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神奈川県小田原市。その小田原駅から徒歩7分のところに、コワーキングスペース「旧三福(きゅうさんぷく)」はあります。歴史を感じる木造の建物の階段を上がると、そこには風情を感じる素敵な空間が広がっていました。サラリーマン、市役所職員、会社立ち上げというユニークな経歴を持つ、旧三福不動産 代表取締役の山居是文さんに、なぜ小田原にコワーキングスペースを立ち上げたのかを聞きました。
創業する人を増やすための不動産屋でありたい
私のこれまでやってきたことを少しお話します。小田原出身で、新卒のときには東京の会社に就職しました。数年勤務したのち、地域に関わる仕事がしてみたいと思って、小田原市役所に転職しました。そのあとで、意気投合した友人と東京で会社を立ち上げ、広告の企画、制作を手がけました。
ここに来たきっかけは、今から5年前の2012年、その会社を辞める少し前にあります。
地元の小田原で、数十年営業したのちに店じまいした「三福」という中華料理屋さんがこの建物の1階にありました。元が三福だったから、「旧三福」という名前にしたんです。
不動産業は前々からやりたかったものの、当初はまだ始めておらず、コワーキングスペースだけでした。それから2年たった2014年、共同代表の渡邊と一緒に旧三福不動産を立ち上げました。
どうして不動産をしたいのかというと、根底には「地域を良くしたい」という思いがあるのです。地域が変わるのに何が必要かというと、住む人が増えるとか、商売を始める人が増えるといったことが必要だと思います。
住む人、商売を始める人は、家や店を借りるわけです。しかし、一般の不動産屋さんは創業する人を増やすという意識はあまり持っていないんじゃないかと思います。そういう意識を持つ人が不動産業を営む必要があるとずっと思っていたのです。
たとえば「
東京R不動産」などの良い不動産屋がある町には住みたいですよね。それと同じで、創業に最適な不動産屋があるといいなと思っていました。
私がもともと地主の息子だったら自分の土地で何かやるんですが、そうじゃないので、人を繋いでそういう不動産屋さんを生み出したいと考えていました。そんな時に良いタイミングで共同代表の渡邊に出会い、不動産業を始めたという経緯があります。
不動産×コワーキングスペースだからできる創業支援
前述のとおり、創業支援をするのが目的です。コワーキングスペースを使い始めた人が、だんだんと事業を成長させていってくれることに期待しているわけです。
しかし、もしコワーキングスペースだけの運営だと、利益相反が起きてしまうと思いました。つまり、事業が拡大してコワーキングスペースではなく専用オフィスを持ちたいとなったときに、退去することになってしまう。運営側からすると、固定収入の減少になるから、利用者の事業拡大を素直に喜べなくなうかもしれません。
我々は不動産業を営んでいるから、コワーキングスペースを出ていくことになった企業に、たとえばオフィスを提供するというような別の形で協力ができて、形を変えて支援が続けられるのです。これは、ひとつの理想的な創業支援のあり方かと思って、取り組んでいます。
入居者さんの特徴としては、PCを広げている人が少ない印象です。絵を描いていたり、クラフト作家だったり。大工さんもいれば、お茶の先生もいて、職種は多彩です。入居者さんの人数は、変化しますけれどだいたい15人前後。年代としては、30代が多いでしょうか。性別でいうと、おおよそ男女半々です。
入居者の飲み会や交流もあります。職種がそれぞれ違うんで、ノベルティを画家にデザインしてもらうほか、入居者どうしで発注したりというコラボレーションが起きるのもおもしろいところです。
特徴的な入居者さんに、すさびさんがいます。彼らは、ハンモックやインテリア商品等インターネット通販事業を営んでいます。代表の方は横浜から来られて、最初は自宅で個人事業として始められたのですが、のちに旧三福に移ってこられました。その後、法人化して、従業員も増えるなど、成長中の企業です。
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