- 2018/05/07 掲載
5Gはいつから実用されるか、総務省に聞いた“実現可能”な青写真(2/2)
5G、日本の現在地は
──この3月に記載された世界最大級のモバイル関連カンファレンス「MWC2018」で、海外勢は1年前倒しで2019年には、サービスインするのではないかという話もありました。中川:日本では今年の夏までに5Gの技術的条件の策定を行い、2019年3月末頃には5Gの周波数割当てを行う予定です。それらが整った後、通信事業者にて基地局が整備され、ユーザー向けの製品も市場に投入されれば、5Gが実現することになります。
総務省は直接携帯電話事業を行うわけではありませんが、2020年を待たずして国内でもサービスインに近いところまで実現するのではないかと期待しています。
──現段階では、(5Gの進捗について)日本は世界のどの位置にいるのですか。
中川:日本はこれまで5Gの実現に向けた先頭集団の一員として取り組んできました。このまま先頭集団として5Gを実現できればと思っています。
ちなみに、5Gの導入は、たとえばある時点で一気に全てが5Gに置き換わることはありません。今の4Gを使いながら少しずつ5Gが導入されていきます。
──ビジネスとして、5Gにどれだけの経済効果があるのでしょうか。
中川:市場規模としては全世界で70兆円(2026年)、経済効果は約1,230兆円(2035年)との試算もあるようです。日本がその市場にスムーズに進出するだけでなく、さらに世界をリードして広げていくことができるかがポイントになると思います。
この意味でも総務省としては5Gの早期実現のための環境整備や、実証試験を通じた検証も行っています。
実はこの実証試験はB2B2Xのモデルを擬似的に作るという取り組みにもなっていると思っています。たとえば5Gの高精細映像で広域監視をする「スマートシティ」は、NTTドコモと東武スカイツリータワー、綜合警備保障など、通信事業者だけではなく実際に製品やサービスを提供する方々と一緒に実証試験のプロジェクトを実施していただいています。
ビジネスとして成り立つかも合わせて見ていただきつつ、もし成り立つならソリューションのパッケージとして仕立てて、海外に売っていく。そのようなことにつながれば、日本発の5Gビジネスが世界に広がり、さらに経済効果が広がっていくのではないかと期待しています。
総務省が5Gに見る未来
──今後の展望を教えてください。中川:5GでB2B2Xで世界を席巻するようなうまく行く事例が出てきてほしいと思います。挑戦をする以上、失敗は避けられないでしょうけれど、可能であれば、そのような挑戦をたくさんできる環境づくりに、役所として応援できることはないかと思っています。
若い起業家がリードするベンチャーや中小企業が思いつきで5Gをテストする環境ができるのが理想的ですが、実際には無線は混信を起こすこともあるので、そう簡単ではありません。
それでも、これまでより5Gを試しやすい環境ができれば、ビジネスの裾野が一段と広がるのではないかと思います。個人的には、5Gの「すごさ」を示せるのは、若いベンチャーかもしれないとも思います。
また、昨今5Gを報道などで取り上げていただくことも増えましたが、中には「これからは全てが5G」という論調も散見されます。しかし、必ずしもそういうわけではないと思っています。
たとえばIoTの目的であれば、コストや性能の観点から、無線LANやBluetooth、LPWA(Low Power Wide Area=省電力型の広域ネットワークサービス)のローラ(LoRa)、シグフォックス(SIGFOX)、eMTC、NB-IoTなどさまざまな無線技術から最良のものが選ばれるはずです。
大事なのは、企業を含むユーザーのみなさんに無線技術の選択肢をなるべく広く用意することだと思います。これに加えて、もし、ビジネス上の試行錯誤の環境も応援することができれば、世界に広がるソリューションが生まれることになるのではないかと夢想しますし、そのお手伝いができれば言うことはありません。
通信事業者も、「真ん中のB」とのパートナーシップを探し、独自の取り組みを広げていらっしゃると聞いています。「真ん中のB」の方々とともに5Gのすごさを実現し、世界に広がっていくことができれば、またそれに我々が少しでもお手伝いできれば、大変ありがたいことだと思います。
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