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  • 2014/02/27 掲載

慶應大 余田拓郎 教授に聞く、デジタルBtoBマーケティング 技術力ある企業こそ武器に

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これまでデジタルマーケティングといえば、主にBtoC企業の取り組み事例として語られることが多かった。それが近年では、BtoB市場でもこの機運が急速に高まってきている。その背景には、これまで高い技術力を頼みに、人的なつながりで特定顧客との長期的な関係構築を得意としてきた日本企業が、マーケティングに長けた欧米企業や低コスト構造の新興国企業によって、劣勢に立たされるケースが増えていることがある。BtoB企業にとって、マーケティングとはどうあるべきなのか、またどのようにITを活用すべきなのか。BtoBマーケティングや企業ブランディングの第一人者である、慶應義塾大学大学院の余田拓郎教授にお話を伺った。
(聞き手は編集部 松尾慎司)

日本企業は製品の値付けが下手、原価計算から脱出せよ!

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慶應義塾大学大学院
経営管理研究科 教授
ビジネス・スクール 教授
博士(経営学)
余田 拓郎 氏
1984年東京大学工学部卒業。住友電気工業(株)勤務を経て、1998年名古屋市立大学経済学部専任講師。2000年同学部助教授を経て、2002年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授、2007年教授。1999年博士(経営学)(慶應義塾大学)。専攻は、マーケティング戦略、BtoBマーケティング、サービスマーケティング。
──先生は著書『実践 BtoBマーケティング』の中で、“日本企業においてマーケティングが正しく理解されていないケースがある”と指摘されていますが、特にどんな要素が欠けているとお考えですか。

 何といってもプライシング、即ち製品・商品の価格付けが非常に下手だと思います。

 原価をもとに利益を乗せるだけの価格付けを行っている企業が非常に多い。本来、マーケティングで考えれば、価格は顧客の予算や競合会社の値付け、そこに原価も加味しながらトータルで考えて、戦略的に設定すべきものです。それが単なる原価計算だけで終わっているのです。

 企業全体の視点からの取り組みが行われていない状況は何も価格だけではありません。他のマーケティングの4P、製品(Product)、販売チャネル(Place)、プロモーション(Promotion)についても同様で、マーケティングにぶら下がるさまざまな機能を統合して、戦略的な一貫性を持たせることに失敗しています。

 日本企業は市場ニーズを把握するための市場調査がマーケティングだとか、営業活動を側面からサポートする組織がマーケティング部門だとか、あるいは広告宣伝活動をマーケティングと称している企業もあります。

 経営学者のドラッカーは、“企業の成長にはイノベーションとマーケティングが欠かせない”と述べていますが、その意味合いは、どちらも全社を挙げての取り組みとして必要なものだということです。製品やサービスを売ることに全神経を注ぎ、それを皆で支える。これが本来の意味でのマーケティングです。

──そもそもBtoB企業とBtoC企業のマーケティングは何が違うのでしょうか。

 決定的に異なるのは、BtoB企業は多くの場合、顧客とのやり取りの中で、顧客の購買スペックが確定していくということです。BtoBでは顧客の要望を聞き、それを擦り合わせながら、じわじわと購買スペックが決まり、納入スペックが決まり、最終的な製品設計が行われる。いわば“事後的に製品が決まる”のです。

 これに対してBtoC企業では、事前に企業側が市場ニーズを把握して購買スペックを決定し、製品設計に盛り込み、市場に投入します。製品を販売後、はじめて本当に市場のニーズを満たしているのかどうかを検証できるので、当然こちらのほうが企業にとってはリスクが高いと言えるでしょう。

 BtoB企業よりもBtoC企業のほうでマーケティングが進んでいるのは、こうした理由が背景にあるからだと考えられます。

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──デジタルマーケティング分野の動向を見ていると、BtoCでのマーケティングの考え方をBtoBの世界に持ってくるという流れになってきています。この点についてはどのようにご覧になられていますか。

 両者が近付いてきているというのは間違いないと思います。

 BtoC企業におけるマーケティングは、この20年間のテクノロジーの進化などに伴って、マスマーケティングからOne to Oneマーケティングへと進化してきました。一方のBtoB企業では、最初からOne to Oneでした。しかしずっとOne to Oneでビジネスを行ってきたために製品ラインナップが膨れ上がってしまい、高コスト体質になってしまいました。

 そこでBtoCマーケティングの発想、つまり製品ラインを絞り込み、セグメンテーションを行い、ターゲティングをして、その領域の顧客ニーズを満足するようなコンセプトの製品を投入していくという考え方が出てきます。それによってコスト競争力も付きます。

 テクノロジーの進化に伴って、BtoCマーケティングの考え方をBtoBにも当てはめられるというのは事実です。

【次ページ】CMOの設置や全社的なマーケティングへの取り組みで大躍進した企業とは?
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