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  • 2018/08/09 掲載

日立がグループ全体で「IT部門連合プロジェクト」、何が成功のポイントだったのか?

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今日、組織のIT部門は経営や事業強化への貢献を強く求められている。日立グループでは、これまでITインフラ、間接業務システムの集約を進めてきたが、業務システム分野でもIT部門が“連合”の名の下にシナジー効果を出す新たな取り組みを展開している。リードエグジビションジャパン主催「設計・製造ソリューション展」に登壇した日立製作所 IT統括本部 統括本部長 野村泰嗣氏が、同グループにおける「横断的IT部門連合プロジェクト」の成果を披露した。
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日立のIT部門は、どのように連合したのか
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)


ITによる事業強化のニーズ、日立製作所×日立建機を決断

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 今日、組織のIT部門は単なる“システム構築請負業”ではいられない。経営利益や事業への貢献、グローバル対応が求められ、そこには新しいITテクノロジーの適用や投資効果の明確化も含まれる。そればかりではなく、セキュリティ対策の強化、事業継続性・経営継続性の向上にも努めなければならない。

 日立グループでは、この命題に対する一つの回答としてグループ集約という施策を展開してきた。ネットワーク、サーバなどのITインフラ、財務、人事給与といった間接業務システムに関して、日立グループ全体で集約、それにより投資原資の創出を実現したのである。

 ただ、これまで事業システムだけはその対象外で、そう簡単に集約できないと各社個別に対応してきた。しかし、社ごとの努力には限界があると判断。事業システムに関してもIT部門連合を結成し、IT戦略、タイムスケジュール、適用技術の共有や、技術、IT資源、人員、プロセス、パートナーなどの共同利用で事業強化を図ろうと考えた。

 同グループではこれを共同組合モデルと呼ぶ。今後はグループ会社のみならず、コーポレートITもこのモデルの下で活動する方針が決定しているという。その取り組みの第一弾が、日立建機と日立製作所によるIT部門連合プロジェクトだった。

自発的に創出された40のシナジー施策

 2016年3月、両社は経営トップが正式に基本合意書を取り交わす。これが重要だったと野村氏は強調する。

「IT部門長の合意ではなく、経営トップの合意であったということがポイントです。これがこの後の取り組みの中で重要な役割を果たしたのですが、非常に速い決断をしてもらいました」

 具体的には、8つの戦略領域を定め、スタートダッシュを重視し100日プランを実施。その中で、両社キーマンからなるサブワーキンググループの発足、シナジー領域の検討、KPIの定義などを行い、すみやかに戦略実行に移っていった。このプロセスで自発的に創出されたシナジー施策は40に上るという。

 たとえば、Web Configuration System(以下、WCS)は、サーバのスペックを選択すれば構成と希望小売価格を表示できるという日立製システムだが、これを建機の構成選択にも適用することになった。

「現場を知るメンバー同士が会話すると、もしかして使えるかもしれないという気づきが自発的に生まれます。何かを新しいことに挑戦するとき、ともすれば我々はできない理由を先に挙げがちですが、できると思う人間が集まれば、その行動を止めることなく進められます」

 そして実際に、1週間でモックアップを作り、2カ月でプロトタイプを完成させるというスピーディーな展開でこれを実現した。成功の要因として同氏は、すでに動くアプリが存在したこと、サーバ設計部門とともにWCSを作り上げたメンバーが建機の設計部門と協業したこと、外部の開発会社などを介さず社内組織で当たれたこと、社内組織であったために低コストで収まったことなどを挙げた。

見込み顧客発掘ではデータ分析に挑戦

 一方、見込み顧客を発掘するターゲット選定システムでは、データ・アナリティクスに挑戦した。これまではSFAツール活用が中心で、主に“人間系”の対応だった。そのため、「選定の観点が営業担当者ごとに偏っている」「行きやすい顧客を優先しがち」「選定結果が変わり映えしない」などの課題があった。

 そこで今回は、システム側で既存データを組み合わせて分析することで新たな見込み顧客を選定することになったのだが、これはなかなかハードな仕事だったという。

「自動的に作成されたリストを持っていって『これで注文が取れます』と提示しても、受け入れられるものではありません。現場目線でわかりやすい仮説を立て、ダメ出しやレビューを繰り返し受けながら地道にデータをクレンジング。これが2017年度モデル5支店の実績で実受注40億円増達成という結果につながりました」

 IT部門連合プロジェクトではまた、IoT分野にも力を入れた。その一つの成果がIoTシステムの設計標準化だ。同グループでも製品の保守・故障予兆モニタリングでのIoT活用は以前から取り組んでいたが、どちらかといえば部分最適に陥りがちだった。しかし、こういう取り組みは最初にしっかり標準を定めておかないと、後に横展開する段階になって追加・変更作業が必要になり、それがコストとして跳ね返ってくる。

 そこで今回は、IoTシステムを構成する12の機能ブロックと、各ブロックの構成要素をフレームワークとして定義。モジュールを取り換えることで建機用を船舶用に応用可能になるといった具合に、横展開の可能性を広げた。今後はこの機能ブロックフレームワークに沿った設計に注力していくという。

【次ページ】IT部門連合をどのような組織体制で実現させたのか
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