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  • 2021/07/29

ビル・ゲイツの「慢心」に見る、企業成長に欠かせない“たった1つ”の教訓

連載:企業立志伝

数年前までマイクロソフトは、GAFAの成長から取り残された「過去の企業」となりつつありました。ところが今では、ほぼ同じ頃に創業したアップルと時価総額を競い合うほどの完全復活を遂げています。ビル・ゲイツ氏の生い立ちからマイクロソフト創業までをたどった前編では、同氏の野心の根源を垣間見ることができました。後編となる今回は、設計すらできていない「Windows」を発表してから現在のマイクロソフトに至るまで、ゲイツ氏とマイクロソフトの歩みをたどると、企業が成長し続けるにあたって忘れてはならない教訓が見えてきました。

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタからアップル、グーグルまで、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開することで定評がある。主な著書に『難局に打ち勝った100人に学ぶ 乗り越えた人の言葉』(KADOKAWA)『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)『「ものづくりの現場」の名語録』(PHP文庫)『大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ』(ビジネス+IT BOOKS)などがある。

大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ (ビジネス+IT BOOKS)
・著者:桑原 晃弥
・定価:800円 (税抜)
・出版社: SBクリエイティブ
・ASIN:B07F62BVH9
・発売日:2018年7月2日

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マイクロソフトの復活劇に学ぶ
(写真:AFP/アフロ)


「Windows 95」で業界の覇者になる

 スティーブ・ジョブズ氏が率いるアップルに対抗するために、設計すらできていない「Windows」を発表した1983年当時、ビル・ゲイツ氏も有名になりつつありましたが、あくまでも業界のスターはスティーブ・ジョブズ氏であり、ゲイツ氏は「ニュー・スティーブ・ジョブズ」(『ビル・ゲイツ』p353)と呼ばれることもあったほどです。


 ライバルであるジョブズ氏に勝つためにゲイツ氏は、「Windows」の開発に全力で取り組みますが、それまでの仕事の多くが、数人が数週間で仕上げられる規模だったのに対し、Windowsは数十人で数カ月もかかる仕事でした。発売は遅れ、危機が何度も訪れました。マスコミは、Windows開発に失敗すれば、マイクロソフトは消え去ってしまうと論評しました。

 それまでのゲイツ氏は、不完全であってもトップで製品を出荷することにこだわり、問題点はあとで解決する手法を取っていましたが、Windowsに関しては逆でした。

「僕たちが出す製品は、他のどの製品よりもずば抜けていなくてはいけないんだ。申し分のない製品でなくてはならないんだ」(『ビル・ゲイツ』p403)

 ゲイツ氏はそう語り、焦る周囲をなだめていたのです。

 最初の「Windows 1.0」がようやく完成したのは発表から2年も経った1985年のことでした。それは2代目CEOとなるスティーブ・バルマー氏が「ウィンドウズのように大幅に遅れる製品は、今後絶対にないだろう」(『ビル・ゲイツ』p409)と弁明するほど遅れての投入でしたが、最初のWindowsはゲイツ氏が望んでいたほどの成功を収めることはありませんでした。

 それでもゲイツ氏は決して諦めることはなく、1990年の「Windows 3.0」で市場のかなりを支配、1995年の「Windows 95」でついに業界の覇者となったのです。まさにゲイツ氏の粘り勝ちでした。

モバイル革命に乗り遅れ「過去の企業」に

 そして以後もゲイツ氏は「Windows」の改良を続けることで市場を支配し続けるだけでなく、個人的にも「世界一のお金持ち」の座を長く維持することになるわけですが、やがてアマゾンやグーグル、フェイスブックといったガレージや大学の寮で誕生した企業にいくつもの分野で先行されるようになり、スティーブ・ジョブズ氏が切り開いたスマートフォンの時代への対応に遅れをとることで「過去の企業」と見なされるようになります。

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マイクロソフトの歩み

 グーグルが急成長を始めていた頃、すでにマイクロソフトから離れていたアレン氏がゲイツ氏に「グーグルに追いつける方策はあるのか、それともグーグルを買収するつもりでいるのか」と質問したところ、返ってきたのは「6カ月もあれば追いつけるよ」(『ぼくとビル・ゲイツとマイクロソフト』p288)という“慢心”としか思えない答えでした。

 アレン氏によると、当時のマイクロソフトの戦略は、先行する会社の製品を徹底的に研究して、「急いで追いつき、追い越す」というものでしたが、アップルのiPodに対抗する製品を発売したのは5年後のことであり、「急いで大きくなる」ことが必要なインターネット時代の戦略としてはすでに通用しない戦略を信じ込んでいたといいます。

 ゲイツ氏はかつてこんなことを言っていました。

「ハイテク業界のビジネスというのは実に恐ろしいものです。技術的に少しでも遅れを取れば、過去にいくら成功していようと、今後も好調な業績を上げ続けられる保証はまったくありません」(『ぼくとビル・ゲイツとマイクロソフト』p275)


 2000年代はアップル躍進の時代であり、アマゾンやグーグル、フェイスブックなどが急成長を遂げた時代ですが、その一方でマイクロソフトはゲイツ氏の言葉通り「過去に繁栄した企業」への道を歩み始めていたのです。

【次ページ】風向きを変えた、3代目CEOサティア・ナデラ氏

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