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欧州で流通する医療機器に関する規制「欧州医療機器規則(Medical Device Regulation:MDR)」と「体外診断用医療機器規制(In Vitro Diagnostic Regulation:IVDR)」が、2017年5月に新たなガイドラインが発行され、一定の移行期間を経て有効になります。新規制はそのインパクトの大きさにもかかわらず、対応遅延によるリスクが認識されてきませんでした。そこで、グローバルに製品を販売する医療機器メーカーにとって、ガイドラインの要求事項にいかに対応したらよいか、MDRおよびIVDRの主要なキーワードや移行期間後の影響やリスクについて解説します。
新規則の概要
欧州で流通する医療機器に関する規制「欧州医療機器規則(Medical Device Regulation:MDR)」および「体外診断用医療機器規制(In Vitro Diagnostic Regulation:IVDR)」は、2017年5月に新たなガイドラインが発行されました。この規則は一定の移行期間(MDRの場合は3年間、IVDRの場合は5年間)をもって有効になります。
規制対応に遅れた場合、欧州市場や欧州と同様の基準を採用するアジア・太平洋地域の市場で製品を展開するのが困難になる恐れがあることから、注目されています。ではさっそく、MDRのガイドラインを解説します。
ガイドラインのポイントは以下のとおりです。
1.欧州では約20年ぶりの大改編、かつ、世界で最も厳しい規制
2.ガイドライン発行後の移行期間(MDR:3年間・IVDR:5年間)での対応が必要(ガイドライン発行日:2017年5月25日)
3.規制対応に遅れた場合、欧州市場及びCEマークを利用しているASPAC市場で損失が発生する可能性がある
4.規制対応が困難な企業(対応コスト・対応要員の不足)においては、事業譲渡が活発化、また、淘汰される企業も出てくると予想される
欧州医療機器新規制を理解する4つのキーワード
1)MDRとIVDR
MDRは「Medical Device Regulation」の略称であり、「人体に触れる機器への規制」を指します。IVDRは「In Vitro Diagnostic Regulation」の略称で、「人体から取り出した検体を検査する機器への規制」を指し、この2つが欧州医療機器新規制です。
現在は、1980年代に発行された「欧州埋込型能動医用機器指令: AIMD(90/385/EEC)」「欧州医療機器指令: MDD(93/42/EEC)」「欧州体外診断医療機器指令: IVDD (98/79/EC)」が有効です。
新規制への移行にあたり「AIMD」「MDD」がMDRに統合され、「IVDD」が「IVDR」に変更されます。
本稿ではMDRを主に解説しますが、IVDRの大きな変更点についても1点指摘します。
IVDDでは、約20%の 体外診断用医療機器指令 (IVD) 製品のみが後述するCEマーク(製品をEU加盟国へ輸出する際に必要な基準適合マーク)取得のための審査が必要であるのに対して、新規制では、約80%のIVD製品がCEマーク取得のための審査を受けることになります。
IVD製品を扱う企業にとっては初めてのCEマークのための審査を受ける企業も多いことでしょう。このため、初めての審査に向けて混乱なきよう準備することが必要です。
2)CEマーク
CEマークは、医療機器、電気製品、通信機器、産業機械など、製品分野ごとに21種類の指令が定められています。そして、それぞれの分野に該当する指令の要求事項を満たした製品がCEマークを貼付でき、EU域内での販売が認められます。
医療機器への指令は前述の「欧州埋込型能動医用機器指令: AIMD(90/385/EEC)」「欧州医療機器指令: MDD(93/42/EEC)」「欧州体外診断医療機器指令: IVDD (98/79/EC)」が該当します。
現行の指令でも、欧州で医療機器を販売するためには、当局から認可を受けた認証機関による審査を通過することにより、CEマークを自主責任として貼付することが必要です。このCEマークなしでは欧州で医療機器を販売することはできません。
そして、CEマークのための審査が現行指令から新規制に変わります。MDR(欧州医療機器規制)はCEマーク表示を得るための新しい規制です。MDRに準拠できなければCEマークを取得できず、欧州市場で医療機器を販売できなくなるのです。
CEマークは、医療機器のEU健康安全環境保護指令・規制順守を示す重要な指標です。CEマークは、EU加盟国に加え、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス、トルコにて適応されており、アジア太平洋領域の主要国でもCEマークを適用しています。
3)クラス分類
医療機器には人体へのリスクによりクラス分類されています。欧州では「クラス1」「クラス2a」「クラス2b」「クラス3」に分別されます。現指令ではクラス1は自己宣言のみで販売可能ですが、クラス2以上は認証機関の審査が必要となります。
クラス1でも滅菌状態で出荷される機器、測定機能機器、再利用できる外科用器具は他のクラス1機器と異なり認証機関による審査が必要です。特にMDRより再利用できる外科用器具は審査対象に変更となりました。
MDRの要求事項に応えるためには新規のコストとなり企業体力によっては製品の欧州輸出を継続するか否かに直面する場合もあります。
また、いくつかの医療機器はクラスが変更する可能性があります。クラスによってMDRの要求事項が変わってきますので、クラスの変更がある製品の有無を確認することが必要になります。
4)移行期間と猶予期間
移行期間終了をもってMDR対応していない医療機器が販売停止になるわけではありません。クラス2a以上の医療機器には移行期間終了後最大4年間の猶予期間が設けられています。
猶予期間を利用するためには、移行期間内にMDDで再認証を取る必要があります。その再認証日から数えて5年間、移行期間終了日からは最大4年間がMDD審査によるCEマークの最長猶予期間です。
気を付けなければならないのは、クラス1には猶予期間がないことです。また、前述したように、滅菌状態で出荷される機器、計測機能、再使用できる外科用器具等のクラス1医療機器は他のクラス1機器と異なり認証機関の審査が必要になりますが、同様に猶予期間はありません。これらの医療機器を扱っている企業は欧州輸出について早急に慎重に対応する必要があります。
これらの医療機器を扱っている企業は欧州輸出について早急かつ慎重に対応する必要があります。
【次ページ】MDR対応のために知っておくべきこと、日本や欧米企業の動向
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