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  • 2019/01/08 掲載

【2019GAFA展望】変容の[G](グーグル)、対立が激化する中、自動運転が希望に

連載:米国経済から読み解くビジネス羅針盤 

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頭文字をとってGAFAとも呼ばれる米テクノロジー大手4社のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンにとり、2018年は社会やユーザーとのつながりにおいて「激動」「転換点」と形容することがふさわしい1年であった。このうちグーグル(親会社アルファベットグループの動きも含む)については、(1)クラウドとAIの躍進、(2)信頼問題、(3)社内紛争や企業倫理の課題、(4)自動運転車開発の好調、などが盛んに報じられた1年だった。2019年は先行するAIと自動運転分野での開発がさらに進み、これらの分野で競合との差が意識されるようになるだろう。
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2018年5月、グーグル年次開発者会議 「I/O 2018」に登壇した同社CEO サンダー・ピチャイ氏。これからグーグルはどのような変貌を遂げるのか

(写真:ロイター/アフロ)
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「グーグルにおまかせ」戦略の成功

グーグルにとって自社の検索サービスや人工知能(AI)、クラウドをシームレスに統合してユーザーの生活や仕事の質を上げることで、「本業」である広告に誘導することで収益を増大させることは、事業の根幹である。

 このため2018年にグーグルは、「あなたのために考え行動するグーグル」というイメージを前面に打ち出した。具体的には、ユーザーの思考や発言や行動をAIで「先回り」して引き受ける機能を次々とリリースした。

 ほんの数例を挙げると、(1)メールの返信文候補を自動で提示、(2)スマホのカメラで写したモノや製品が何であるかを教えてくれる、(3)フライトに遅延が出そうになれば自動的に通知、(4)勤務先のビル内で失くしたスマホの位置を特定してビル内のオフィス地図まで示す、(5)ユーザーに代わって電話注文や予約を行う、などだ。

 利用者の思考や発言や行動をグーグルのAIに全面的に信頼して委ねさせ、究極的には依存するユーザーの欲望やニーズまでAIが先回りして教える、つまりユーザーの行動をグーグルが「命令」できるようになる、神に近い存在への第一歩が示された年でもあった。

 そうした依存状態を実現させるため、5月上旬に開催した年次開発者向けイベントの「グーグルI/O」などでは、「Make Google do it(グーグルにおまかせ)」がスローガンとして掲げられ、通年で繰り返された。さらに、「デジタルがある健康的な暮らし」を意味するdigital wellbeingという生活満足度の概念を打ち出した。

 こうしたキャンペーンが奏功し、米調査企業eMarketerの市場予測ではスマートスピーカーのグーグルホームのシェアが2018年の29.5%から2019年には31%に伸び、ライバルであるアマゾンエコーの支配的なシェアを66.6%から63.3%へ引き下げる要因となる。

 また、グーグルの2018年7~9月期の広告売上は前年同期比20.3%の289億5400万ドルと、「グーグルにおまかせ」戦略の成功を示唆するものであった。中でも、課金クリックが前年比62%も伸びていることが注目される。

 サンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は同期のアナリスト向けカンファレンスで、「広告主は、弊社が機械学習を使用して効果的な広告商品を提供することに好意的だ」と述べている。グーグルの広告は2019年に、さらにAIと一体化して効果がより高いものになり、同社の収益改善に貢献しそうだ。

 一方、競合であるソーシャルメディア大手のフェイスブックが、収益率の良い動画広告展開のために立ち上げた動画共有サイト「Watch」が、低い認知度などの原因で月間ユーザー数が4億人にとどまるのに対し、グーグル傘下のYouTubeは18億人と規模で圧倒している。

グーグルの信頼獲得が進まない理由

 グーグルの施策がこうして数字上の成功に「量」として明確に表れる一方、同社は2018年にユーザーからの信頼という「質」を勝ち取るまでには至っていない。12月に米議会に呼ばれたピチャイCEOは「ユーザーは自分が具体的にどの個人情報を弊社に明け渡しているか、ちゃんと理解している」と主張したが、議員たちはグーグルによる個人情報関連の自主規制や自浄能力に懐疑的であった。

