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オラクルが今後10年で80億ドル(約1.2兆円)の巨額投資を日本で行うと発表した。投資分野はクラウド、AI、データセンター(DC)、カスタマーサポートなど多岐にわたる。今回、オラクル・コーポレーションのサフラ・キャッツCEOが来日し、日本で巨額投資をする理由について語った。競合ひしめくクラウド・AI分野でのオラクルの優位点はどこにあるのか。
今後10年で日本に1.2兆円超を投資
米オラクルは今後10年をかけて、日本国内に累計80億ドル(約1.2兆円)以上を投資──この巨額投資発表の背景にあるのが、国内のクラウド需要の急速な高まりだ。
「新型コロナ禍を経て、我々は(慎重を期した)時間をかけた動きは、むしろリスクであることを学びました」(キャッツ氏)
実際、競合企業も日本への巨額投資を相次いで発表している。1月にはAWSが2027年までに約2.3兆円の投資を発表、マイクロソフトは4月に今後2年間で約4,400億円、同月にグーグルは4年間で約1,000億円を投資すると発表している。オラクルの投資額はこれらと比較してもまったく見劣りしないものになった。
さらにキャッツ氏は「最終的により多くの投資額となっても驚きはありません」と投資額を増やす可能性も示唆した。
なぜこうした巨額投資に動くのか。キャッツ氏によれば、事業基盤のシステムに対する日本企業の意識が劇的に変化し、その中での迅速な事業変革などによる持続的な成長の策として、トップ企業を中心にクラウドへの関心がかつてないほど高まっているからだという。
オラクルは東京と大阪に同社のクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」のためのDCを配置する。今後はそれらの能力とともに、カスタマーサポート、Oracle Alloy、OCI Dedicated Regionの運用に携わる人員を大幅な強化を通じて「誰もが既存システムを近代化したいと思う最高のツールを用意」(キャッツ氏)し、OCIのさらなる利用拡大を狙う。
OCIの優位性はどこにあるのか?注目すべき「ソブリン」
他ベンダーと比較してOCIの優位性はどこにあるのか。キャッツ氏がまず挙げたのがデプロイ先の多様さだ。
パブリッククラウドに対する企業の関心の高まりの一方で、導入の壁となっているのが、「レイテンシ(遅延)」や「パフォーマンス」、データの「レジデンシー(データの保管場所)」などの要件を満たせないことも多いことだ。
対してオラクルでは、インフラとアプリケーションを統合した他社と大きく異なるアプローチでOCIを開発。インフラからアプリまでの機能的にまとまりのあるクラウド提供を実現し、パブリックからソブリン、政府専用、顧客専用まで、一貫性を保ちつつもデプロイ先リージョンにおいて、柔軟な選択肢を提供している。
「OCIはパブリッククラウドだけでなく、(自社DCをOCIのリージョンとする)『OCI Dedicated Region』でも、(パートナーがクラウド・プロバイダーとなり、自社の顧客にOCI上で構築したサービス提供を可能とする)『Oracle Alloy』でも、さらにはAWSやAzureからでも利用できます。企業の必要なところに必要なかたちで提供できるのです」(キャッツ氏)
各種制約への対応でデプロイ先は柔軟に選択できる意義は大きい。クラウドにおけるソブリンの重要性はますます高まっており、ガートナーも
指摘している通り。OCIは日本政府が推進するガバメント・クラウドの事業者にも
選定されており、ソブリンは重要要件の1つと言える。
加えて、オラクルは第二世代のクラウドとしてOCIの機能強化を続けてきた。過去の教訓に基づく新たなセキュリティ機能の組み込みや、AIによる運用自動化、RDMA(Remote Direct Memory Access)の提供などが代表だ。
「(CPUの介入を抜きにメモリーへの遠隔データ転送を行う)RDMAにより、クラウドの処理は劇的に高速化します。必然的に同じ時間に処理可能なワークロードが増え、クラウドのコストはそれだけ削減されます。このことを喜ばない企業はいないはずです」(キャッツ氏)
【次ページ】インターネットに接続しないリージョンも配備
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