• 2025/03/30 掲載

アングル:米経済にスタグフレーションの兆候、70年代とは違う可能性

ロイター

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Howard Schneider

[ワシントン 25日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の直近の経済見通しでは「軽度のスタグフレーション」が想定されている。こうした見方は、コロナ禍以来、諸外国に比べて米経済が堅調に推移してきた局面が近く終了するかどうかを見極めようとしている他のエコノミストの間でも広がっている。

<1970年代のスタグフレーション>

高いインフレと高い失業率が併存するスタグフレーションは、1970年代の米国で起きた事例が有名だ。当時の米国の経済運営は、世界大恐慌以降で最悪だったか可能性がある。FRB当局者はデータと政策を見誤り、政府もインフレ対策に失敗した。当時のフォード政権は「今こそインフレを倒せ(WIN)」キャンペーンを展開したが、今では不適切だったとみられている。

エコノミストはここ数週間、トランプ米大統領の下での劇的な経済政策の転換を受けて経済見通しを下方修正し、インフレ見通しを上方修正し、70年代が再来するか否かを巡る議論が高まっている。

理論的には、景気低迷局面で失業率が上昇すればインフレは抑制されるため、景気悪化と高インフレは共存しないはずだ。だが1970年代に物価を押し上げたオイルショックのように、トランプ氏の通商政策による「関税ショック」の可能性が取りざたされている。

トランプ政権の言い分では、関税は規制緩和、減税と相まって多くの雇用を創出し、インフレを低下させる。

現在の経済見通しで想定されているスタグフレーションは、1970年代ほど悪い状況ではない。当時は失業率とインフレを組み合わせた「悲惨指数(ミザリーインデックス)」が戦後で際立って大きく上昇した時期だった。

それでもエコノミストは経済の方向性を注視している。FRB当局者がここ1週間でこの先のリスクを検証した際、全員がインフレと失業率のリスクは上振れ方向とした。

「軽度のスタグフレーション」は、RSMのチーフエコノミスト、ジョー・ブルスエラス氏が先週の連邦公開市場委員会(FOMC)に関する分析リポートに付けたタイトルだ。同氏は「通商面のショックの規模と強度を巡る不確実性が広がっている」と指摘、FRB当局者の見通しは「成長が鈍化してインフレが上昇するのに伴い、目先は穏やかなスタグフレーションが起きることを意味している」と述べた。

<最も居心地の悪い環境>

FRBのパウエル議長はFOMC終了後の記者会見で、マクロ経済のハードデータは依然としてしっかりしていると述べた。実際、悲惨指数は比較的低い水準にとどまっている。

だが景況感といったソフトデータは悪化している。このためFRB当局者は、関税の影響で物価が上がり続けても、企業は投資と雇用を見合わせ、家計は支出を削減する可能性があると考えている。

FRB当局者は、調査先企業の間で懸念が広がっていると指摘。雇用を維持しつつ物価を制御する任務を負うFRBが、スタグフレーションによって難しい選択を迫られる可能性を議論し始めた。

シカゴ地区連銀のグールスビー総裁は21日、CNBCに対し、「スタグフレーションほど居心地の悪い環境はない。スタグフレーション局面では(物価安定と雇用最大化の)2大責務の両面で、状況が悪い方向へ進み始める。包括的な解答はない」と述べた。「関税の引き上げは物価を押し上げ、生産を減少させる。これこそがスタグフレーション的な動きだ」と語った。

<たかをくくらず>

仮にFRBが板挟みになれば、彼らの優先事項は明確だ。それはインフレだけでなく、インフレ期待を確実に制御し続けることだ。

1970年代の主な過ちは多分、一般市民の心理が将来のインフレに及ぼす役割を当局が十分に理解していなかったことにある。

その結果、ポール・ボルカー議長指揮下のFRBが1980年代から90年代にかけて信認を回復し、インフレ期待をリセットするには、懲罰的な高金利と2回の景気後退が必要となった。

パウエル議長は、この教訓を心に言い聞かせており、二の舞は避けると表明している。

パウエル氏は先週の記者会見で「70年代の再来や、それに似た事態が起こると考える理由は見当たらない。基調的インフレは依然として2%台で推移しており、関税に関連して若干上振れする可能性がある」と説明した。 

それでもインフレ期待の安定は「われわれの政策の心臓部」に当たり、「全ての指標を極めて慎重に注視する。何事もたかをくくらない」と述べた。

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