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  • 2007/12/10 掲載

【連載】社内で導入するための実践「1枚企画書」講座(3)「情況」と「判断」を明確に分ける

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前回お話ししたように、企画書の第1フェーズがS(情況)とV(判断)ですが、これは「どうしてそう言えるのか」という企画の前提条件として重要です。今回は、SとVをどう取り扱い、「1枚企画書」のなかでどのように表現したらよいかについて説明します。「社内ルール化のための12のヒント」(会員限定)では、社内での提案のルールづくりについてお話しします。今回も、掲載した「1枚企画書」のフォーマットをダウンロードできます。
執筆:竹島 愼一郎
「事実は何か」を追及する

 前回、「1枚企画書」作成の秘訣は、最初に「SVCIPモデル」というものを考え、構造を押さえたうえで1枚の紙の上に構図を描きましょう、という話をしました。

 今回は、S(情況)とV(判断)をどうとらえるか、について説明しましょう。

 SとVは企画の前提になるもので、「何を」「どうする」という主語と述語の関係になぞらえることができます。主語のない文章に不備があるのと同じように、何かを判断するときには対象というものがなくてはいけません。つまり「対象を」「どう見たか」が企画の前提になるということです。

 S(情況)には、前回取り上げた例でいうと、「今年の夏はオーストラリアが記録的な干ばつに見舞われ、小麦の輸入が思うように確保できない」といったマクロレベルの情況と、「隣のデパ地下がリニューアルして2か月経つが、うちのデパ地下の客離れは止まらず、売上げも微減が続いている」などミクロレベルの情況とがあります。

 前者だと、国内のうどん屋さんは、小麦の値段が高騰しているわけですから、それに対して何らかの判断をしなくてはいけません。「一時的なものなので、じっとがまんする」か「世界的に燃料革命が起こっていることもあり、このへんで値上げを検討すべきだ」とか「新商品を考え出して、客単価が上がるようにしよう」といったことです。

 このようにS(情況)が、客観的に見るまでもなく明らかなこともありますが、後者のデパ地下の例のように、いろんな見方ができて、一概にどうだと判断できないこともあります。つまり、客離れの原因が、「魅力的なテナントを誘致したこと」にあるのか、「当社のデパ地下が、流行遅れになっていることに気がついていなかった」のか、それとも「パブリシティ効果をうまく利用した結果」なのか、「ターゲット層の絞り込みに成功したから」なのか「内装からサービスまですべて統一された設計がなされているのが評判を集めた」のか、いろいろなことが考えられます。


※クリックで拡大
図1:S(情況)―F(事実)-V(判断)を
より明確にした「1枚企画書」
 つまり、どう判断するかの前に、目の前のS(情況)の真相をとことん探ってみるべきだということです。企画というのは、かならず何かのS(情況)があるわけですが、S(情況)だけを提示しても企画にはなりません。S(情況)をどう見るか、ということが必要ですが、そのS(情況)から、客観的に見て確かだと思える「事実」(Fact)を抽出することがここでの主眼目になります。

 その企画によって経営判断を行わなければならないといった場合、100%確かか、限りなく100%に近い確度の「事実」(Fact)がないと、重大なミスにつながってしまいます。ここでいうのはそういった類の事実です。

 企画に限らないことですが、ビジネスの報告ではS(情況)とV(判断)は明確に分けて話すというのが大原則です。どうしてかというと「事実」(Fact)がどうか、というただその一点が企画の前提として重要だからです。S(情況)―F(事実)-V(判断)をより明確にした「1枚企画書」が上図です。


“仮説力”は想像力

 S(情況)だけではF(事実)が明らかにならない、というケースもあります。そういったケースでは、そこから「仮説」(Supposition)というものを立てます。「ひょっとすると……ということではないか」という想定です。そして、このS(仮説)を「確かにそう言える」ものにするには「立証」(Proof)が必要になってきます。S(仮説)がF(事実)に格上げされるには、P(立証)というプロセスを経なければならないのです。

 図式化すると、

「仮説」(Supposition)→「立証」(Proof)→「事実」(Fact)

 となります。これがS(情況)とV(判断)の間に存在する、ということです。

 企画力をつけたいのであれば、この「仮説」の力をつけなくてはいけません。つまり、目に見えるS(情況)から、目には見えない何かを想像するという能力です。“仮説力”といったものがあるとすれば、それは想像力ときわめて近い関係にあります。

 S(仮説)を立てたら、それをP(立証)するわけですが、それには新たな情報が必要になってきます。S(情況)1に対して、それをP(立証)する、S(情況)2というものが必要になってくるということです。

 たとえば、デパ地下の例で説明すると、アンケート調査を行った結果、顕著な特徴が出たとします。「ひょっとすると、こういうことなのかな」と想像をめぐらせます。つまりS(仮説)を立ててみます。「ターゲット層を上流階級にスライドさせたのかもしれない」というS(仮説)です。

 しかしそれはまだ「100%確かか、限りなく100%に近い確度」ではありませんから、F(事実)とはいえません。そこで、それを確かなF(事実)といえるようにするため、新たな情報を、たとえば集団面接法の一種であるグループインタビューなど行って調査するのです。

 その結果、「景気の回復を実感した沿線の高級住宅地に住むマダム層にターゲットを絞り、彼女たちを取り込むことに成功した」というF(事実)が得られる、というわけです。


※クリックで拡大
図2:調査によって得られたF(事実)を示した「1枚企画書」
 それを「1枚企画書」にしたのが右図です。

 「1枚企画書」は、1枚の紙の上に複数のデータを盛り込むことができる、というメリットがあります。そして、それらのデータの相互の関係性を矢印などで示すことができ、なおかつ、複数のデータから導き出される結語を、紙を別にすることなく提示することができるので、それだけ相手の理解と賛同も得やすくなります。

 説明するときも、複数枚の企画書だと、「2つ前の紙、3ページ目をもう一度見てください」と言うと、その時点で思考の流れがストップしてしまいます。「1枚企画書」だと「矢印で示されているように、上のグラフで示されていることは下のグラフで明らかになります」と説明することができます。第1回で示した「1枚企画書」のメリットである「全体像を見せられる」「関連性を見せられる」とは、このことをいいます。
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