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  • 2018/01/15 掲載

港区で若者が急増のワケ 東京23区の人口動態から考える日本の近未来

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日本社会は今後、世界でも希に見るスピードで人口減少が進む。これまでは人口減少と叫ばれながらも、総人口はほぼ横ばいで推移していたが、これからは本格的に総人口の減少が始まる。人口減少は多くの場合、都市部への人の移動を伴い、日本の産業構造に大きな変化をもたらすことになる。東京23区の人口動態をもとに近未来の消費社会について考察してみた。
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東京23区の人口動態を詳しく見ると、人口減少社会の行く末が見えてくる
(©oben901 - Fotolia)


マクロでもミクロでも利便性の高い場所への集約が進む?

 2017年1月時点における東京23区の人口は約930万人で、5年前との比較で8.5%ほど人口が増加した。日本は東京一極集中と言われており、東京圏の人口が継続的に増えていることはよく知られている。かつて東京は地方から大量の若者を吸い寄せる形で人口が増加してきたが、最近は様子が異なっている。現在の東京一極集中は日本の人口減少に伴った動きであり、東京は人口が増えているものの、徐々に高齢化も進んでいるという状況だ。

 先ほど、東京23区における過去5年間の人口増加率は8.5%と述べたが、このうち65歳以上の高齢者の増加率は14.2%となっている。これに対して生産年齢人口(15~64歳)の増加率は6.7%にとどまっている。高齢者の増加が大きくなっているが、この数字は日本全体の高齢者の増加率とほぼ同じである。

 一方、日本全体における生産年齢人口は5年間で約5%減少した。つまり、勤労世代が東京に転居することで、何とか急速な高齢化を防いでいるという状況だ。

 人口が減少するということは、同じ状態のまま人数だけが減るということを意味していない。人は経済活動を行って生活しているので、一定以上の人がいないと経済圏を維持することができない。このため人口が減ってくると、より便利な場所に向かって人が移動することになり、人口動態が変化する。

 この動きは「東京」対「地方」という図式のみならず、地方の中でも「地方中核都市」と「その他の地域」、東京の中でも「23区」と「郊外」、さらには23区の中でも「都心」と「その他の地域」といった具体に、一種のフラクタルのような形状になっている。

 大きな視点でも、小さな視点でも、利便性の高い場所に人口が集約する形で総人口の減少が進むというのが、今後の基本シナリオと見てよいだろう。

森ビルが迷わず開発に邁進できた理由

 では、この基本シナリオがどの程度、現実的なのか東京23区の人口動態から考えてみよう。図1は東京23区のうち10区(千代田区、中央区、港区、台東区、江東区、世田谷区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区)における5年間の人口増加率をグラフにしたものである。2017年、2012年、2007年の各年において、過去5年間で何%人口が増減したのかを示している。参考値として八王子市のグラフも記載した。

画像
図1■2007年、2012年、2017年における過去5年間の人口増加率

 東京は基本的に人口が増加しているので、過去15年間にわたって各区とも人口そのものは増えている。だが増加率は区によって大きな違いが見られる。

 増加率がもっとも高かったのは中央区で24.4%、次いで千代田区で23.2%、3番目は港区で19.6%だった。千代田区、中央区、港区の3つはまさに都心と呼ばれるエリアだが、この3区の人口増加率は最近では常にトップクラスとなっている。

 港区は、郊外の宅地開発が進んだ高度成長期や、地価が高騰したバブル期には人口の流出が続いていた。しかし1996年を境に増加に転じ、以後、一貫して住民が増え続けている。これは区内の再開発などでマンションが増え、これに伴って都心に拠点を移す世帯が増えてきたからである。

 特に2000年以降は人口増加のスピードに拍車がかかっているが、これは人口減少に伴って都心回帰が進んだことと深く関係している。

 港区を中心に大規模なビル開発を行っている森ビルが六本木ヒルズをオープンさせたのは2003年のことだが、森ビルの開発プロジェクトと港区の人口増加は軌を一にしている。次々と巨大なオフィスビルや高層住宅を建設する同社の経営方針に対しては、当時、無謀であると疑問視する声が多かったが、同社のオーナー社長であった森 稔氏はこうした声には一切耳を傾けなかった。

 森氏は西新橋で生まれ育った生粋の港区民で、港区のことを熟知していた。都心の人口動態について皮膚感覚で理解していた可能性が高く、都心部の人口がさらに増加することについてまったく疑いを持っていなかった。

【次ページ】年齢別の動きをグラフ化、子供の増加率が高いのは?
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