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  • 2017/11/20 掲載

5G、LPWANなど通信技術からディズニーの事例まで、IoTビジネスの最前線を一挙解説

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ここ数年、企業のデジタルトランスフォーメーションにより、ICT業界には激しい変革が起きている。さらに、IoTの波も来ている。5G、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)など、本格化するIoTを支えるインフラ、AIの導入により、これまでとは異なるアプリケーション、サービスが展開されていく。アイ・ティ・アール(ITR)のチーフ・アナリスト マーク アインシュタイン氏が、2020年のIoT時代に向けて新しいビジネスモデルを解説する。
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ITR チーフ・アナリスト マーク アインシュタイン氏

3年後のIoT国内市場規模は1兆3,800億円

 イメージ先行の印象が強い「IoT」だが、農業や工場、あるいは物流などの分野で導入はすでに始まっており、2017年のIoT全体の市場規模は4,850億円に上る。ITRでは、3年後の2020年には1兆3,800億円に拡大するという予測を出している。

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日本における産業別のIoT市場予測

 また、エンタープライズ企業のIoT導入は、2017年の21%に対し、2020年には倍の40%に拡大し、今後、さまざまな分野においてIoT向けの投資が進んでいくと見られる。

 すべての業種を合わせた成長率は、平均271%になる見込み。業種別で高い成長率を示すのは、公共機関(892%)と交通機関(705%)だ。これは、2020年のオリンピックや政府が進めるスマートシティ構想に関連する動きを見越したものだ。

 スマートシティは基盤インフラ、さらには生活インフラまでインターネットにつなぎ、環境・人の住みやすさに配慮しながら、効率的に継続的な経済発展を目指すという都市構想だ。その影響はさまざまな産業に及ぶが、基盤インフラである流通やエネルギー供給のサプライチェーンマネジメントの効率化が最重要だ。

 グラフでも、交通、エネルギー産業の伸びが予想されていることがわかる。また、スマート家電を含む家庭用品(Household Goods)も481%という高い成長率が見込まれている。

重要性を増すセキュリティとIoTプラットフォーム

 IoTのレイヤーごとの成長予測も示された。企業はアプリケーション、つまり企業が開発提供を進めるさまざまなIoTソリューションに投資するとみられる。

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IoTレイヤー単位で見る成長予測

 農業ではIoTの導入が進んでいる。これは「スマート農業」と呼ばれる。トラクターや耕作機などの農機具にGPSセンサーを付けてネットワークに接続することで、作業範囲や地区を可視化する。ドローンの空撮で作物の生育の状況を確認し、作業の効率や生産性を上げていくアプローチをとる農家もある。

 農業の場合、農協(JA)など専門知識を持つ組織・企業とICT企業が協業する形態が多いが、今後は漁業や介護など、人が多くのプロセスを管理して遂行する(しなければならない)分野にも同様のケースが広がると考えられる。

 こうしてIoTの活用が進み、PCやスマートフォンだけでなく、さまざまなモノがインターネットにつながると、セキュリティは非常にクリティカルな問題となる。メーカーに与えてよいデータ、個人情報として守るべきデータの整理を、法整備も含めて行う必要がある。また、コネクテッドカーなど、AIにより自動化されるデバイスやサービスにも、セキュリティの担保は必須だ。

 ここで注目すべきなのがIoTプラットフォームだ。IoTプラットフォームは、センサー、デバイスからデータを収集し、クラウドに蓄積して、それを活用してサービス化するための基盤として提供されるもので、ITベンダーや通信会社、大手メーカーなどと協業するユーザー系ベンダーなど、さまざまな企業が参入している。8月のKDDIのソラコム買収は記憶に新しい。

 プラットフォームが重視されるのは、価値の比重がモノからユーザー体験に移ってきたからだ。現在、アプリケーション開発が日本にとっての主要なIoTのフィールドであることは確かだが、セキュリティとプラットフォームは時間の経過とともにますます重要になっていくだろう。

5G、LPWANなどのワイヤレス通信技術とIoTネットワークの問題点

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IoTの実現に不可欠な新しいワイヤレス通信技術

 IoTの関連技術にはさまざまなものがあるが、今、最も注目されているのはワイヤレス通信だ。Bluetooth、LPWAN、5G(第5世代移動通信)など、ホットなトピックが多い。

 低帯域幅で近距離のBluetoothは、スマートフォンとそれに紐づくIoTデバイスの普及を一気に進めた。そして、低帯域幅で長距離通信を実現するのがLPWANだ。M2Mの分野やスマートシティでの活用が期待され、京セラ、ソラコム、ドコモ、KDDI、ソフトバンクなど、各キャリアやベンダーが参入している。

 そして、次に来るのが5Gだ。現在は規格策定が進められている段階だが、各国は2020年のリリースに向けて動いている。この分野では、韓国、中国、日本などのアジア勢が先んじているといわれる。

 5Gの特徴は「高帯域」で非常に「低遅延」であることだ。これにより、IoTがガラリと変わる。4G、LTEの接続遅延が100ミリ秒なのに対し、5Gでは1ミリ秒以下とされる。この2つの特徴を組み合わせることで、これまでできなかったアプリケーションが可能となる。

 現在、5Gの"キラーアプリケーション"は主に自動車関連分野とみられているが、その他、高帯域、低遅延に重点を置いたビデオサービス、AR/VRなど、新しいコンテンツやサービスも登場するだろう。

 5G、そしてLPWANテクノロジーは、IoT分野においても新しいビジネスチャンスをもたらす。

 たとえば、韓国通信大手のSKテレコムと独BMWの韓国法人 BMW Koreaは、共同で5G対応のコネクテッドカーを開発して試運転を行っている。自動車は時速170kmで走行し、試験網は28Gbpsベースの5Gで構築され、3.6Gbpsのデータ転送速度に達したという。

 また、Koreaテレコムと米国のベライゾンは、5Gネットワークを使ったホログラム国際通話の実験にも成功している。

 LPWANの事例としては、ベルリンの通信大手Proximusが、LPWANの一種であるLoRaをベースに進めるサービスがある。

 スマートタグを使って飛行機に預けた荷物を自分のスマートフォンで把握できる空港サービス、トイレやオフィスの扉にスマートタグを付与するスマートオフィスがそれだ。それによって、たとえば20回ドアが開いたら掃除をするというように、効率的なマネジメントが可能になる。また、食材の配送時の温度監視システムや、空きを知らせるスマート駐車場なども実現されている。

 ただ、こうしたIoT活用がより加速するためには、IoTネットワークのアーキテクチャ自体が変わる必要がある。

 IoTネットワークは2005年にはすでに存在しており、けっして新しくはない。ところが、そこに膨大なデバイスがつながるようになったことで、今、最も問題となっているのがセキュリティだ。現実に、IoTデバイスをハックし、データを暗号化して身代金を要求するランサムウェアの被害も起きている。

 ネットワークとしての堅牢性も課題だ。たとえばコネクテッドカーの実用化には、高帯域・低遅延・高冗長性のネットワークが欠かせない。1つのネットワークが落ちたら全体が落ちるようでは、とても安心して利用できない。

 つまり、従来のサーバやクラウドへ一方向につながるネットワークではなく、分散処理可能なメッシュ型のネットワークが必要になる。より多くの新しいサービスやプロダクトを可能とするためには、メッシュ型のエッジコンピューティングの構築・運用が技術的な課題となる。

【次ページ】IoT時代のビジネス、カギは「Data Products as a Service」
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