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ゼレンスキー大統領の飛び入り参加などが話題となった広島サミットは、ウクライナ問題に限らず、脱炭素政策も大きなテーマであった。特にホスト国日本の石炭火力発電には、欧州からの参加国の非難が集中した。しかし、日本は最後まで、石炭火力の具体的な廃止期限の明記を拒否したままサミットを終えることとなった。なぜ、日本はこれほどまでに石炭火力発電に固執するのか、いったい日本は脱石炭を果たせるのか。
“汚い電気”石炭に頼りきりの日本の発電
まずは、石炭火力が日本の電力政策でどう位置付けられているか見てみよう。
下図右は、第6次エネルギー基本政策に示された現状と2030年の電源構成である。石炭火力発電は2019年度時点で32%と全体の1/3を占め、2030年目標でも19%と高い水準にある。これを欧州は、2030年代にゼロを約束しろというというのだから、簡単には飲めないということになるのかもしれない。
ただし、早期の廃止を求める側にも根拠がある。それは、石炭発電は温暖化につながる二酸化炭素の排出が際立って高いのである。下のグラフは、二酸化炭素の排出係数(*数字が大きいほど二酸化炭素量が多い)を示したもので、同じ化石燃料である天然ガスの2倍以上である。
かくして、石炭火力発電に頼る日本は、発電部門の温暖化効果ガスの排出量において世界で4番目(1位中国、2位米国、3位インド)の排出大国となっている(次グラフ)。
前述したサミット参加のG7各国の中での二酸化炭素排出係数(1kWh当たりの排出量)で見ると、次のグラフのように石炭産出国のドイツを押さえて堂々のトップとなってしまっている。このグラフを作成した「Climate Integrate」は、高い排出原単位の電力を、“汚い電気”と命名している。残念ながらかなり不名誉なことである。
ではなぜ、日本はこの不名誉な電力から離れることができないのだろうか。
【次ページ】なぜ日本は石炭火力発電を捨てられないのか
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