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- 2023/07/24 掲載
Google Cloudの上半期3大ニュースまとめ、生成AIとクラウドサービスのゆくえ
トピック1:生成AIと広告市場での競争激化、Duet AI登場
OpenAIが放った生成AIサービス「ChatGPT」は、2023年上半期に最も話題を集めたテクノロジーであり、議論はITにとどまらなくなっている。世界でAI脅威論を巻き起こし、日本でも連日にわたり、生成AIの議論、関連サービスの開始などが話題になっている。ChatGPTのエンジンであるGPT(Generative Pre-Trained Transformer)は、もともとグーグルの研究チームが発明したニューラルネットワークの一種である「トランスフォーマー(Transformers)」がベースになっている。単語やフレーズが、テキストの並びの中のどこに現れるかを追跡できる技術である。それだけに、グーグルとしてはChatGPTとの競争が始まったことに、心中穏やかでなかったようだ。5月にはAI研究の外部公表を制限することにしたと報じられている。同時期に、グーグルは年次イベント「Google I/O 2023」を開催。生成AIを搭載したさまざまな製品を発表した。
グーグルおよびアルファベットのCEOであるサンダー・ピチャイ氏はGoogle I/O 2023の基調講演で、グーグル版のChatGPTと言えるチャットAIサービス「BARD」のデモなどを披露。さらに中核技術である最新の大規模言語(LLM)モデルとして「PaLM 2」を発表した。BARDに搭載しているPaLM 2について、グーグルは多言語、推論、コーディング機能が向上した最先端の言語モデルだと説明している。
Google Cloud向けに、開発支援機能「Duet AI」を発表した。非エンジニアによるチャットベースでのアプリ作成からアプリケーション開発のコード作成まで、あらゆるスキルレベルのユーザー向けにAI開発をサポートする。Google CloudのCEOでオラクル出身のトーマス・クリアン氏は「責任ある生成AIに全力で取り組む」と話している。
トピック2:初の黒字化、シェア増
赤字続きだったGoogle Cloudのビジネスが、2023年の第1四半期に初めて黒字化した。Google Cloudの売上高は対前年比で28%増の74億5,000万ドル(約1兆円)、営業利益は1億9,100万ドル(約2,700億円)となった。クラウド事業は、インフラサービスである「Google Cloud Platform」(GCP)を中核に、コミュニケーションツールの「Google Workspace」などがある。すでに、アルファベットの総売上高の10%以上の水準にまで増加しているという。ピチャイ氏は第1四半期決算報告で「過去3年間で年間契約件数は6倍になり、世界の大企業1000社の6割弱がGoogle Cloudの顧客になった」と話している。
前年同期の売上高は58億2,000万ドルで、営業赤字が7億600万ドルとなっていた。だがこれも、グーグルがクラウドサービスを拡張するために、世界中にデータセンターを建設しているからであるとし、赤字に対して好意的な指摘も出ている。
パブリッククラウド最大手であるAWSやAzureと比較しても、Google Cloudの収益拡大ペースは速くなっている。同じ第1四半期の売上高を見ると、AWSが16%増、マイクロソフトでAzureやサーバ製品を担うIntelligent Cloud部門が20%増にとどまっており、28%増のGoogle Cloudは成長スピードで優位に立っている。
Synergy Research Groupの調査を見ると、2023年第1四半期におけるクラウドインフラ市場のシェアでは、AWSが32%、Azureが23%、Google Cloudが10%となっている。AWSとAzureの2強といわれていた市場だが、Google Cloudが加わり、まずは3強になる公算が強くなってきている。
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