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- 2016/11/11 掲載
Qiita(キータ)海野弘成社長に聞く、日本でもっともプログラマーに愛されている理由
「Qiita」はどのようにして生まれたのか
──まず、Qiitaとはどういうサービスなのでしょうか。海野氏:Qiitaは、2011年9月にサービスインしたプログラマー向けの情報共有サービスです。プログラマーが技術情報を発信し、ユーザー同士で共有するサービスで、最大の特徴はユーザーをプログラマーに絞っている点です。
ユーザーからのフィードバックは、単なる「いいね」という反応だけでなく、技術情報の場合、情報が古くなったり、間違った情報があったりするのですが、そういった情報が他のユーザーのフィードバックによって改善されていきます。
海野氏:大学では情報工学を専攻し、はてなでインターンをしたり、グーグルでアルバイトをしてプログラミングをしていました。そのため、私も他のプログラマーと同様、困ったときにインターネットを検索して問題を解決するということを習慣的に行っていたのですが、他の人も直面するような問題の解決方法がネットを検索してもなかなか見つからないという課題がありました。
そういう問題の多くは、解決方法を誰かに教えてもらえばすぐに解決できます。汎用的な問題解決の情報がどこかに共有されていれば、プログラマーはサービス特有の課題解決により多くの時間を注ぐことができます。そこで、多くの人がぶつかる汎用的な技術上の問題解決の場をインターネット上に作ろうとしたのです。
──競合サービスはあったのでしょうか?
海野氏:実は当時、技術情報の共有に特化したサービスはありませんでした。一方で技術情報をテーマにした個人のブログはたくさんあり、私自身もブログも開設していましたが、なかなか多くの人に見てもらえず、反応がもらえないこともあって、自分が書いた情報が役に立っているか分からないという課題を感じていました。
また、技術情報は1年、2年使うと古くなってしまうことが多く、かといって、ブログ等に公開した過去の情報を更新するのにも手間がかかります。読む人、発信する人にとって何か良い方法がないか、そこで考えたのが、コンテンツ発信とコミュニティが統合されたサービスプラットフォームでした。
海外では技術情報を発信する場としては個人や企業のブログが中心で、あとは、Q&Aサイトやフォーラムなどが盛況でした。我々も最初はQ&Aサービスとしてスタートしたのです。
サービスを立ち上げてみて、改めて「質問するのが難しいな」と感じました。Q&Aサービスの場合、自分がわからないことを人にうまく伝えないといけないのです。一方で、何か問題にぶつかって、それを解決したという情報は書きやすいことがわかりました。
──Q&Aの発想はもともとはてなにいたことも影響してそうですね。Q&Aサービスを立ち上げたからこそ、課題解決の情報公開に対するニーズに気づけたと。
海野氏:Q&Aサービスをやっていた時代、といっても僅かな期間ですが、質問の数は増えなかったのに対して、回答率がとても高かったのです。何か疑問に対して答えたい、ノウハウを伝えたいというニーズを持ったプログラマーは多いのではないかと思い、質問と回答を分けるのではなく、課題と解決をセットに、アンサー部分を一緒に投稿できるようにしました。
そして、今のQiitaの形にチューニングしたのが2011年9月だったということです。
なぜプログラマーはQiitaに投稿するのか
──Qiitaで重視しているポイントはどこでしょうか?海野氏:Qiitaは、ユーザーがコンテンツを書いて、発信するCGM(Consumer Generated Media)の側面があります。ですから、ユーザーがコンテンツを書いて、それが検索にヒットして新たなユーザーがサイトに流入し、その人たちの一部がQiitaに登録して、コンテンツを書いていく。基本的にはそういうサイクルを回していく構造です。
サービスをプログラマーに絞った理由は、プログラマーは検索によって課題解決するのが日常的なので、検索によってQiitaへの流入が増え、ユーザーとコンテンツが増えていくサイクルが速く回していけると考えたからです。
Qiitaは、検索流入をベースに、Twitterやはてなブックマークといった拡散力の強いソーシャルメディアにより良記事が拡散され、その繰り返しでユーザーが増えるというスパイラルアップを繰り返してきました。
──特に何か大きなトピックがあったわけではなく、地道な取り組みで堅実に成長したということですね。とはいえ、CGMは立ち上げに苦労します。サービスイン当初はどのように取り組んだのでしょうか?
海野氏:Qiitaは大学在学中に開発し、卒業後に公開したのですが、はてなでインターンやバイトをしていた縁もあって、はてな社内でサービスを開発したことを発表しました。
最初は、はてななどの影響力の強い個人的な人脈がベースになって、使ってくれたユーザーが「このサービスいいね」と思っていただいたことがドライバーになっています。知り合いのプログラマーなどを中心に、拡散力のあるユーザーによってコンテンツが増えていきました。それ以降は、少しずつコンテンツとユーザーが増えていくという繰り返しでした。
──ユーザーからのフィードバックを受けて、サービスをどのように改善しましたか?
海野氏:技術者でもリッチなコンテンツを書けるマークダウン記法を採用しているように、最初は記事の書きやすさを重点的に改善しました。UX設計が得意なデザイナーがユーザーに直接会ってヒアリングしながら、どういう使い方をしているか、機能面での要望は何かを探り、UXデザインに反映する改善を繰り返しています。
サービスの仕様変更などに対してユーザーからの直接のフィードバックもありますし、サイトのお問い合せフォームから質問や要望が来ることもあります。ユーザーがプログラマーですから、改善点も具体的で、バグの修正方法を丁寧に教えてくださる方もいます(笑)。
Qiitaはどのようにマネタイズしているのか
──サービスのマネタイズについて聞かせて下さい。広告などもほとんど見かけませんが、サービスの収益構造はどうなっているのでしょうか?海野氏:マネタイズの柱は、2013年4月9日から開始した月額制の「Qiita:Team」です。Qiita:Teamは、ソフトウェア開発チーム向けの、チームを強化するための情報共有サービスで、社内向けのクローズドなQiitaというイメージです。2013年からリリースし、今は500を超えるチームに利用してもらっており、累積投稿数は60万件にのぼります。
──起業してからQiita:Teamのリリースまで時間がありますが、それまでの運転資金はどのように捻出をされたのでしょうか?
海野氏:外部から投資という形で運転資金を調達していました。起業当初は、起業家育成プログラムの「Open Network Lab(オープンネットワークラボ)」の支援を受けて、サポートしてもらいながら運営していました。
──広告モデルについては?
海野氏:現在は一部広告を出していますが、これまで長く掲出してきませんでした。理由は、広告を出すとデザイン上の制約を受けることや、サービスインの当初は、ユーザーにとって本当に価値のあるサービスを提供したいという思いがあったからです。
また、プログラマーを対象にしたサービスなので、外部に広告を掲載してユーザーを獲得するというのもあまり親和性がないと考えました。
──企業におけるQiita:Teamの独自価値について教えてください。GitHubやBacklogなどと競合するのでしょうか?
海野氏:Qiitaを利用しているプログラマーは、GitHubやSlackなどと併用していることが多いです。たとえば、プロジェクト管理、ソースコード管理はGitHub、コミュニケーションのためのチャットサービスがSlack、そして情報の共有や形式知化という領域をQiita:Teamが担うという形です。Backlogについても併用しているという話を聞きますね。
ですから、これらは競合サービスというより、ツールを併用することでより価値を大きくすることができると考えています。
【次ページ】企業がよいプログラマー、エンジニアを集める極意とは
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