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- 2016/11/30 掲載
今さら聞けないデジタルマニュファクチャリング 日本企業が今後10年でやるべきこと
フロスト&サリバン連載 「TechVision:世界を変革するトップ50テクノロジー」
デジタルマニュファクチャリングとは何か
また、生産現場のみならず販売やアフターサービスのデータも収集することで、消費者のニーズによりマッチした製品の生産を可能にする。収集したデジタルデータを活用し、企業の生産性を上げるとともに消費者の要望により近い製品を生産することをデジタルマニュファクチャリングと呼称している。
フロスト&サリバンの調査では、デジタルマニュファクチャリングの市場規模は2016年から2021年にかけて年平均成長率7.1%で伸長していくと予想され、2021年には65億9,000万USドルに達する見込みである。
デジタルマニュファクチャリングのメリット
デジタルマニュファクチャリングのメリットは、設計から生産に至るすべての工程を多様なアプローチで効率化できる点だ。生産工程のシミュレーションをコンピュータ上で行うことで、機械化や自動化プログラムを含めた最も効率的な生産方法が見つけられ、より包括的な視点からも効率性の向上に貢献し得る。具体的には、全ての工程のデータをコンピュータを用いて一元的に管理することにより、設計チームと製造チームとの製品情報の交換を強化し、製造を考慮した設計を実現させる。また、製造前に既存ナレッジを再利用して、製造プロセスを最適化するためのシミュレーションを実行し、製造現場からのフィードバックを受けて、それを設計プロセスに反映させることで、製造プランニングにおける高い効率性を実現させることも可能だ。 このように、下流の生産分野の効率性向上の対策が、上流の設計という分野から提案される。アイデア創出、設計、生産からサービス、廃棄に至るまでのライフサイクル全体を通じて、生産効率性向上を可能にするのが、デジタルマニュファクチャリングの最大のメリットだ。
デジタルマニュファクチャリングは遠い未来の話ではない。現在、既にデジタルマニュファクチャリングで実用化されている技術を紹介したい。ここでは、典型的な製造業の工程にデジタルマニュファクチャリングを導入することを想定しながら考えていこう。
製造業の上流である設計の段階から、デジタルマニュファクチャリングは効果を発揮する。最近では、コンピュータ・プログラムを使用して物理オブジェクトを二次元だけでなく、三次元でもグラフィカルに表現することが可能になっている。つまり、設計者がさまざまな製品バリエーションを自在かつ自動的に解析し、製造に適した最適な設計を追求し、シミュレーションできるということである。結果的に試作品の製作点数および設計コストを抑えられる。どのような設備を用いて生産すべきか、という点に関しても、広範なデータとシミュレーションをもとに自動化・機械化を含めた幅広い選択肢の中から最適な方法を選ぶことができ、生産の効率化が期待できる。
具体的に生産現場を考える際に大事なのは、設備の配置だ。デジタルマニュファクチャリングにおいては、人やモノの動きをモニタリングして解析する3Dモニタリングカメラを導入する。詳細な三次元情報をリアルタイムで集めることで、工程内動線の効率化や生産レイアウトの最適化、現場の安全性の向上が期待される。また、労働者が作業を行う際には持ち運び可能な端末を携帯させたり、メガネ型のウェアラブル端末を装着させることで、作業に必要な情報や変更点をリアルタイムで伝えることができ、作業の正確性、効率性が向上する。 これらの生産現場でのデータをリアルタイムに収集、分析することで、生産状況・損益指標等を見える化することも可能だ。現場と経営の情報をリアルタイムでつなぐことで、迅速な経営判断を促進し、効率的なサポートを行うことができる。
デジタルマニュファクチャリング関連の特許数は近年非常に増えており、デジタルマニュファクチャリングが大きなトレンドのひとつであることはもはや否定できない。
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