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  • 2017/02/24 掲載

ビズリーチとエウレカが解説「マッチングサービス」を成長させる5つの視点

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人と企業、人と人、人とモノなどをつなげるマッチングサービス。従来では自分で行動して探すというスタイルだったが、今や、自分に適した企業や人やモノが自動で提案してくれるといったサービスも数多く登場している。そうした時代において、マッチングサービスの裏側ではどのようなことが行われているのか。「マッチングサービスの運営で大切にしていること」と題されたパネルディスカッションにおいて、キャリアトレックを運営するビズリーチの鈴木康弘 氏、青山弘幸 氏、Pairs(ペアーズ)を運営するエウレカの金子慎太郎 氏、金田悠希 氏が登壇し、マッチングサービスの現状とビジョンを語った。
(執筆:フリーランスライター 大橋 博之/構成:編集部 時田 信太朗)


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エウレカとビズリーチが語る「マッチングサービス」成功のポイント

20代の転職をレコメンドで支援する「キャリアトレック」

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 即戦力人材と企業をつなぐ転職サイトなどを運営するビズリーチ。同社が2014年にローンチしたのが、20代向けレコメンド型転職サイト・キャリアトレックである。

 レコメンド型とは、ユーザーの好みに合った物品やサービスを推薦する手法のことだ。キャリアトレックでは20代、ホワイトカラーの若手優秀層にフォーカスし、「転職を考えているが求める企業を探せないでいる」という若手人材に対し、適切な情報を提案している。

 具体的には、ユーザーがキャリアトレックに登録すると、マイページに興味があるだろうと想定される企業がリストアップされる。さらに興味の選択と応募などの行動履歴から、より適切な企業が表示されていくようになる。また、企業からスカウトメールも届くようにもなる、というものだ。

 サービスが生まれた背景には、20代の若手ビジネスパーソンと彼らを求める企業の課題がある。従来の転職情報サイトでは大量の企業情報の中から希望する企業を見つけ出すことが難しく、上手くマッチングできなかったのだ。

 キャリアトレックというサービスの特徴は、優れたレコメンド技術にある。ニューラルネットワークなどを活用して構築されたシステムが求職者と企業の属性や行動履歴のデータをインプットし、毎日、アップデートされたものをバッチで回して最適な提案を推薦していく。

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20代向けレコメンド型転職サイト「キャリアトレック」

 20代は転職したいと考えても自分がどこに向かうべきなのかビジョンが明確になっていないケースも往々にしてある。レコメンド型のキャリアトレックは、探さなくとも自分にとって最適な企業が提案されるという点がユニークだ。

 会員数は27万人、掲載求人数9万2000件で、大手IT企業をはじめとした一流企業からのオファーが並んでいる。(2017年2月取材時点)

アジアでのグローバル展開も視野に入れる「ペアーズ」

 2008年創業のエウレカは、恋愛・婚活マッチングサービス・Pairs(ペアーズ)とカップル向けコミュニケーションアプリ・Couples(カップルズ)を運営している。

 2012年にリリースされたペアーズは、2015年にInterActiveCorp(IAC)というアメリカの巨大インターネット企業のグループにジョインし、今後もアジアを中心にグローバル展開が見込まれている。

 グループ全体のマンスリーアクティブユーザーは25億人以上。ペアーズは、日本と2013年にリリースされた台湾版以外にも、2017年中には韓国、香港、シンガポールでもローンチしていくという。

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日本、台湾版に続いてアジア5カ国での事業展開を本格化させる恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」

 ペアーズのユーザーは25歳から35歳の未婚の男女がメインである。男性がログインすると女性が、女性の場合は男性が表示される。そのシステムに独自のアルゴリズムを構築しており、アルゴリズムのバランスを変えるだけでマッチング率が大きく変わる。繊細なバランスで調整されているという。

 好みの相手が見つかったら「いいね!」でアプローチする。相手もいいなと思ったら「ありがとう」を返すことでマッチング成立となる。そこからメッセージのやりとりが可能となり、カップルの誕生となる。

 累計会員数は500万人、マッチング数は3200万組を突破している。マッチングした相手との交際が始まったことで退会したカップル数は3万5000組以上だ。なお、ペアーズで恋人ができても退会申請をせずにいる場合はカウントに含まれないので、実際にはそれ以上のカップル数がいるそうだ。(2017年1月時点)

マッチングサービスを成長させる「5つの視点」

 ここでは、ビズリーチとエウレカのプロダクト責任者があつまって語られたパネルディスカッションの中から、マッチングサービスを成長させるためのポイントを「5つ」に絞って紹介したい。

