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誕生から20年が経とうとしているクラウド・コンピューティング。その導入をめぐり、「クラウドかオンプレか」は長く議論されてきたが、現在はそうした議論はもはや「古い」と言える。これからの変化が激しい時代にクラウド化にどう向き合うべきなのか。クラウドをめぐるトレンドとともに、ガートナー ジャパン ディスティングイッシュトバイスプレジデント、アナリストの亦賀忠明氏が解説する。
クラウド活用「20年遅れ」の可能性も?
2006年にAWSのサービス提供が始まってから、20年近く活用されてきたクラウド・コンピューティング。同技術を巡るトレンドは、現在大きく変わりつつある。
クラウド・コンピューティングについて、「『使えるのか?』という議論ではなく、クラウドはNew Worldにおける必然です」と話すのは、ガートナー ジャパンのディスティングイッシュト バイス プレジデント、アナリストである亦賀忠明氏だ。
亦賀氏は、企業・組織がこれからの時代の変化に対応するためのIT戦略の最大のミッションとして「江戸時代からNew Worldへ」というキーワードを提唱してきた。これは、オフィス中心、リアル中心、紙や印鑑業務が中心だったこれまでのビジネスの在り方(江戸時代)から、ビジネスの自動化、ハイブリッドワーク、AIとの共生などを行う新たなビジネスの在り方(New World)への転換を意味している。
新たなビジネスの在り方を実現するために企業がクラウド化を進める上では、適切なクラウド・ジャーニーを歩むことが必要になる。
亦賀氏によると、2030年までに行うべきクラウド・ジャーニーとして、Day0からDay4まで5つのステップがあるという。これは、組織のクラウド対応の過程を「Day0(ベンダー丸投げ)」「Day1(Cloud COE)」「Day2(SRE、CI/CD、IaC)」「Day3(先端的マルチクラウド)」「Day4(産業革命)」の5段階で表したものだ。
「先行企業のクラウド歴は20年に及びます。『オンプレミスの継続か、クラウド化に進むのか』という議論をしているDay0の組織は、すでにトップから5周遅れにあります。その周回遅れを取り戻すためには、自組織がどのステージにあるか、何をすべきかを確認しなければなりません」(亦賀氏)
クラウド活用の「2026年問題」とは
冒頭で触れた通り、AWSがクラウドサービスを開始したのが2006年のことだ。2026年には、クラウドが誕生して20年を迎えることになる。これだけ時間が経っても、クラウドの是非について「オンプレかクラウドか」という議論をいまだにしている人が、時代に取り残されることが顕著になることを「2026年問題」と表現すると亦賀氏は話す。
この2026年問題における論点は、主に以下の6つだ。
- クラウドが登場して20年経っても「クラウドはまだ早い」という認識のユーザーが30%存在する可能性
- 2025年の崖を越えられなかったユーザーが「レガシーをさらに2030年まで継続」する可能性
- 「オンプレ対クラウドの議論を継続」するユーザーが40%存在する可能性
- 「ベンダーへの丸投げ状態」から脱却できないユーザーが30%存在する可能性
- 「クラウド化しても、コストが下がらない」というユーザーが40%存在する可能性
- SI、仮想ホスティングとクラウドの違いが分からないユーザーが30%存在する可能性
亦賀氏は、クラウドとは何かを再考しなければ、いつまでたってもユーザーのメリットは出ないと指摘。このままでは、SI企業は儲かるかもしれないが、ユーザーは衰退してしまうと警鐘を鳴らす。
「ITインフラの革新という視点で見た場合、日本の多くの企業ITは20年前で止まっています。これは時代遅れであり、変化に抗う不自然な状態であり、その状態をいつまで続けていると何が待っているかを強く認識してほしいです」(亦賀氏)
これからの変化に備えるためには、クラウドはビジネスの「前提」となる。活用を前提にビジネスを行わなければ、衰退や消滅が待ち受けていると言っても過言ではないのだ。
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