自分のレセプト情報を公開する。これにより、医療関係者は同様の症状を持つ患者データベースから治療履歴を参照し、最適な薬を処方できる。
「その人に適した薬を処方できれば、早期治療も可能だ。結果、その人は医療費を無駄に払わずに済み、企業も雇用保険の負担を最小限に抑えられる。さらに言えば、国も社会保障に係る費用を抑えられるだろう」(エリソン氏)。
もちろん、個人情報の提供はオプトイン/オプトアウトの決定権がユーザーにあることが大前提だ。また、プライバシーを保護したい場合は暗号化技術で秘匿するなど、技術的な対策を選択することもユーザー側にあると同氏は強調する。
エリソン氏の講演を受け、インタビュアーとして登場した楽天のCEOで新経済連盟 代表理事の三木谷浩史氏は、個人データの提供については日本でもホットトピックスであると述べた。そして、今後のビッグデータ活用を踏まえ、保守的な人たちをどう納得させればよいかと質問した。
これに対し、エリソン氏は全員を納得させると考えるのではなく、個人の判断を尊重することが重要と指摘した。「フェイスブックも、世界中で受け入れられているわけではない。自分の写真やプライベートな情報を公開、利用されることに抵抗ある人も存在する。こうした人たちがオプトアウトできる仕組みが必要だ」(エリソン氏)。
戦略的買収への取り組み方と理念
親日家でも知られるエリソン氏は、日本に住んでいたことがある。当時は日立と富士通に勤務し、日立ではデスクトップPCで大相撲中継が視聴できるようにセットアップし喜ばれたという逸話を持つ。今は、京都の南禅寺に邸宅があり、自然と人間の調和が感じられる日本庭園に魅せられていると微笑む。そんなエリソン氏だが、これまで戦略的な買収をいくつも繰り広げてきた、アグレッシブな起業家の一面がある。
「達成すべき目標に向かって製品開発を行うとき、最短ルートがあればそれを選択する。買収は、その一環だ」。そう述べるエリソン氏は、これまでの買収劇の中で最高の成果は、2010年におけるサン・マイクロシステムズの買収と明かす。
「MySQL、Java、Solarisなど、ソフトウェア技術からハードウェア技術まで、計り知れない資産を55億ドル程度で手に入れられた。しかも、優れたエンジニアも迎え入れることができた」。自社にない、むしろ自社以上の製品や技術が得られること自体が喜びだと、エリソン氏は断言する。
だが、買収は新規顧客および市場の獲得という恩恵がある一方で、製品や技術の統廃合という難しい課題も生む。
【次ページ】エリソン氏がM&Aで見習った人とは?
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