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- 2013/05/29 掲載
富士通 山本正已社長が語る、ビジネスのチャレンジや社会の変革を支えるICTとは
グローバル化、ソーシャル化、競争のパラダイムシフト

代表取締役社長
山本 正已氏
こうした変化が求められる背景には社会の大きな変化がある。その変化を象徴する1つがグローバル化だ。経済のグローバル化が進展している。たとえば、昨年の欧州の債務危機は世界の国々に多大な影響を与えた。
特にコンシューマー製品は従来は多国籍型、つまりそれぞれの地域に対応した製品を提供するのが定石とされてきた。しかし、今はグローバルに共通する製品が複数の地域で同時に人気を集める現象が起きている。
こうした流れはもちろん日本にも大きな影響をおよぼしている。従来から日本は独自の文化があり、特殊な市場といわれてきたが、近年グローバルな商品が急速に人気を博するようになり、品質や性能に関して値頃感があれば売れる世界市場と同じ傾向が見られるようになってきた。
家電を例にとれば、輸入が輸出を上回るほどに急増しているのがわかる。日本はもはや世界市場の一部となり、グローバル企業との競争にさらされるようになっている。
競争のパラダイムシフトも進んでいる。競争の既成概念が変わり、これまでの枠を超えたサービスが増えている。電話で言えば、SkypeやLINEの登場だ。ビデオサービスではhuluなども台頭してきた。
「いろいろなものをシェアする動きが広まっている。たとえば個人の自宅の1室をまったく知らない旅行客に1泊いくらで貸し出すサービスも登場し、爆発的に利用者が広がっている。これは一般の個人が、場合によっては旅館やホテルの競合になりうるということ。」(山本社長)
友達が何を買ったか、どんな音楽を聴いたか、そういう情報がソーシャルを通じてわかるようになった。そしてその情報がほしい、買いたいという気持ちを後押しするまでに発展している。コミュニティの中で個人の感想の集積が大きな力を持つようになってきたのである。
「ICTはほかにもさまざまなサービスに多大な影響をおよぼしている。たとえば、電子ブックの登場で自費出版がゼロ円に近づいている。富士通でも、欧州企業が中心になって、お客さま向けの雑誌を電子化した。世界中のどこにいても入手できるので、社員にも好評だった。」
自動車も大きく変化している。障害物を検出して自動で減速したり、止まったりする運転アシストされる高度なサービスがわずか10万円で実現できる。工場の生産ラインで使われる軽作業ロボットが200万円で買えるようになった。
「これらはごく一部の例だが、テクノロジーの進化が高度サービスの大衆化を進めているということ。これは、柔軟な発想さえあれば、まったく新しい商品やサービスを簡単に展開できるようになってきたことを意味している。」
こうした大衆化は生産技術にも大きな変化をもたらそうとしている。その一例が3Dプリンタだろう。アメリカでは個人用が普及しつつあり、急速に売上が伸びているのだという。
「誰でも生産者になれる時代が到来しつつある。現在では考えられないようなところからイノベーションが生まれつつある。」
このように新しいトレンドが登場する一方で、企業が直面するリスクも拡大している。最近いろいろなところで話題になっているのが、サイバー空間でセキュリティが深刻化していることだ。
現実社会での対応も看過できない。地震や津波、ハリケーンなどの影響はグローバル化し、世界的に影響を及ぼすようになっている。
【次ページ】3つの共通課題をどう解決するのか
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