 事実、SNSの「Google+(グーグルプラス)」で5250万人のユーザーの個人データが外部開発者に閲覧可能の状態になっていた問題(同サービスは不採算でもあり、2019年4月に提供停止予定)、グーグルのスマホアプリが位置情報をオフにしてもユーザーの居場所をグーグルのサーバーに送り続ける問題、グーグルのブラウザ「Chrome」でGmailを利用すると勝手にそれ以外のグーグルのサービスへのログインも行って閲覧履歴などのデータをサービス間で共有し始める、「Google Play」で子供向けに指定するアプリの一部に不適切なものが含まれていた、など同社に対するユーザーの信頼を長期的に傷つけかねない不祥事が2018年に明らかになった。

 グーグルはこれらの問題に対して、いまだユーザーや議会が納得する説明や解決策を提示できておらず、メディアの批判が高まっている。現在、大手IT企業に対する批判はフェイスブックに集中している観があるが、2019年にはそうした厳しい世論がグーグルに飛び火して「第2のフェイスブック」になってもおかしくない状況だ。

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 グーグルにとって最も怖いのは、収益の大半を占める広告事業の規制や分割を求める声が高まることだ。民主党のマーク・ワーナー米上院議員は12月に「グーグルは小規模の競合のインターネット広告への参入を妨げている」と指摘し、「同社がこの状況を変革する動機は薄い」と述べた。このような見解が世論で受容され、「グーグルは広告事業で独占禁止法に違反している」との印象がつくことは何としても避けたいところだ。

 ピチャイCEOは2017年、「企業としての弊社は好む好まざるとにかかわらず、象徴的な存在だ。われわれ自身に対する基準を他社のものより高くしないと、間違いを犯した際に高い代償を払うことになる」と自己実現予言のように述べた。その発言が成就しつつある今、2019年はピチャイ氏のビジョンと指導力が試される年になろう。

社内外で陥るコミュニケーション問題

 こうした中、グーグルは内憂外患状態だ。社内ではセクハラ問題や中国市場向け検閲付きブラウザなどで社員と経営陣の対立が激化している。

 特に、グーグルにとっての大功労者で「アンドロイドの父」と呼ばれるアンディ・ルービン氏が、不倫の別れ話のとき部下にホテルで性行為を強要した疑いで2014年に辞職させられた際に、9000万ドル(約102億円)の退職金を受け取っていたことが明るみに出て、11月1日に世界各地で社員約2万人が一斉に抗議行動に出たことは、同社のガバナンスとコミュニケーションの問題を浮き彫りにした。

 上層部はセクハラポリシーの改定や中国向けブラウザ開発の延期、「人殺し戦争加担」と見られかねない米国防総省の最大100億ドル(約1兆1300億円)のクラウドコンピューティング契約入札に参加しない、悪用の恐れがある顔認識の汎用API(アプリケーションプログラミングインターフェース)は技術的および政治的疑問が解決されるまで外部に提供しない、などの譲歩を行った。

 だが、従業員は納得していない。そうした中、メディアへの密告を行った「犯人」探しが始まり、社員は疑心暗鬼に陥っていると伝えられる。

 翻って、グーグルは社外でもコミュニケーション問題を抱える。首都ワシントン近郊のアーリントンとニューヨーク市ロングアイランドシティに誘致が決定したアマゾンの第2本社やテキサス州に建設されるアップルのオースティンキャンパスに続いて、グーグルも10億ドル(約1130億円)を投じてニューヨーク市に新拠点を構えると発表した。

 最大1万4000人の雇用を生み出すこの動きの肝は、グーグルがアマゾンのように地元自治体から巨額の補助金を受け取らないことだ。すでにグーグルは本拠地のカリフォルニア州のシリコンバレーにおいて住宅事情の悪化、物価上昇やホームレス増加の元凶として憎悪の対象となっており、グーグル社員の通勤バスが襲撃を受けるなど、立場が悪いからだ。補助金を受領(じゅりょう)しないことで、貢献度のみをアピールできるメリットもある。

 一方で、シリコンバレー本社の近くに同じく10億ドルを投じて土地を取得しており、キャンパスの建設が始まれば地元住民とのあつれきの悪化も懸念される。

【次ページ】自動運転車だけで11兆円もの売上、年明けの“試練”を乗り越えられるか
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