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  • 2018/12/26 掲載

【2019GAFA展望】進撃の[A](アマゾン)、いよいよ広告や製造にも巨人が踏み出した

連載:米国経済から読み解くビジネス羅針盤 

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頭文字をとってGAFAとも呼ばれる米テクノロジー大手4社のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンにとり、2018年は社会やユーザーとのつながりにおいて「激動」「転換点」と形容することがふさわしい1年であった。そのうち、巨人アマゾンにとって2018年のキーワードであった「広告とクラウド」「製造業」「批判の高まり」を中心に振り返り、同社の2019年を占う。
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2018年9月、ワシントンで講演するジェフ・ベゾス氏
(写真:UPI/アフロ)

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eコマースの成長鈍化を第2、第3の柱がカバー

 アマゾンにとって2018年は記録的な年であった。同社は2018年9月4日、米国で242年間現れなかった時価総額が1兆ドル(約113兆円)を超える企業の2番手となったのである(最初にこの記録を樹立したのは同じくIT企業のアップルで、先立つこと1カ月の8月2日)。

 米eコマースの約半分をコントロールし、あらゆる業界に殴り込みをかけることから、アマゾン参入のうわさだけで潜在的なライバルの株価が大幅に下落する。

 2018年7~9月期には、アマゾンの売上が565億8000万ドル(約6兆3681億円)と、前年同期の437億4000万ドル(約4兆9229億円)を29%も上回ったものの、市場予想を5億ドルほど下回った。上出来の業績だったが、市場は悲観して株価は下げた。年末商戦で書き入れ時である10~12月期の予想をアマゾンが引き下げたことも響いた。

 以下は、2017年4~6月期から2018年7~9月期におけるアマゾンのeコマース売上の推移と、前年比の伸びを示した表だ。2018年7~9月期は前年の22%から11ポイント落ちて11%と鈍化している(出典: アマゾン決算資料)。

2017年2Q 2017年3Q 2017年4Q 2018年1Q 2018年2Q 2018年3Q
ECの純売上高
(単位:100万ドル)
23,754 26,392 35,383 26,939 27,165 29,061
対前年同期比 +18% +22% +17% +13% +12% +11%


 アマゾンはAmazon.comにおける販売、サードパーティ出品者から受け取る手数料などを含むネット小売セグメントで快進撃を続けてきたのだが、ここに来て成長が減速している。売上全体に占める小売の割合は51%強であり、この分野の拡大がスローダウンすれば、全体の売上の成長も大きな悪影響を受ける。

 2017年10~12月期のeコマースの売上は353億ドルと前年比17%の伸びであったが、米投資サイトの『シーキング・アルファ』は、「第4四半期のeコマース売上の前年比の増加はここ数年鈍っており、2018年10~12月期は一桁台に落ちる可能性もある」と警鐘を鳴らす。

 また『シーキング・アルファ』は、アマゾンの成長を牽引してきた北米において、米国の世帯数は1億2500万であり、米プライム会員の数が1億に近づいた今、会員数はそろそろ飽和状態であると指摘している。

 こうした中、成長の鈍ってきた祖業を絶妙のタイミングで補い始めたのが、第2の事業の柱に育ったクラウド事業のAWSと、急速に第3の事業の柱として頭角を現した広告事業だ。

 AWSは2018年7~9月期に前年比45.7%急増の66億8000万ドルを売り上げ、市場予想を1000万ドル上回るなど好調だ。一方、広告が含まれる「その他の事業」セグメントは7~9月期に前年比123%の劇的な増加を見せており、不可避であるeコマースの減速をカバーする役割に期待がかかる。

 事実、米調査企業のパイパージャフリーは8月に、アマゾンの広告売上が2021年には現在の3倍以上の160億ドルになり、クラウド事業売上の150億ドルを追い抜くと予測している。アマゾンは2019年に柔軟に事業構成比を変えてゆくことだろう。

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スマートスピーカー、レジなし店舗にも期待

 こうした中、2018年5月現在の米国スマートスピーカー市場で62%のシェアを誇り、2位のグーグルホームの27%を依然引き離しているアマゾンのエコーは、2018年の年末商戦で品切れとなるなど引き続き好調だ(ただし米調査企業eMarketerの12月発表の調査ではグーグルの「ホーム」に急追されており、2019年もシェアを落とすと予想される)。

 また、テック大手のエコシステムの垣根を越えて、エコーでアップルの音楽ストリーミングサービスであるApple Musicの再生が可能になるなど、使い道を増やしてユーザーも増加させる施策が着々と打たれている。

 2021年までに3000店舗を展開する計画であるレジなしコンビニのAmazon Goは2018年1月に1号店を本社所在地のシアトルで開店して以来、シカゴやサンフランシスコに合計9店舗をオープンさせている。2019年には全米での展開が加速し、独自のレジなし店舗をいまだに試験中である競合小売大手のウォルマートやクローガーに圧倒的な差をつけるだろう。

 Amazon Goで販売されるサンドイッチやサラダ、ヨーグルト等のデリカテッセン系の食事はマクドナルドやサブウェイなどのファストフードチェーンと競合することが指摘されており、2019年は「ファストフードチェーンとしてのアマゾン」がより強く意識されてゆこう。

 ここで特に注目されるのが、Amazon Goのコンビニフォーマットでは実用化にこぎつけたレジなし店舗の技術を、より大型の店舗で実用化するという課題だ。

 業界では、アマゾンが大型レジなし店舗のフォーマットを傘下の高級生鮮スーパーのホールフーズでテストするだろうという点で見解が一致している。ただ、面積も狭く取扱商品の数が限られるコンビニと比べ、スーパーマーケットは奥行きが広く、商品棚も高く、顧客の数や挙動、そして動作がコンビニとは比較にならないほど複雑で膨大だ。野菜や果物の量り売りも処理に困難が伴う。

 センサーやカメラの数、そして何より分析・決済系のプログラムが問題なく連携して作動するか、慎重なテストが求められる。この障壁を乗り越えられれば、Amazon Goのフォーマットを小売業者に外販し、オンライン上だけでなく実店舗における消費者行動のビッグデータを蓄積・比較できるめどがつくため、技術的に勝負の1年となるだろう。2019年内に実用化にこぎつけられるか、注目だ。

 こうした試みが成功すれば、「オンラインのアマゾン」の弱みであった実店舗体験やオムニチャンネルの課題が解決に近づくことになる。

【次ページ】“製造業”アマゾンの姿がいよいよ現れた
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