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- 2014/06/19 掲載
兵庫医大 宮本正喜氏が語る、電子カルテにみる医療ITの進展と最新ビッグデータ活用
5年かけて、カルテ情報/画像情報/オーダー情報の3つを統合
そのスタートとなったのが医事システムだ。その導入以前には、診療を終えた患者から検査伝票や処方箋を受け取った受付担当者が、検査内容や手渡す薬の点数から料金をその場で計算し、トータル金額のうち自己負担分の3割をもらう、という精算を行っていた。
「その時代は伝票類が届いてから人手で計算していたので、とにかく行列ができることになる。患者さんは診察で待たされ、検査で待たされ、薬で待たされ、医事の計算で待たされるという状況だった。これを少しでも解決しようということで、分かる情報は早めに集めてコンピュータで処理しようとした。それが医事システムの考え方だ」
その後、医療業界でのICT活用はさらに進んで検査システムや処方システムなどが作られ、そしてオーダリングシステムが完成した。
「オーダリングシステムは、その名の通り医師の指示、具体的にはそれまで手書きだった検査伝票や処方箋の内容をコンピュータに入力して処理するものだ。データは入力されると同時に医事システムにも流れるので、患者さんが検査を終えて帰る頃には、もう会計処理が終わって、料金も分かっている。大幅なスピードアップと効率化をもたらすもので、患者さんと病院の双方にとってうれしいものだ」。
医療業務の効率化という観点で、このオーダリングシステムは非常に大きな効果をもたらすものだが、一方で診療自体の精度をさらに上げていくためには、電子カルテが重要になってくる。そこで当時、神戸大学医学部付属病院にいた宮本氏は、その開発に取り組むことになる。
ちなみに宮本氏は大阪大学工学部を卒業後に医学を志し、神戸大学医学部に入り直したという経歴の持ち主で、病院長にコンピュータと医療の両方が分かるという点を評価されて医療情報学に携わることになったという。
まず1992年1月に作られたのが電子カルテシステムのVer.0.1で、この時にはまだカルテの文字情報、画像情報、医師のオーダー情報は分離しており、各々の情報を見る際には、同じ端末でも異なったシステムを立ち上げる必要があった。
1994年5月に作られたVer.0.2では、画像情報はまだ分離していたものの、カルテ情報とオーダー情報は統合され、電子カルテの画面内にプルダウンメニューで、検体検査や投薬処方といったオーダー情報も同時に表示できるようになった。
そして1997年のVer.0.3で、カルテ情報、画像情報、オーダー情報のすべてを統合した。
今後電子カルテにエキスパートシステムを組み込み、診療の精度をさらに高めていく
「画素数が低い画像では診断ミスにもつながるので、医者としても非常に神経を使う。なので最近では画像の整理の仕方が変わってきている」
これまで画像による診断の場面ではフィルムが利用されており、微妙な箇所はフィルムを斜めにするなどして確認していたという。
それが画像がデジタル化されることで、問題のありそうな箇所を画像解析で強調するとか、濃淡をはっきりさせるといった処理ができるようになり、より精度の高い診断が可能となった。
「今ではiPadを手術場に持ち込み、画像を大きくして、それを参照しながらオペをすることもできるようになってきた」
医療分野におけるICT活用は大きく進歩してきたが、宮本氏は将来の診療について、電子カルテをベースにしてエキスパートシステムを組み込み、専門家のナレッジを活用することで推測や判断を行っていくという。またそこに一般検査や放射線検査の結果をフィードバックすることでさらに精度を高め、実際の治療へと進む。
「コンピュータはデータを蓄積/処理することで、“根拠のある推測”を行うことができる。しかし患者を診ていて何かおかしいといった“第六感”は働かない。これは人間にしかない機能だ。やはり医者は最後まで必要だ」。
【次ページ】ビッグデータ活用で、医療に関わる高度な知見や洞察を導き出す
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