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令和元年は、ゲーム業界が大きく変わる年になるかもしれない。米アップルと米グーグルの2大テック企業は2019年3月、サブスクリプション型ゲームサービスの開始を予告した。Netflixを始めとするサブスクリプション型サービスで映画業界のビジネスモデルが変わってきたように、ゲーム業界にも変革の兆しが見られる。今後ゲーム業界の勢力図は、どのように塗り替えられるのだろうか。両社のサービスから、その未来を紐解いてみたい。
「令和元年秋の陣」でゲーム業界勢力図は一新?
2019年3月、米アップルは定額課金制のゲーム・サービス「Apple Arcade」を発表した。サービス開始は2019年秋を予定しており、100以上の高品質なゲームタイトルをiOS機器上で楽しめる。
また、同時期に米グーグルも新たなゲーム・サービス「Google Stadia」の情報を公開した。
両社とも詳細なサービス開始時期や価格体系は明らかにしておらず、同じようなサービスを提供するように見える。しかし、そのビジネスモデルを分析すると、その戦略や採用した技術は大きく異なる。
アップルが開発したApple Arcadeは、App Storeからダウンロードするサービスで、iPhone、iPad、Macといった同社が販売する機器で動作するのが特徴だ。
近年、無料やアプリ内課金のゲームが大量に開発され、利用者にとって優れた作品を見つけるのが困難になっている。また、ゲーム開発者にとっても、コストをかけて制作してもヒットにつなげるのが難しく、採算が合わないリスクが高くなった。Apple Arcadeは高品質なゲームのみ100タイトル以上をそろえる。サブスクリプション登録したユーザーは、ゲームをするたびに代金を支払う必要がなく、自由に優れた作品を楽しめるのがメリットだ。
一方、グーグルが公開するGoogle Stadiaはブラウザ上で動作するゲームで、使用機器を選ばない。クラウドゲーミングと呼ばれる技術を使用しており、いわばゲーム本体がサーバ側で動作する仕組みだ。従来からあるゲーム機器の「PlayStation」や「Nintendo Switch」は不要になり、高速インターネット接続さえあれば、いつでもどこでもゲームが楽しめるようになる。
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囲い込むアップルvsコミュニティのグーグル
アップルの戦略は自社の商品・サービスをより魅力的なものにし、ユーザーの囲い込みを進める点にある。すでにアップルは人気ゲーム・クリエイターがApple Arcade向けにゲームを制作することを発表している。その限定的なコンテンツで遊びたいユーザーは、アップルの機器を購入し、Apple Arcadeに登録する流れとなる。
つまりアップルは、ハードウェアの購入からサービスの利用まで、一人の顧客が売り上げに貢献する「顧客生涯価値」を最大化し、アップルの利益率向上へ寄与することを狙っている。また、Apple Arcadeとともに、同社が発行するクレジットカード「Apple Card」の導入も明らかになった。決済を含めたあらゆる接点が、アップルのエコシステムに組み込まれるのだ
こうした動きとは真逆なのがグーグルである。iOS機器の販売に大きな比重を置くアップルと異なり、グーグルはハードウェアの販売を必須としていない。むしろ、これまで数万円の支払いが求められたゲーム・コンソールを不要なものにしてしまうものであり、ゲーム業界に破壊的な影響を与える可能性がある。
Apple Arcadeは、App Storeからダウンロードする仕組みを残しているため、そのサブスクリプション型サービスは既存の延長線上にある。しかし、Google Stadiaは、クラウド上で処理を行うため、どんな機器でも高性能なゲームが楽しめるようになる。技術的に難易度が高く、まったく新しいビジネスモデルの構築を目指している。
Google Stadiaの興味深い点はYouTubeとの連携だ。ゲームをスポーツのように楽しむeSportsの普及とともに、「ゲームを観る」という文化が生まれつつある。Google Stadiaで操作したゲーム画面をYouTubeに配信すれば、人気のゲーム・プレイヤーと、そのファンを結びつけることが容易になる。グーグルのゲーム戦略は、そのコミュニティ作りに期待がかかっているのだ。
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