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  • 2007/12/10 掲載

【連載】社内で導入するための実践「1枚企画書」講座(3)「情況」と「判断」を明確に分ける(2/3)

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情報をいかにデータ化するか

 「情報」と「データ」という言葉が出てきましたが、この2つも明確に区別します。

 「情報」というのは、『広辞苑』では「文字・記号・音声など、種々の媒体によって伝達され、受け手の判断・行動などのよりどころとなる知識や資料」のことで、一方の「データ」とは「判断・推論の基礎となる客観的な事実、また判断・推論の参考にする資料や情報」となっています。

 これだけではやや似通っているように聞こえますが、ここまでの説明で言うと、「情報」は素材となるS(情況)で、「データ」とは、それを何らかの判断材料にするという目的で集められ、実際にV(判断)を下す対象となるもので、同じものでも、目的や観点が違うということです。わかりやすく言うと「データ化する」という言い方はしますが「情報化する」という言い方は、あまり聞きません。

 だから企画および企画書では、それは「情報」か、それとも「データ」であるかは、明確に区別されなければなりません。

 具体的に説明すると「今年の夏はオーストラリアが記録的な干ばつに見舞われ、小麦の輸入が思うように確保できない」は情報です。これだけでは、判断材料にはなりません。「思うように確保できない」のはどのくらいか判然としないからです。だからこの段階では企画にはなりません。

 「展示会や見本市で、ライバル会社のブースはすごい混み合っていて盛況だった」というのも情報であってデータにはなっていません。「すごい」が1000人か10000人かで話は違ってきますし、10000人でも他社が20000人を動員していればまた話は別です。さらに、ノベルティ目的の来場者がその中に多く含まれていたのかもしれません。

 企画では、こういったあいまいな条件をできるかぎり排除します。つまり、それを企画にするには「情報をデータ化する」ことが必要になってくる、ということです。

 「データ化する」には、そこで得られた数値をグラフで表すことが有効な手段として挙げられます。しかし、数値化できないデータもなかにはあり、これも有効なものとして企画に利用されます。

 数値によって表すことのできるデータを「定量データ」といいます。それに対して、ものごとの性質や状態を表し、数値によって示すことのできないものを「定性データ」という言い方をします。

 アンケート調査とグループインタビューの例を挙げましたが、これが「定量データ」と「定性データ」の代表的な例です。両者は別の目的で単独で利用されることもありますが、前者でS(仮説)を立てて、後者でそれをP(立証)するというように相互補完的に利用されることが多いものです。


※クリックで拡大
図3:「定量データ」と「定性データ」を
意識して作成した「1枚企画書」
 それを意識して作成したのが右図の「1枚企画書」です。

 このように「1枚企画書」では矢印などを上手に使えば、それが、たとえば「対置する関係」だということを、説明しなくても絵のイメージで伝えることができます。

 企画依頼者が企画書を見て、何らかの判断を下すまではどのくらいかご存知でしょうか。時間にして、わずか3秒程度、ほとんど瞬間的です。これを私は「企画書の3秒ルール」と呼んでいます。

 企画というのはふつう、企画を依頼者する人の存在があります。そしてこの企画依頼者というのは「こういったものが上がってくるだろう」というように、ある程度の形を想定して、企画書を見るものです。つまり問いを発して、その「答え」になるものを企画書に求めているということです(これについては次回、あらためて取り上げます)。

 3秒で見せるには、「1枚企画書」が有効であることは明らかでしょう。なぜなら、形そのものが、論理的な流れや相互の関係性を代弁しているからです。

 企画書に限らず、どんなことでもいえるのですが、何かを提案するとき、3つのことが重要になってきます。それは、コンセプト(Concept)、コンテンツ(Contents)、コンテクスト(Context)で、3つの頭文字をとって、これを「企画書の3C」と呼ぶことにします。

 コンセプト(Concept)はその企画の中核概念で、もっとも重要であることは言うまでもないでしょう。それに対して、コンテンツ(Contents)とは、その企画がもっている内容です。内容のない企画は通るわけがないので、これも重要です。最後のコンテクスト(Context)は「文脈」という言い方をよくしますが、コンテンツ(Contents)をどう表すかということです。「文脈」が違えば、意味も違ってきます。「文脈」次第で、相手をうまく納得させることができます。すぐれた文学作品においても3Cが重要ですが、読みたいという気にさせるのはこの「文脈」にほかなりません。

 それは作者の「企み」です。企画を「企み」を「画す」と表現したのは言い得て妙です。どう見せるかによって、内容も、その中心にあるものも生きてきます。その逆もまた真ですが。

 「1枚企画書」には、そうした「企み」である「文脈」を見せる格好の手段だということができます。そこに、スリルとサスペンスがあるかどうかは、企画者であるあなた自身が実感してください。


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