(1)新規ユーザーへの対応
 ビズリーチ キャリアトレック事業本部プロダクト開発責任者 鈴木康弘 氏は次のように語る。

「コールドスタート問題と言うのだが、新規で登録したユーザーで、行動履歴が蓄積されていない状態であっても最適な提案をしなければいけない。そのため、似たようなクラスタを分類して、それと合った提案を計算しておき、どのクラスタに確率が高まるか、ということをやっている」

 新規ユーザーに対してどのようにアルゴリズムを適用していくかは、AIチームが力を入れて作り込んでいるという。新規ユーザーの初期体験で印象が悪いと、「このサービスはいい」と思ってもらえないからだと鈴木氏は説明する。

 一方、ペアーズを運営するエウレカの執行役員CTOを務める金子慎太郎 氏は次のように語る。

「転職サイトは『成功体験をいかに積み重ねるか』が重要だが、ペアーズはマッチング精度を上げる以前に、そもそも使ってもらわないといけない。相手から『いいね!』を受け取ると嬉しいですし、そこからユーザー体験が始まるので、新規登録ユーザーにはまず『いいね!』をもらう体験をする必要がある。そこで、新規登録したユーザーを、検索結果の一覧で上位に出す工夫をしている」

 しかし、これにはマイナスの面も生じる。なぜなら、ペアーズは日常と同じような自然な出会いを目指しているからだ。そのため、バランスよくアルゴリズムを組んでチューニングしているそうだ。

「チューニングには機械学習を使っている。ニューラルネットワークを使った方がいい結果が出るかもしれないと思っているが、(現状は)それをすると速度が出ないので、スコアをより速く計算してユーザーに届ける仕組みを考えている」(金子氏)

(2)ユーザビリティの追求
 ユーザビリティへの取り組みについて、ビズリーチの青山弘幸 氏は次のように語る。

「転職というのは重たくてハードルが高い(活動)。『ちょっと興味がある』という最初の一歩を動きやすくする、というのが他とは違うアプローチとして取り組んでいるところだ」

 また鈴木氏は「はじめて転職する人は、どうやってサービスを使えばいいのかわからない。その初期ハードルを下げるために、コミュニケーション設計を考えることによって、一定のユーザーには効果があった。マッチングアルゴリズムとUXはグロースできたと思っている」と語る。

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(写真左から)ビズリーチ キャリアトレック事業本部 マーケティング部 部長 青山弘幸 氏
ビズリーチ プロダクト開発部 部長 キャリアトレック事業本部 プロダクト開発責任者 鈴木康弘 氏

 エウレカでは、ユーザーの「男女比のバランス」を常に見ているという。エウレカ Pairs事業部 責任者の金田悠希 氏は次のように語る。

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(写真左から)エウレカ Pairs事業部 責任者 金田悠希 氏、エウレカ 執行役員CTO 金子慎太郎 氏

「ペアーズのビジネスモデルは男性がお金を払い、女性は無料で使えるといったもの。そういった場合、お金を払う人のことだけ見て、獲得コストを計算することが多いかと思うが、ペアーズではマッチングのバランスで見たときには、女性もいないと成り立たないサービスなので、男女比を見て、男女あわせた上で獲得コストを最適化させるように考えている」

(3)B2BとC2Cで異なる特有の難しさ
 新規ユーザーの獲得は、両社ともに苦労している部分である。

 キャリアトレックはペアーズと異なり、「個人」と「企業」をマッチングさせるB2C型のサービスだ。そのため青山氏は「マーケティング的には企業に利用いただくが難しい」と語る。

「企業の利用拡大のためには、組織対応や、他の競合サービスから選んでもらうためのマーケティング活動をしないといけない。幸い(既存サービスの)ビズリーチと共にに企業開拓を進めていたので、その既存顧客にキャリアトレックをクロスすることで解決できている。ビズリーチの立ち上げ時は認知度がほとんどないところからだったので、本当に苦労した」(青山氏)

 C2Cのペアーズは、前述のように男女の割合を保った上でユーザーを獲得しており、その割合はスタート時から変えていないという。金子氏はその理由を語る。

「ペアーズを作った当初から、オンラインで出会うということを日本の文化として根付かせたいという気持ちがあった。男性ばかりを獲得しようとすると女性としては使いにくいサービスになるし、(従来の)”出会い系”と呼ばれるサービスと同じに思われてしまう。そのバランスはずっと意識して新規獲得に取り組んでいる」

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